第49話 最後は綺麗に
『カイトく~ん! いってらっしゃ~い!』
『カイトー! 気を付けてなー!!』
『ナユカ様~! お、お幸せに~!!』
『皆さん! お気を付けてー!!』
翌朝、俺達が《キリンの街》を出立すると聞き付けた街の人達が、船の停泊場まで見送りに来てくれていた。
「出港ーー!」
出発時刻になり、俺達の乗っている船の船長が大きく号令を掛ける。
「ありがとう、皆!! 行ってきまーす!!」
『行ってきまーーーす!!』
俺達は、船の停泊場まで見送りに来てくれていた街の皆に、手を振りながら別れの挨拶をする。
「あっ、カイト! 折角だから花火やってあげたら?」
街を出発するというシチュエーションから、エメリィが以前エルフの集落で俺がやって見せた、花火の事を思い出した様で、そう提案して来た。
「船長さん。 少し、お礼の見世物? の様な物を街の人達にしたいんですけど、大丈夫ですか?」
エメリィの提案に異論は無いと思った俺は、安全面等も考慮して、念のため船長に許可を貰うべきだと考え、聞いてみる事にする。
「何の事かはワシには分からんが、ワシ等船乗りの救世主である坊主からの頼みだ。 船を壊したりしなければ構わんよ。 はっはっはっ!」
「ははっ。 ありがとうございます。」
救世主と大げさに言われた俺は、照れながらお礼を言う。
「・・・・・・。」
キィィィィィィィン。
そして、俺は集中を始め、掌に魔力で作った球体を複数個出現させる。街から離れていく船の甲板から上空へ放ち、停泊場に居る街の皆にも見える様にする為に、1つ1つの魔力球を大き目に作っていく。
「ハアッ!」
ヒュ~ンッ。 ヒュンッ。 ヒュンッ。 ヒュンッ。
そして、その魔力球を上空へ順次放っていく。
パーンッ。 ポンッ。 パーンッ。 パーンッ。
魁人が放った魔力球は空中で音を鳴らして破裂し、カラフルな光る花の軌跡を残してスゥーと消える。
『おぉーーーーー!? 空に光の花が咲いてるぞ!!』
『すごく綺麗~~・・・。』
停泊場に居る街の者達から、初めて見る花火に対しての感嘆の声が聞こえて来た。どうやらサプライズは成功した様だ。
ヒュ~ンッ。 ヒュンッ。 ヒュンッ。 ヒュンッ。
パーンッ。 ポンッ。 パーンッ。 パーンッ。
これを複数回繰り返していく。
「これがエメが言ってた花火ってやつか~!」
『キレー!! お兄ちゃん凄いね!!』
「これが花火・・・。 綺麗ですね・・・。」
「やっぱりすごいね! カイト君!!」
「キュァァァァ~~~!」
どうやら嫁候補の女性陣達にも好評の様だ。皆、華やかなものを見る、キラキラした様な目で上空を見つめている。
ヒュヒュヒュ~ンッ。
パパパーンッ。
そして俺は、最後に花火と同じ要領で、上空へ停泊場に居る街の皆に向けたメッセージとして、「ま」「た」「ね」と空中に描いた。
「ねぇ、カイト。 今のは何の形なの?」
エメリィが、最後に花火の魔法で空中に描いた文字について、質問してきた。
「あれは街の皆に向けて、またねって空に描いたんだよ。」
「え? カイト。 またねってそんな字じゃ無いわよ?」
「えっ!?」
俺はエメリィがそう言って来た事に、思わず驚きの顔を見せる。
「・・・。」
それも束の間、すぐに俺はこの食い違いが何故起きているのかを考え始めた。
「あっ!!」
そして俺はようやく気付いた。無意識で身体強化の魔法を使っているのなら、同じ様な感じで、自分には言語に関する翻訳魔法の様な物を使っていたのではないかと。その証拠に、翻訳魔法を使っていないエメリィは日本語の「またね」が読めなかったのだ。
「そ、そう言えば俺・・・。 まだこの世界でちゃんと意識して文字って見た事無かった・・・。 あの時のアンケート用紙が普通に読めたから、全く気にした事無かったな・・・。」
今更気づいた事実に、魁人はガックリと項垂れる。
「だ、大丈夫、カイト? どうかした?」
「ははっ。 大丈夫、大丈夫。」
そんな俺を見ていたエメリィが心配して声を掛けてくれるが、苦笑いを浮かべながら元気の無さそうな返事を返す事しかできなかった。
「今度、皆に字、教えてもらおう・・・。」
《ルミリア大陸》から離れるこの日、空に綺麗な光の花を描く魁人に、綺麗にオチが付いたのであった。




