第45話 デビルクラーケン討伐後編
デビルクラーケン討伐に向け、船に乗って出没海域に向かっていた魁人達。その船の上で、魁人が釣りをしていると、デビルクラーケンを釣り上げる事となった。
うにゅるるるるるる。
船の倍以上の大きさがありそうな程、巨大なデビルクラーケンが船体に張り付き、触手を船に這わせる、気色の悪い音を立たせながら伸ばしてきた。
「へぇ~、デビルクラーケンって鳴くんだ。 うわっ! でっかっ! 触手気持ち悪っ!」
デビルクラーケンの姿を見て思ったことをそのまま口にした。
「カカ、カイトー! そんな事言ってる場合じゃ・・・。」
にゅるん。
「キャーーーーーッ!」
俺へと視線を向けていたエメリィが、不意を突かれ、デビルクラーケンの細い触手の1本に絡め捕られた。エメリィは、細い触手に足首から太股、腰、胸へと巻き付かれ、空中に持ち上げられたのだ。
「エ、エメリィー!?」
「カ、カイ・・・! うむっ・・・。」
魁人に助けを求めようとするエメリィだったが、細い触手の先端を口に突き込まれ、声を出せない様に塞がれる。
「むっ! むぅ!」
エメリィが、目尻に涙の粒を貯めながら何かを言おうとしている。
ブチッ。
「おい・・・。 俺のエメリィにそんな事して生きて帰れると思うなよ・・・。 エメリィに悪戯して良いのはこの俺だけだ!!」
ゴウゥゥ。
怒りを露わにする魁人から、微妙に格好付かないセリフと共に、凄まじく強い魔力が溢れ出た。
『ひぅ!』
「キュ~・・・キュウ・・・。」
余りにも強い魔力に、リリィ、ナユカ、アルカメリルは少し怯えた様な声を出す。
ギュンッ。キィィィィィィィン。
魁人の掌に、黒い魔力を収束させた球体が1つ現れた。魁人は最初に魔法の練習をした時、先ずこの形に魔力を形作った上で魔法を放った。そのため、今の所一番使いやすい魔法の型になっていた。
「死ね・・・。 ブラックレイ・・・。」
俺は眼前に腕を伸ばして掌をデビルクラーケンが居る方へ突き出し、冷徹な様相で呪文を唱えた。
キィィィィィィン。キュンッ。
「ギュォッ。」
魁人の掌から、黒い光の光線が直線状に進み、デビルクラーケンを一瞬で貫いた。それも束の間、魁人は掌を眼前から頭上の方へ振り上げる。
ズバンッ!!!
ブシュゥーーーーーー。
「ギュォォォォォ~・・・。」
デビルクラーケンが断末魔を上げ、血飛沫を撒き散らしながら、魔法が最初に当たった個所を起点に縦割りになった。
ズズゥゥゥゥゥゥン。
俺達の居る場所を避ける様にして、半分に割られたデビルクラーケンの胴が、船の甲板に寄り掛かる様に倒れて来た。
「エメリィ!」
俺はそんな事を気に留める事も無く、落ちてくるエメリィを受け止めに行った。そして、すぐにエメリィに巻き付ている触手を引きちぎる。
「けほっ! けほけほっ!」
「カイト~! ふぇ、うぇぇぇぇん。 怖かった・・・怖かったよ・・・。」
触手の所為か、粘液の所為かは分からないが、エメリィの服はボロボロになっており、所々肌が見えてしまっている。しかし、その事よりも恐怖が勝っていたのだろう、エメリィはすぐに俺に抱き付いて泣き出してしまう。
「ごめんね、エメリィ。 もう少し早く助けてあげられてたら・・・。」
俺はボロボロになっているエメリィの服の代わりにと、上着を脱いでエメリィに着せてあげる。
「ううん・・・。 カイトは助けてくれたよ。 ありがとう・・・。」
「けど・・・。 私こんな怪物に汚されちゃった・・・。 汚されちゃったよ・・・。 だから私なんかじゃ、もうカイトのお嫁さんでは居られ・・・んんぅ!?」
「んっ。」
チュッ。チュク。
俺はエメリィが最後まで言葉を発してしまう前に、抱き締めながらエメリィの口を唇で塞いだ。
エメリィは純潔を奪われるという事は無かったものの、怪物の触手に襲われる、なんて事は女性にとってはトラウマになるレベルの出来事だろう。その為、エメリィも過分に抱え込み、側に居られないと判断してしまった。俺はこの事で別れを告げようとする言葉を、エメリィに言わせる訳にはいかないと思い、キスをして止めさせたのだ。
チュッ。
俺はここでキスを一旦やめた。
「ぷはっ! カ、カカカ、カイト!? い、今!?」
エメリィは嬉し恥ずかしそうに動揺しながら、尋ねて来た。
「俺はエメリィが大好きだよ。 だからそんな事言わないで? ずっと俺の側にいて欲しい。」
動揺するエメリィに対し、俺は真剣な顔でエメリィの顔を見つめ、思いの丈を告白する。
「うぇ・・・、うぇぇぇぇぇん・・・。 カイト~。」
魁人の自分を思ってくれる優しい言葉に、今度は先ほど流した涙と違い、嬉し涙を流しながらエメリィは泣き出してしまう。
そんな2人の様子を見ていた2人と1匹。
「これ・・・。 私らいらなかったよね? ね?」
「ですね・・・。」
「キュゥ~・・・。」
それぞれに思いを呟く2人と1匹。
「あ、船長さ~ん。 デビルクラーケンの死体の一部を船尾に括りつけて、さっさと帰りましょっか~。」
「分かりやした、長! おい、皆! 帰港準備始めろー!」
『へ~い!!』
「えへへ~。 カイト~、大好き!!」
こうしてデビルクラーケン討伐を終えた魁人達は、それぞれに行動に移し、《キリンの街》へ戻るのであった。




