第46話 祝宴
「皆~、今日は集まってくれて、ありがと~! デビルクラーケン討伐のお祝いとして、今日は盛大に盛り上がりましょ~!!」
『お~~~~~~!!』
デビルクラーケン討伐を終え、《キリンの街》に戻って来た俺達は、次の日、ナユカ主催での街ぐるみの祝宴に招かれた。
「では、今回の一番の功労者のカイト君に、乾杯の音頭を取ってもらいましょ~!」
ナユカが、いきなり俺に音頭を取る役を振って来た。
「えっ!? お、俺!?」
何も聞かされていなかった俺は、思わず驚きの声を上げてしまう。
「さぁさぁ、カイト君! こっち、こっち!」
ナユカが今立っている簡易的な壇上に上がってくる様、促してくる。ここで断って良い雰囲気を壊すのも忍びないと思い、仕方なく俺は壇上に上がっていく。
『キャー、カイトく~ん!!』
この場の何処かから、黄色い声援が聞こえて来た。俺はそれにどう対応すべきか分からず、苦笑いを浮かべながら手を振る。
「え~っと・・・。 それではいきます! カンパ~イ!!」
『カンパ~イ!!』
こうして皆で乾杯をした後、デビルクラーケン討伐の祝宴は始まった。
『がるるるるるる!!』
祝宴が始まってしばらく経った頃。初めて見るものに警戒する犬の様に、周りを威嚇して俺に張り付く、エメリィ、ククル、クルルの姿が在った。
1人でデビルクラーケンを倒してしまえる強さに加え、容姿も良いとなれば、アプローチを掛けて来る女性が増えるのは当たり前だろう。案の定、街の女性達に囲まれた魁人に、アルカメリル含む魁人の嫁候補の女性陣は近付けないでいた。それに業を煮やしたエメリィが突撃、ククルとクルルもしばらく魁人と離れて寂しかったのだろう、エメリィを真似て参戦したという次第だ。
「あ、あはは・・・。 ごめんね、皆?」
いくつかの意味を含ませ、俺は周りを見ながら苦笑いを浮かべて頬を指で軽く掻きながら、お詫びの言葉を口にした。
そして、街の女の子達に断りを入れた俺は、エメリィ達と一緒に過ごし始める。
「カイト君てばエメちゃんが捕まっちゃて怒ってね、こう手からビーって魔法放ったら、デビルクラーケンが真っ二つ! ほんとすごかったんだから~!」
勧めてもらった飲み物を飲んでいると、ふと俺の耳に、ナユカが街の人達に俺の話をしているのが聞こえて来た。
「カイト君が颯爽とエメちゃんを助ける姿は王子様みたいだったよ~。 そしてカイト君てば、エメちゃんにキスして最後、「ずっと俺の側にいて欲しい。」だって~!」
『キャーーー。』
「ぶーー! げほっ! げほげほっ!」
ナユカの話にしばらく聞き耳を立てていた俺は、その話が予想外の内容に進み、思わず口に含んでいた飲み物を吹き出して咽た。さすがに、こんな話題を出されると誰だって恥ずかしいだろう。
「たくっ・・・。 大丈夫か? カイト。」
近くにいたルビアルカが、心配しながら背中を擦ってくれた。
「あ、ありがとう。 ルビアルカ。」
「で?」
俺がお礼を言ったのも束の間、ルビアルカがふと質問してきた。
「で? って?」
しかし、ルビアルカからの質問の範囲が広すぎて返答できず、俺は聞き返す事しか出来なかった。
「キスしたってのはどういうことさ?」
『どういうことさ?』
ルビアルカに加え、ククルとクルルが珍しく少し怒ったような表情で、ルビアルカのセリフを真似て詰め寄って来た。ついでに、リリィも楽しそうにこの流れに加わっている。
『お兄ちゃん! 私達にもして下さい!!』
「えぇ!?」
『今すぐ!! さぁ! さぁ! さぁさぁ!!』
俺は驚きを表す様に声を上げるが、気にした様子も無く、ククルとクルルがかつて無い程グイグイ迫って来る。
「なら、あたし達もよろしく! カ~イト!」
「お願いしますね、カイトさん!」
ルビアルカとリリィも、いつもと違い、今までよりも何だか柔らかな物言いだ。だが、顔は笑っている様で笑っていない。
「よ、夜! せめて皆の居ないところでなら!」
この場に留まるのはマズイと思った俺は、とりあえず代替案だけ出してソソクサと逃げ出した。
『今しろ~!!』
「勘弁して~!」
『あはははははははっ!!』
こうして逃げる俺と追うルビアルカ、ククル、クルル、リリィの鬼ごっこが今始まる。それを見ながら街の人達は酒を飲み、皆で笑い、祝宴を楽しんだのであった。




