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第77話 ロアギルの依頼

 魁人とロアギルの2人は、仲の良い友人関係同士の様に、互いの嫁について会話していた。


 「さて・・・、ここからが本題じゃ。 そうであろう? カイトよ。」


 「はい。」 


 『あっ、真面目っぽい雰囲気に・・・。』


 そんな様子から一変して、俺とロアギルが急にピリピリとした雰囲気を醸し出し始めた事を、皆は感じた様で、そう小さく声を漏らした。


 「これだけは、必ず聞いておかないといけません。 ロアギル陛下。 《魔族》である《サキュバス》のアブリルの処遇は、どうされるおつもりでしょうか?」


 『ごくっ・・・。』


 俺が、ロアギルに向けてそう問い質すと、その場に居る皆が、一斉に緊張を表す様に固唾を呑む。そして、その場は俺か、ロアギルの次の発言を迎えるべく、しんと静まり返った。


 「ワシがもし、アブリルを敵であると見なし、投獄、もしくは処刑すると言えば、其方はどうする?」


 『っ!?』


 ロアギルが真剣な顔をして、俺にその様に問い掛けて来た。その言葉に、嫁候補の女性陣が緊張を表す様に息を呑む音が聞こえた。


 「俺はロアギル陛下を、この国を敵に回してでもアブリルを、皆を守ります。 俺にとって、この世界で1番大切なものは嫁候補の皆ですから。」


 「カイトちゃん・・・。」


 俺が本心を宣言すると、アブリルは嬉しそうな感情を前面に出しながらも、少々思う所がある様な複雑そうな笑顔で、俺の腕に寄り掛かって来た。


 「ただ・・・」

 「貴様ぁ!!」


 「良いのじゃ、ローレンスよ。 続けよ、カイト。」


 「はっ。 陛下。」


 俺が、話を続けようとすると、ロアギルにローレンスと呼ばれている騎士が、再び俺に怒りを露わにしながら剣を抜こうとする。しかし、ロアギルがそれを制止し、俺に話を続けさせた。


 「ただ、誤解しないで頂きたいのは、先程の発言はあくまでも最悪の場合は、です。 俺はこの国が嫌いじゃない。 寧ろ、色々な人と出会えたこの国は好きです。 そうじゃないと、この国を守るための、勇者候補になんてなったりしません。 もちろん、姫殿下の方々に会ってみたい、という下心もありますけどね。」


 「ふむ。」


 俺は、先のロアギルの問い掛けに対して、本音をありのままに語った。すると、ロアギルは静かに一言頷いた。


 「ならば、アブリルは一切のお咎め無し、とすればお主はどうする?」


 「俺が、嫁候補の皆を守る為に必要な力の余力、その全てを国を守るために使っても構いません。」


 すると、ロアギルから方向性が一転した問い掛けが来た。だが、そんな質問にも俺は真剣に自分の考えを述べた。


 「そうよ! カイトなら、《魔族》なんかイチコロよ!」


 そんな時、エメリィが俺とロアギルの会話に、口を挟んできた。


 『そうだそうだー!!』


 そして、そんなエメリィを皮切りに、俺の嫁候補の女性陣達も、そう声を上げた。


 「ふむ。 ならば、エルフの娘が言う様にカイト、其方には《魔族》、その中の《魔人族》の1人をイチコロにしてもらおう。」


 『へっ!?』


 そんなロアギルからの言葉に、俺達はポカンと口を開け、呆気に取られた様な顔をした。


 「はっはっはっ。 どうした、皆その様な顔をして。」


 「えーっと・・・、どういう事でしょうか?」


 俺はロアギルの真意を確かめるべく、そう質問してみた。


 「うむ。 ワシ等の力では、冒険者達の力を借りたとて、《魔族》を全滅させる事は、まず不可能じゃろう。 ならば、《ヒューマン》と《魔族》の力の均衡を、せめて以前と同じ程度に保たねばならん。」


