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第76話 ロアギル=ソラ=シルヴァリス

魁人達一行はルビアルカとククル、クルルを女騎士団詰所へ呼び、皆で《アルシェント城》へと向かった。


 《アルシェント城》は周りが掘りで囲まれ、跳ね橋を渡ってから城門を(くぐ)る形式になっている。そして、城門を潜ると城本体へと続く道があり、そこには色とりどりの花々や木々が植えられていた。どうやらこの城の在り方は、堅固な要塞としてよりも、宮廷の様な華々しさを重要視している様だ。


 「カミーラ様。 そして、《アルシェント城》へお越し下さった皆様方。 陛下が謁見の間にて、お待ちになって居られます。 (わたくし)がご案内致しますので、こちらへ。」


 城本体への入り口まで来ると、そこには礼服だろうか、ドレスの様な物を着ている女性が待っていた。どうやら案内してくれる様だ。


 「俺、王様に会うとか初めてで、作法とか全く分かんないんだけど、大丈夫かな?」


 そして、しばらく案内役の女性に付いて、城内を歩いていた俺達。そんな時、俺はふと気になった事を口にした。


 「そ、そんなの・・・私達もよ? カイト・・・。」


 「そうなの?」


 『はい・・・。』


 どうやら、皆は少し緊張している様だ。口数が少なく、言葉遣いも大人しい。何せ、今歩いている廊下は、ふかふかそうな赤絨毯に、高そうな絵画や、騎士の甲冑、壺などの置物が置かれており、普段目にする様な光景では無い為だ。


 『・・・・・・・・・。』


 (み、皆大丈夫だろうか・・・。)


 そして、とうとう静かになってしまった皆を、俺は内心で心配していた。


 「あっ、皆様ここら一帯には、侵入者対策用の罠が敷き詰められておりますので、私の足跡に合わせて必ず歩く様にして下さいませ。」


 「あ、はい。」


 『・・・・・・・・・。』

 『ん?』

 『えぇぇぇぇぇぇ!? 罠っ!?』


 案内役の女性から、思ってもみない忠告を受け、俺達は事態を把握するのに少々時間を要した後、盛大に驚きの声を上げた。


 「まじか!? こんな絨毯に残ってる、あんたの足跡とか判別出来ないから!」


 ルビアルカが驚きながらも、状況を分析しつつ、案内役の女性に向け、絨毯を指差しながら突っ込みを入れている。


 「ふふっ。 冗談で御座います。 皆様、緊張されているご様子でしたので。」


 『はぁ~・・・。 良かった・・・。』


 俺を含めた皆は、一様にほっとした様な表情になった。


 「ありがとうございます。 一応皆、陛下にお会いする事に対しての緊張感は、少し和らいだみたいです。」


 「いえいえ。 これも私の務めでございますゆえ。」


 俺がお礼の言葉を伝えると、案内役の女性は笑顔でそう答えてくれた。ただ、皆には別の意味での緊張感が生まれた気もするが、今は良しとしておこうと思い、それについては言及しない事にした。


 「それでは皆様。 こちらが謁見の間になります。 どうぞ、お入り下さい。」


 謁見の間の扉の両端には、男性の騎士が1人づつ剣を携え、置物の様に微動だにせず佇んでいる。しかしながら、俺達が扉の前まで来ると、流れるような動作で、それぞれに扉の取っ手を掴み、開いてくれた。


 こうして、魁人達一行とカミーラは、謁見の間に入って行った。


 「良く来てくれた。 クロミネカイト、並びにその嫁達よ。 あぁ、違ったな。 勇者と愉快な嫁達よ。 プフッ。」


 「あんたもか!?」


 俺は、国王がわざわざ挨拶の言葉を言い直してくれた事に、俺達への配慮があるのではと考え、こちらも素直に突っ込みを入れた。


 「貴様!! 陛下に向かって何たる言葉使いを!!」


 「いや、陛下が和ませる為に冗談言ってくれてるのに、こちらがそれに乗らない方が失礼ですよ?」


 謁見の間に居た騎士の1人が、俺への怒りを露わにして、咎める様に言って来た。そこで、俺は、突っ込みを入れた事に対しての説明を加えた。


 「はっはっはっ。 良いのだ、ローレンスよ。 なかなかの度胸。、そして面白い若者じゃ。 ワシはこの国の王、《ロアギル=ソラ=シルヴァリス》じゃ。 ロアギルで良い。」


