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第54話 初心者

 「それでは、お受け渡しはこれにて完了です。 当店をご利用頂き、誠にありがとうございました。 皆様、良い旅を。」


 「ありがとう。 店員さん。」


 冒険者組合で登録を終え、追いかけっこをする様にして慌てて組合を出た俺達は、ついでに町で地図や食料などを買い込んでから、乗り物を売っていたお店に戻り、ラナドの竜車を引き取った。


 ラナドの竜車は、箱馬車風の車両、簡単に言うと小さな家の様な物に車輪が4つ付いている車両を、馬の代わりにラナドに引かせる形になっている。ラナドは《龍族》の一種、《土竜(アースドラゴン)》に分類されている比較的大人しい気性の竜だ。羽が無いので飛ぶ事は出来ないが、脚力など力が強いのが特徴だ。


 「さてと・・・。 旅の用意もしたし、この大陸を色々と見に行ってみようか。 誰か運転・・・。」


 「はーい! はい! はい! はい! 私が運転してみたい!」


 竜車を運転する者が誰かいないか聞こうとすると、エメリィが何だかワクワクした様な目で一番に手を上げ、御者役を買って出てきた。何時もよりテンションが高めの様だ。


 「なら、折角だからエメリィにやってもらおうか。」


 そんな楽しそうな様子のエメリィを見て、水を差すのも悪いなと思った俺は、エメリィに御者を任せる事にした。


 「なぁ、カイト・・・。 今、エメの言い方何か・・・。」


 「ん?」


 「さぁ! 皆早く乗って乗って!」


 ルビアルカが俺に何かを言おうとしていたが、すでに御者台に座っているエメリィが逸る気持ちを抑えきれず急かしてくる。


 「とりあえず皆、乗っちゃおう。」


 俺がそう言うと、他の皆も順に車両に乗り込んでいく。


 「よし! 皆乗ったよ、エメリィ。 出発しようか。」


 「分かった~。 出発進行~!」


 ピシンッ。


 ドッ。   ドッ。  ドッ。 ドッ。

 カラッカラッカラカラ。


 そう言ったエメリィが手綱を引くと、竜車はラナドの足音と共に車輪の回る音を鳴らしてゆっくり進み始めた。


 「えーっと・・・。 町の外へはこのままこの大通りを真っすぐ行って、あの門を(くぐ)れば出れるはず。 そこから町を出て、北東に数日程街道を進むと次の町、《ニルブル》があるから次の目的地はそこかな。」


 『分かった。』

 『はーい!』

 「分かりました。」


  俺は買った地図と睨めっこしながら、次の目的地を皆に告げると、皆は了承してくれた様でそれぞれに返事をくれた。

 

 「お気を付けて。 良い旅を。」


 門を潜る時、町の門番らしき男性が旅へ送り出す言葉を掛けてくれる。


 ドッ。 ドッ。 ドッ。 ドッ。

 カラカラカラカラ。


 「ん? あれ? エメリィ、街道からかなり離れてしまってない?」


 《アポトリカ》の町を出てしばらく経った頃、車両の窓から外を見てみると、街道が随分と遠くに見える事に気付いた俺は、御者台にいるエメリィに聞いてみた。


 「ねぇ、カイト・・・。 これってどうやってちゃんと・・・曲がるのかな・・・?」


 「えっ!? エ、エメリィさん・・・。 も、もしかして・・・運転・・・初めて?」


 「う、うん・・・。 えへへ・・・。」


 エメリィの回答から、もしかしてと思った俺がそう聞くと、エメリィは苦笑いを浮かべながら頷いた。


 『・・・・・・。』

 

 『マ、マジかーーーー!!!?』


 俺とエメリィの会話を聞いていた皆も、俺と一緒に驚愕の声を上げた。


 「ちょっ! 一旦止めよう、エメリィ!」


 「こ、こう?」


 ピシッ。


 ダッダッダッダッダッダッ。

 ガラガラガラガラガラガラ。


 エメリィが手綱を強く引くと、竜車のスピードが更に上がった。


 『速くなったぁーーーー!?』


 手綱を握っているエメリィも一緒に驚いている。


 「やばいよ、カイト君! なんか森が見えて来ちゃったよ~! 突っ込んじゃう!」


 ナユカが、竜車が森に向かって行ってしまっている事に気付き、注意を促してくる。


 「くっ! エメリィ、俺も手伝う! プロテクション!」


 そう言って俺はラナドの竜車全体に防御魔法を掛け、車両の御者台に俺も移動して一緒に手綱を手に取った。


 バサバサバサバサ。


 そして、とうとう森へ竜車が突っ込んで行ってしまう。


 「えっと・・・、こうすると左、こうすると右・・・、こうすると・・・。」


 俺はブツブツと呟き、操縦方法の確認をしながら何とか竜車を操り、木々から避けている。


 ガサガサッ。

 ザッ。 ザッザッザッザッ。

 

 すると、目の前の森の木々の間から、何かの影が1つと大きな影の塊が1つ、急に飛び出してきた。


 『あっ!!』


 ゴドッ。


 操作のままならない状態では咄嗟に避ける事も出来ず、俺達は驚いた声を上げ、ただただ事の成り行きを見守る事しか出来なかったのであった。

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