第36話 孵化
ゴツッ!
「な、何これーーー!?」
何かがぶつかる様な音が聞こえたかと思うと、入ったばかりのエメリィが急に大声を上げた。
「ど、どうしたのエメリィ!? 大丈夫!?」
俺は慌ててエメリィを全力で追いかけた。
ゴズンッ!
「あたっ!?」
バキンッ!
だが、すぐに俺は何かに勢い良く膝をぶつけた。
「痛くは無かったけどついつい声出しちゃったよ・・・。 恥ずかしい・・・。 けど、何だろこれ?」
俺はぶつかった物が何かを探るため、しゃがんでペタペタと手で触ってみる。
「あっ! カ、カイト、それ・・・、何か大きな卵みたい・・・。」
ここには魁人の太もも位までありそうな、大きな卵が2個あった。
「へぇ・・・。 卵か・・・。 ん? という事はこれ・・・、何かの巣!?」
俺達が祠だと思っていた物は、どうやら何かの巣だった様だ。
「あぁ・・・。 あの大岩の所為で入口ぐちゃぐちゃだったからなぁ・・・。」
「ちょ、ちょっと待った・・・。 さっき俺がぶつかった時、何かヒビが入る様な音がした気が・・・。」
バキッパキパキバキンッ。
先程膝をぶつけた方の卵が、完全に割れてしまったりしないかと、慌てて確認しようとすると、卵に更なるヒビが入ってきた。
「これ・・・、まずいよね? 何か生まれそうなんだけど・・・何の卵?」
「私では分からないかも・・・。」
『お兄ちゃん達大丈夫~?』
「カイト様~。 エメリィ~。 大丈夫ですか~?」
卵がどんな生物のものか相談していると、入口の方から俺とエメリィを心配する声が聞こえて来た。
「ここ、何かの巣っぽいんだ!! しかも卵からその何かが生まれそうだから、ルビアルカの居るところまで避難してて!!」
「ほら、エメリィも念のために戻って!」
バキンッ!
そう言った途端、卵が大きく割れる音がした。
『!!』
「エメリィ! 俺の背に!!」
「う、うん!」
その音を聞いた俺とエメリィは一瞬驚くも、俺は咄嗟にエメリィを背に庇い、卵から目を離さぬようにする。
バラバラバラバラ。
「キュィィィィィィ。」
とうとう卵から何かが生まれ、鳴き声を上げた。
「何だろあれ? 長めの首と尻尾に足が4本・・・いや手足か。 それと白っぽい色をしてる感じかな・・・白いトカゲ?」
俺はとりあえず分かる範囲で生まれた生物の特徴を言った。
「カ、カカカ、カイト・・・。 あれって・・・、もしかして今はもう居ないはずの聖龍なんじゃ・・・。」
「白いだけなら白龍なんじゃ?」
2人のリアクションには大きな温度差がある様だ。
「カイト・・・。 キミってこういう時、何時もすっごい落ち着いてるね。 私も冷静になれるから、頼もしくて良いんだけど。」
エメリィが苦笑いを浮かべながら、落ち着いて生まれた白い生物を見ている俺を、評価してくれる。
「キューーーー。」
生まれたばかりの白い生物は、度々鳴き声を上げている。
「でも、何で今頃その聖龍? 白龍? どっちか分からないけど、生まれたんだろう?」
俺はエメリィが何か知っている事が無いかと思い、聞いてみる事にした。
「そんなの決まってるじゃない。 カイトがその卵に膝蹴り入れたからよ?」
「あっ・・・。」
何とも単純明快な理由で目覚めてしまった、聖龍らしき白い生物なのであった。