 「お初にお目に掛かります、ロアギル陛下。 私は《黒峰魁人(くろみねかいと)》と申します。 私も魁人とお呼び下さい。 この様に国王陛下に拝謁する機会は、私を含めた皆が、生まれて初めてなもので、もし、無礼な振る舞いをしてしまう事があっても、どうかご容赦頂けると有り難いです。」


 俺は、王族に対する礼儀は分からないが、今出来る精一杯の礼儀を表す様に、ロアギルの目を見ながら言葉を紡ぎ、そして頭を下げて礼をした。


 『おぉ・・・。』


 そんな俺を見ていた嫁候補の女性陣が、俺の振る舞いに対して、感心した様に小さく声を上げた。


 「頭を上げよ。 カイト。 今、この場には其方等と、勇者候補の面々に各騎士団団長。 そして、我が妃達しかおらぬ。 気を張らず、楽にして良い。」


 「ありがとうございます、ロアギル陛下。」


 ロアギルの言葉により、俺は、頭を上げて、少し気を楽に持つ様に心掛ける。


 「それで早速なのじゃが、カイトよ。 其方、《サキュバス》を虜にしたとは真か?」


 ロアギルが、俺達を王城に呼ぶ切っ掛けとなった、アブリルの話を切り出して来た。


 「虜・・・、にしたかは分かりませんが、慕ってくれている《サキュバス》は居ます。 それが、彼女です。」


 俺は後ろに居たアブリルを手招きで呼んだ。そんな俺の呼び掛けに応じたアブリルは、俺の隣まで来ると、ニコッと笑顔を作り、言葉を発する事無く右手を振った。


 ブシュッ。


 すると、アブリルを見たロアギルが、突然鼻血を噴き出した。


 『へ、陛下!?』


 そんな場面を見ていた皆が、心配そうにロアギルの名を呼んだ。


 「き、貴様等!! 陛下に、何か呪術をかけたのではないだろうな!?」


 ロアギルにローレンスと呼ばれた騎士が、俺達がロアギルに対して、何かをしたのではないかと疑い、俺達に怒りの形相を向けながら、腰に携えた鞘から剣を抜こうとする。


 「ま、まふぇ。 ろ~ふぇんすよ。 すんすん。 ふぅ・・・。 すまぬ。 心配掛けたな。 じゃが、あやつらの所為では無い。 ワシが興奮してしまっただけじゃ。 お主もあの《サキュバス》を見れば分かるじゃろ。 その妖艶さが。」


 ロアギルは3人の王妃達に介抱されながらも、ローレンスと呼ばれる騎士を制止してくれた。俺は、そんなロアギルを見ていて、何とも面白い国王なのではないかと、好印象を持ち始めていた。


 「へ、陛下・・・。 申し訳ありません。 出すぎた真似を。」


 「良いのじゃ、ローレンスよ。 お主はワシを案じてくれたのだ。 ワシに、其方を咎める理由など有るはずも無い。」


 「はっ! 有り難き、お言葉。」


 そうして、ロアギルにローレンスと呼ばれている騎士は、元居た立ち位置へ戻っていった。


 「それにしても、カイトよ。 其方、《サキュバス》に加え、多くの種族の綺麗どころを嫁に持つとは、中々やるようじゃ。」


 「いえいえ。 ロアギル陛下こそ、お美しいお后様ばかりで羨ましい限りです。」


 『ふっふっふっ。』


 『何この2人!?』


 魁人とロアギルの会話を聞いていた者の中から数人が、我慢出来ずに突っ込みを入れるのであった。

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