 「そう・・・ですね。 それが最も理想的かもしれません。」


 「そこでじゃ、《魔族》の力を削ぐには、最も力の強い3種族の王をどうにかするのが手っ取り早い。《魔獣》の王、《グヴェルギュオス》。 《魔人族》の王、《メルサリア=ブラキュリウス》。 《アンデット》の王《グレゴール=アストラン》じゃ。 カイトには《魔人族》の王、メルサリアを可能なら虜にしてもらいたい。」


 『と、虜ぉ~~~!?』


 俺達は、思ってもいなかったロアギルからの依頼に、驚きの声を上げた。


 「《魔族》は力の強い者に惹かれる様じゃ。 現に、《サキュバス》であるアブリルは、カイトの強大な魔力に惹かれたと聞いた。 ならば女性である、メルサリアも可能かもしれんと思うてな。 それでじゃが、ワシが勇者候補を各団長に集めさせる際、「英雄位の資質を持つ義理の息子が1人は欲しいと考えておったし、娘達もそんな婚約者なら守ってもらえて安心じゃろ。 じゃから《魔族》をどうにか大人しくさせられる様な勇者っぽい者」と言ったのじゃが、皆覚えておるか?」


 『はっ! もちろんでございます。 陛下。』


 ロアギルからの問い掛けに、各騎士団の団長が皆声を揃えて返答した。


 「恐らく皆が英雄や勇者という言葉から、強き者と思い、集めてくれたのじゃろう。 カミーラはカイトを。 ローレンスはレイルを。 ギャザはジルをな。 じゃが、ワシは一言も強き者とは言っておらんぞ?」


 『・・・・・・・・・えっ!?』


 ロアギルからの思わぬ言葉に、各団長は茫然としている様だ。、


 「まぁ、半分正解といったところかの。 強き者であるという事だけでも、勇者候補としては申し分なしじゃ。 勇者候補の3人には、一度娘達と面会してもらい、娘が気に入れば婚約者になってもらいたい。」


 『ありがとうございます。』


 俺達勇者候補の面々が、ロアギルからの言葉に対して、期せずして口を揃えてお礼を言った。


 「申し訳ありません陛下、お聞きさせて頂いても宜しいでしょうか?」


 「良い。 申してみよ、ローレンス。」


 「はっ。 有り難き幸せ。 どうか、愚鈍な私にお教え頂きたいのですが、陛下のご命令の中には、強さ以外にどの様な意味が隠されていたのでしょうか?」


 ローレンスが、その場に居る皆を代表する様に、ロアギルへ質問した。


 「うむ。 ワシはな、英雄として、(ひいでる)(おす)として、すなわち! 《魔族》の者を虜に出来る様な、男として優れた者を欲しておったのじゃ! 」


 『・・・・・・・・・。』


 「み、皆ジト目じゃの・・・。」


 ローレンスからの質問に、力強く答えたロアギル。しかし、そんなロアギルを除く、その場に居た全員が、程度の差はあれロアギルを呆れた様にジト目で見つめた。


 「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!? そんな意味だったの!? これで良いですか、陛下?」


 ロアギルの后の1人が、見かねた様にロアギルへ言葉を掛けた。


 「うむ。 感謝するぞ。」

 「ワシはな、《魔族》の者と親密になれる素質を持つ者を仲介役とし、以前と同じ、もしくは、以前より良いワシ等《ヒューマン》と《魔族》との関係を築きたい。 じゃが、3王の中でまともに話せそうなのはメルサリア位でな。 その様な訳で、カイトが《魔族》であるアブリルを虜にしたという話を聞いて、急遽ここに来てもらったのじゃ。 従って、最初からアブリルを咎めるつもりなど全く無かった、と言う事じゃな。 約束通り、男を見せてもらおうかの、カイトよ。」


 『えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?』


 「はっはっはっはっ。」


 こうして、ロアギルの思惑にまんまと嵌まる事となった、魁人達一行。謁見の間には、そんな魁人達の驚きの声と、ロアギルの笑い声が木霊するのであった。

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