第65話 勇者候補
次の日の朝。魁人達一行は、カミーラとカナリーの話を聞くべく集まっていた。
「き、昨日はその・・すまなかったな。 カイト殿。」
「い、いえ・・。 そんな事は・・。」
昨日は互いに微妙に意識したまま別れたため、少しぎこちなさが残っていた。
「これは昨日、2人の間に何かあったわね。」
そんな2人の様子を見て何かを察したエメリィが、疑問を口にする。
「へぇ~。 例えば何さ?」
そんなエメリィの言葉が気になったのか、ルビアルカがエメリィに質問した。
「この様子から察するに・・・これは恐らくカイトがカミーラに「綺麗だ」とか、「不器用だけど優しい」とか褒めて・・・カミーラがカイトを意識する様になったわね。 それでそんな2人にカナリーが茶々を入れて「私も嫁に貰ってはくれまいかとか言いなさいよ」とか言って、今絶賛お互いを意識中、と言う感じかしら。」
(怖!? エメリィ、鋭過ぎ!?)
余りにも的を得ていたエメリィの予想に、俺は表情には出さなかったが、内心では滅茶苦茶焦っていた。
「な、何故それを!?」
しかし、真面目な性格のカミーラは誤魔化す事が出来ず、驚いた様を表してしまい、墓穴を掘ってしまった。
『えぇぇぇぇぇ!?』
驚いた理由は様々の様だが、女性陣が皆一様に驚きを露わにしている。
「まさか本当だったの!?」
「あははは・・・。」
こちらを向いて聞いてきたエメリィに、俺は苦笑いを浮かべる事しか出来なかった。
「もうこの際だから更に1人や5人、10人とか増えちゃっても良いわよ、カイト? この世界は一夫多妻制なんだから、カイトには他の誰よりも男らしいんだぞ! という所を見せてもらいましょう!」
そんな時、エメリィが思いも寄らない提案を口にして来た。
「えっ!? 良いの!?」
「まぁね。 でも、カイトはお嫁さんがもっと増えてもちゃんと私を、皆を愛してくれるんでしょ?」
「もちろん!」
俺はそんなエメリィからの問い掛けに、即答でもって気持ちを表した。
「ふふっ。 でしょ? だから、良いの。 この娘達も皆そうだと思うわよ? じゃないと、お嫁さん候補がこんな人数になってるのに、キミに付いてきたりしないわよ。」
「まぁ、この話はとりあえずここまでにしておきましょう。 カミーラ、あなたの話って何かしら?」
エメリィが俺に代わって話を締めくくり、カミーラ達の話を聞く方向に持って行ってくれた。
一方、その傍らではファブリとミーネが、皆に聞こえない程度の音声でこっそりと相談していた。
「わ、私達カイトさんの弟子になったけど、い、いつの間にかお嫁さん候補にもなってたね、ミーネ。」
「私はそれでも良っかな~。 師匠強いし、カッコいいし、優しいし。 ファブリは嫌?」
「そ、そんな事無い! あっ・・。」
少し大きめの声を出してしまったファブリは辺りをキョロキョロと見回し、他の誰にも聞こえていなかった事を確認する。
「むふふ! 今度2人で夜這いでも掛けて師匠に告白しよっか!」
「う、うん・・。」
「じゃあ、決まり!」
こうしてファブリとミーネによって魁人夜這い計画が密かに画策されていた。
「私達の話と言うのは、先日も貴殿に話した反攻作戦にも関係がある事だ。 この話は詳細を話さねばならないので、すまないが少々長くなる。」
ファブリとミーネがこっそりと話をしていた事には気付いていない魁人達は、カミーラの話を聞き始めていた。
「我等の国《シルヴァリス》には、聖王騎士団、王国騎士団、王国女騎士団の3騎士団がある。 各騎士団の詳細は省くが、《魔族》達への反攻作戦に向け、2つの目標を以って行動している。 1つは先日カイト殿にも伝えた様に、冒険者達に協力を仰ぎ、反攻作戦に参加してもらう事だ。」
「そして2つ目は、我等は各騎士団毎に1人以上、男性の勇者候補を擁立する事だ。 この件は国王陛下から各騎士団団長への直々の御命令なのだ。 その理由は、勇者候補の中から、各王女殿下の伴侶を選ぶ事にある。 陛下の御言葉は「う~ん・・娘達には可能な限り自由に恋愛させてやりたいのじゃが・・《魔族》との戦があるしのぉ・・。 あっ、そうじゃ! ワシ、英雄位の資質を持つ義理の息子が1人は欲しいと考えておったし、娘達もそんな婚約者なら守ってもらえて安心じゃろ。 じゃから《魔族》をどうにか大人しくさせられる様な勇者っぽい者を、各騎士団1人以上探して来てはくれまいか、団長の皆よ。」との事だ。 要するに、反攻作戦に参加してもらう勇者候補兼、婚約者候補と言う訳だ。」
『・・・・・・・・。』
(国王ノリ軽いな!?)
魁人達一行は、カミーラの口調と国王の口調のギャップに、思わず皆微妙な顔をしながら、図らずとも内心でそんな感想を抱いていた。
「ち、違うのだ皆! その・・国王陛下は少々その・・親ばか・・と言って良いものか・・そんな感じでな・・。 普段はもっと厳格な方なのだ。 誤解しないでくれ・・・。」
微妙な空気を出している俺達の様子を察してか、カミーラが少々不安気に助言を加えて来る。
『はいはい。』
もっとシリアスな話かと考えていた俺達は、思わず和む話にカミーラを優しい目で見ながら相槌を打つ。
「だが、勇者候補として、陛下に謁見すればもう引き返せなくなる。 《魔族》への反攻作戦に参加しなければ、最悪極刑になる可能性があるやもしれん。 しかし、勇者として活躍できればその見返りも大きく、爵位及び領地の贈呈に、金一封もあるそうだ。 更に、王女殿下の何方かに見初められたのなら、婚約に加え、同棲生活が出来るお屋敷に、数人の使用人も付いてくる事になる。」
「ちなみにだが、私から見て、王女殿下はどの方もエメリィ殿達と比べても遜色ない程、大変お美しい方々ばかりだと思う。」
「勇者やります!」
カミーラから利点と欠点を聞き、僅かな時間で考慮した上で、俺は即答する。
『早っ!?』
そんな俺の反応を見ていた皆が、思わず驚きの声を上げるのだった。




