第35話 祠
「ははっ。 冗談だからね。」
皆の驚き様が面白かった俺は、思わず笑いを零してしまった。
「あの落石が跳ね上がったのも、この辺一帯に点在して在る、以前に落ちて来た石とか岩とかの所為でしょうね。」
リリィが落石の跳ね上がった辺りの草むらを見に行き、原因を探っていた様だ。
「それより、岩の転がった跡を見てみよう。 何かにぶつかった様だしね。」
「ルビアルカは、念のためこの辺りでまた岩とかが転がり落ちて来ないか見張っててくれないかな? いざって時の対処が一番上手そうだ。」
意外と細かな事に目が行き、肉体的にも強いルビアルカならば即座に動けるはずだと判断した俺は、見張り役をお願いする。
「へへっ。 そう言う事なら良いさ。」
ルビアルカにとって、強い魁人に頼られるのはどうやら嬉しい事の様だ。
そして魁人達はルビアルカと一旦分かれ、転がった大岩がある所に向かった。
「これは・・・、祠・・・っぽい物?」
《ギクス山脈》から転がって来た大岩は、祠の入り口の様な物にぶつかり、減り込んでいた。
「へぇ、こんなところに祠があったんだ。 こういう所って、やっぱり伝説の武具が隠されていたり、何かしらの強い力がゲットできたりするのが王道だよね! なんてねっ。 そんなのベタ過ぎるか! ははっ。」
「今から1000年ほど前の事。 ある種族の1人が世界を混沌に染め上げようと企んだ。 それに同調した者達が次々と仲間に加わり、1つの集団、軍隊、国へとどんどん規模を大きくしていく。 そして後に世界を巻き込む大きな争いへと変わって行った。 世界を巻き込む争いの元凶となったその者は後に、魔王と呼ばれるようになったのだ。」
「エ、エメリィさん?」
いきなりエメリィが真剣な顔で語りだした。
「そしてこの大陸に、その魔王を倒すべく立ち上がった1人の戦士が居た。 彼は白く輝く光の聖剣を携えて魔王討伐に向かう。 だがしかし、魔王の力は絶大で、その部下の部下の部下辺りの階級の者にあっけなく倒されてしまう。」
エメリィの昔話は未だ続く。
「というか、部下の部下の部下に倒されるって・・・。 急にショボさが・・・。」
あれから静かに聞いていた俺だったが、思わず口を挟む様に突っ込んでしまった。
「そうして彼の遺体と共に、折れた聖剣がこの大陸に帰って来た。 そしてその聖剣は一度鉄の塊に加工し直され、この大陸のどこかの祠に隠されたのであった。 めでたしめでたし・・・。」
「という話を作ってみたんだけど、どうかな? カイト。」
「今の作り話だったの!?」
俺はこれまでの話が、作り話だった事に驚き、ついつい突っ込みを入れてしまった。
「折角だからこの祠を調べようよ! カイト!」
「良い物が見付かると良いなと思いつつ、見付けた物が期待外れだった時の心構え的なものをし易い様に、あの話作ってみたんだから。 ね!」
「しょうがないな・・・。 じゃあこの大岩退けるから、皆下がってて?」
『はい。』
そう俺が言うと、4人は返事をして俺から距離を取った。
「ふっ!」
ズカァァァァン!
魁人は気合を入れ、正拳突きの様に勢い良く右腕を大岩に突き刺した。
しかし、格闘家やその道の達人では無いのにも関わらず、魁人の突きが鋭すぎたのか、大岩は砕けることなく、魁人の腕が突き刺さったままの状態になっている。魔力による身体強化は、普通の人が修練の末辿り着く境地に、易々と至る事が可能になる様だ。
「よっ!」
ズゴォォン!
ガラガラガラガラ。
今度は掛け声と共に、祠の様な物から大岩を引っこ抜き、軽々と持ち上げた。
「よいしょっと!」
ズズゥゥゥゥゥゥン。
「ふぅ~・・。」
最後に祠の様な物の側の何も無い場所に、大岩を置いて一息吐いた。
「すごーい! カイト~。」
『・・・。』
エメリィは、魁人の強さに慣れてきて感覚が少々麻痺してきている様だが、残りの3人はここまで魁人がすごいとは思わず絶句している。
祠の様な物を塞いでいた大岩が除けられた事で、入り口が見えた。中は暗くてハッキリとは分からないが、どうやら地下の方へ伸びている様だ。
「さぁ行きましょう!」
そうしてエメリィが先頭を切って祠の様な物へ入ろうとする。それを魁人、ククル、クルル、リリィが追い掛ける様にして付いて行くのであった。




