表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/122

第72話 アブリル=ルピンケリ

 魁人は、シェリーの頼みでもう1部屋借りる事にし、受付のお姉さんから部屋の鍵を受け取った。


 「そうだ、最後にカイト殿。 勇者候補の招集は明後日になる予定だ。 その為、明日1日は自由にしていてもらって構わない。 体を休めるなり、街を見に行くなり、好きな様に過ごしてもらえば良い。 明後日は、私がこちらの宿に迎えに来る。」


 カミーラが、これからの予定を、俺に伝えてくれる。


 「了解、カミーラさん。」


 「ふふ。 これも私達の仕事の様なものだ。 では、カナリー行くぞ。」


 「ええ、カミーラ。 それでは、皆様これで失礼しますね。 もし、何かありましたら、私共の詰所にお越し下さい。 詰所は、商業区の王城近くにありますので。」


 「カミーラさん。 カナリーさん。 色々とありがとうございました。」


 俺は世話を焼いてくれたカミーラとカナリーに、お礼を言った。


 「ああ、構わないさ。」

 「ではまた。」


 こうして、魁人達と別れの挨拶を交わしたカミーラとカナリーは、顔をほころばせながら宿屋を出て行った。


 「それじゃあ、今日は部屋に行って休もうか。 俺は明日、街に出てみようと思うから、一緒に来たい人がいれば、昼頃にこの受付前のロビーに集合で。」


 『はーい!!』


 程無くして、魁人達は皆それぞれに部屋へと向かって行った。


 「カイト様。 本当にありがとうございます。」


 部屋に入ると、俺はシェリーを背中から下ろし、備え付けられたベットに寝かせてあげた。すると、シェリーがお礼を言ってくれる。


 「気にしないで、シェリー。 俺は、傷は魔法で治せても、体力は回復させてあげられないみたいだから、今はゆっくりとお休み。」


 俺はシェリーに掛け布団を掛け、ローブのフード越しに頭を優しく撫でる様にしながら、優しい口調で伝えた。


 「ありがとう・・・ござい・・・ます、カイト・・・様・・・。 すぅ・・・。 すぅ・・・。」


 すると、それが気持ち良かったのか、シェリーの瞼がすぐに落ち、小さな寝息を立てて眠りについた。


 「シェリーは寝顔も綺麗だな・・・。 あ~っと、ダメだダメだ。 ふぅ・・・信頼してくれてるシェリーを裏切る訳にはいかないな。」


 俺はシェリーの頭を優しく撫でながら、被っているフード中に見えるシェリーの寝顔が、とても魅力的だと感じた。しかし、信頼を寄せてくれたシェリーに応えるためにも、邪念を飛ばし、何とか気を落ち着かせる。


 「今の内に、何か食べる物と・・・、水と拭く物も用意して来よう。 とりあず、内側からも鍵開けれるし、一応鍵閉めて・・・、後は書置き残しておけば大丈夫かな?」


 シェリーが目を覚ました時に、不自由の無い様に、俺は色々と揃えて来ようと考えた。そして俺は、この大陸に来る時から皆に習い始めていた、この世界の文字で、拙い文章ながらも書置きを残して部屋を出た。



 一方、魁人が部屋を出てしばらく経った頃。シェリーが静かに目を開けてベッドから起き上がった。


 「カイト様が勇者様候補の殿方だったなんて・・・。 これも、運命なのかもしれませんね・・・。 ふふっ。」


 シェリーは、自身しか居ない部屋の中で、1人嬉しそうに声に出して呟く。


 「本当にお優しい方・・・。 また必ず、お会いしましょうね、カイト様。」


 魁人の書置きを見たシェリーは、最後にそう呟き、魁人の書置きに自身の言葉を書き加え、こっそりと部屋を出て、宿屋を後にした。



 そして、しばらく時間が経った頃。外はすでに陽が落ち、夜になっている。そこへ色々と物を揃えた魁人が部屋に戻って来た。


 「ただいま~・・・、未だ寝てるかな?」


 俺は部屋を出てからそれなりに時間が経っていたが、シェリーが未だ寝ている可能性も考慮して、こっそりと、そしてゆっくり部屋に入った。


 「あれ? 居ない? シェリー?」

 「ん? 書置きを置いた場所が変わってるから、起きて部屋を出たのか・・・。 あれ? 書置きに何か書き加えてある。」


 そんなに広くも無い部屋を一通り探し終えた俺は、書置きを置いた場所が異なっているのに気付き、用紙を手に取ってみると、シェリーに書き加えられた俺当てのメッセージに気付いた。


 (カイト様へ。 何の挨拶もせずに去る(わたくし)を、どうかお許し下さい。 お会いした時にお話ししました婚約について、(わたくし)の中で決心が付きましたので、家に戻ります。 今までありがとうございました。 もし、次お会い出来る機会を持つ事が出来たのなら、カイト様に直接お伝えしたい事があります。 お許し頂けるのなら、どうか聞いて下さい。 今と変わらない優しい貴方様に、またお会い出来る事を、心より祈っております。)


 「シェリーより、か。 行っちゃったか~。 未だあんまり話せて無かったけど、何か寂しいな。 まぁ、シェリーが元気になって良かったとしようか。」


 頭の中でシェリーからのメッセージを読んだ俺は、少し寂しさを覚え、軽く苦笑いを浮かべながら1人呟く。


 「今日はもう休もう。 明日、出かけるつもりだし。」


 シェリーの介抱の予定が無くなった俺は、手持無沙汰になり床に就く事にした。


 「あぁぁぁんっ!!」


 何時の間にか眠っていた俺の耳に、何だか艶めかしい嬌声が聞こえて来て、眠りから覚めた。


 「んぅ・・・、シェリ~、どうかした~?」


 ぷにゅんっ。

 「あんっ!」


 俺は左手で寝ぼけ眼を擦りながらシェリーの名前を呼び、掛け布団を退け様とすると、何かとても柔らかい物を右手で触った、否、掴んだ感触があった。


 「・・・。」

 「あれ!? そう言えば、シェリーは出て行ったはず・・・。 今の声は一体・・・? それに、ぷにゅんっ、ってめっちゃ気持ち良い感触が・・・。」


 段々と目が覚めて来た俺は、今の状況に違和感を覚え始め、ブツブツと呟きながら思考を巡らせる。


 「はぁ・・・、はぁ・・・、はぁん・・・。」


 「ちょっ!? 誰っ!? でか!?」


 ハッキリと目が覚めた俺は、俺の腰に跨る、熱い吐息を吐きながら舌で自身の唇をチロチロと舐めている、妖艶な姿のお姉さんと目が合った。そして、俺はそんな姿のお姉さんを見て、思わず驚きの声を上げた。特に胸がでかい。うん、でっかい!


 「君の魔力と・・・、はぁ、はぁ、指使い凄すぎぃ・・・。 この私が、気持ち良くなっちゃっうなんてっ。 ふふっ。 それにぃ、君、凄くカワイイ顔してるっ。 お姉さん、君の事気に入っちゃったっ。」


 「えぇっと・・・、お姉さんは一体?」


 俺は理性を総動員しながら、妖艶なお姉さんに問い掛けた。


 「私は《淫魔族》、《サキュバス》の《アブリル=ルピンケリ》。」

 「お姉さんを、君のモノにしてよ。」


 寝ていた魁人の腰の上に跨ったまま、《サキュバス》のアブリルはそう告げたのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