第63話 不運
俺はファブリとミーネを抱き抱えながら、先に行ってしまったエメリィ達の乗るラナドの竜車を、飛行魔法で飛んで追い駆けていた。
ドッドッドッドッ。
ガラガラガラガラ。
「うぅ・・、カイト~~~・・・・。」
すると、すぐ前に見えて来た竜車から、エメリィの涙声が微かに聞こえて来る。
ヒュォォン。
「お~い! エメリィ~!」
俺は追い付いた竜車の御者台のすぐ上に付いて飛ぶ様にし、エメリィに声を掛けた。
「えっ!? カ、カイト!? ど、どこ!?」
声が届いたらしい。エメリィが御者台からキョロキョロと周りを見渡して、俺を探している。
「上だよ、エメリィ。 上。」
「う・・え・・・えぇぇぇぇぇぇ!?」
「ととととと、飛んでるの!? 飛べるの!? 飛んじゃってるの!?」
笑顔でエメリィに呼び掛けると、空を見上げたエメリィは、飛んでいる俺達を見て矢継ぎ早に驚きの声を上げた。
「ははっ。 2人をそこに下ろすから。 御者、代わってもらって、エメリィ。」
「う、うん。」
俺が笑い掛けながらそう言うと、エメリィは素直に了承して頷いてくれた。
ドサ。ドサ。
俺は御者台のエメリィが座っている両隣に、ファブリとミーネをそれぞれに下ろした。
「よし! 俺は後ろから乗るよ、エメリィ。」
「うん、カイト! ご、ごめんね?」
「分かってる。 今回のは事故だしね。 こうして追い付けたから気にしないで、エメリィ。」
エメリィを安心させられる様に、俺は笑顔でそう伝えた。
「ファブリ、後はお願い。」
「は、はい! 師匠。」
ヒュンッ。
スタッ!
こうして俺はファブリに御者役を頼んで竜車の後部へ飛び、空中から降り立つ様にして乗り込んだ。
「ふぅ・・流石に初めて飛行魔法使ったから疲れた・・。」
「カイト君てば空飛べるなんて~! 相変わらず、すごいんだから~!」
バシッバシッ。
ぐら。
「あっとっとっ・・とっ?」
ナユカが俺を褒めながら肩を叩いて来ると、俺は少しバランスを崩してよろめいた。どうやら思っていたよりも飛行魔法の長時間使用は体に負担が掛かる様だ。
ガッ。
「ぉ~~~~~~。」
『あっ・・・・・。』
俺は竜車の後部の段差に躓き、後ろへ倒れていく。それを見ていた皆が、嫌な予感を察した様に声を上げた。
ドザッ! ゴロゴロゴロゴロゴロ。 ドサァ・・・。
『・・・・・・・。』
「うぉ~い! カイト落ちたぞ! ナユカ・・あんた・・。」
『お兄ちゃぁぁん!!』
「ナユカ様・・・この《ヒューマン》の国では人を殺すと、最悪死刑になるらしいですよ?」
「ひぃぇぇ!? カ、カカカ、カイト君~~!」
「えぇぇぇぇ!? カイト落ちたの!?」
『ししし、師匠!?』
一瞬その場を静寂が支配したが、遅れて魁人が竜車から落ちてしまった状況を把握した皆は慌てふためいていた。
「よっと!」
パンッ。パンッ。
「きょ、今日は事故率高いなぁ・・厄日かな・・・。」
そして俺はと言うと、倒れていた地面からすくっと立ち上がり、また先に行ってしまった竜車に目をやりながら、今日の不運続きをほんの少し嘆いて衣服に付いた砂埃を払っていた。
ドドッドドッドドッドドッ。
すると、いつの間にか背後から十数頭の馬が走る音が聞こえて来ていた。先に出発してしまった俺達の竜車を追って来たカミーラやカナリー達女騎士団が、追い付いて来た様だ。
ドッドッ。
『『・・・・・・・・・。』』
一斉に俺の側で馬を制止した女騎士団の皆が、一様に驚きを露わにしている。どうやら一部始終を見ていた様だ。
「カ、カイト殿。 貴殿・・何とも無いのか?」
代表として、カミーラが俺に安否を尋ねて来た。
「ええ、俺は何とも。 強いて言うなら、服が汚れちゃった位ですね。」
『『・・・・・・・・・。』』
どうやら俺の答えに、女騎士団の皆は驚きの余り絶句している様だ。
「カミーラ。 この方なら、私達の勇者様候補として、良いんじゃないですか?」
「やはり、カナリーとは気が合うのだろうか。 私も、そう思っていたところだ。」
2人が何かを決意した様な顔をして、話し合っている。
「え? それって・・・」
「カイト~! 無事みたいね~!」
俺が、どういう意味か聞き返そうとしたところで、エメリィが俺を呼ぶ声が聞こえて来た。どうやら竜車を引き返して来てくれた様だ。俺が無事だった事に安心した様な顔をして、御者台に座っている3人が手を振りながら竜車をこちらへ走らせて来た。
「カイト殿。 すまないが、もう1つお話ししておきたい事が出来た。 皆合流できた事ではあるし、今日はこの辺りで野営しよう。」
「分かりました。」
カミーラからの提案に、その方が良いと考えた俺も同意する事にした。
「お~い、皆~! 今日はここで野営しよっか~!」
『はーい!!!!』
こうして、魁人達一行と女騎士団一行は野営の準備に取り掛かるのであった。




