第3話 エメラ=トワイライト
タッタッタッタッ。
タッタッタッタッ。
《トワイライトの森》に逃げ込んだ、魁人とエメリィの2人が走っていた。
「カイト! この先に、私たちエルフの集落があるの! 先ずはそこまで行きましょう!」
エメリィは走りながら後ろを振り返り、俺にそう提案してくれた。
「分かった。」
俺はそう提案してくれたエメリィを見ながら、笑顔で頷いた。
「そう言えば、カイトは何であんなところに居たの?」
エメリィは疑問に思っていたのだろう、良い機会だと思ったのか、荒野に居た理由を聞いてきた。
「う~~~ん。 それが気づいたらあそこに立ってたんだよね。 何でだろ?」
俺は頬を掻きながら、苦笑いを浮かべそう答えた。
ガッ。
ズザーーッ。
あんまりな質問への返しに、走っていたエメリィは動かしていた足を木の根に引っ掛け、勢いよくコケて滑った。
「大丈夫!? エメリィ? 綺麗な顔が泥だらけだよ?」
少しニヤニヤしながら俺は、エメリィの心配をした。
「あ痛たた・・た。 もぉ~! キミねぇ!!」
エメリィは起き上がり、少し苦笑いの様で戸惑った様な、そんな複雑そうな顔で文句を言って来た。
俺はそんなエメリィとのやり取りが、とても楽しかった。
この世界で初めて話せて、仲良くなれた女の子でもあったからだ。
「あれ? そういえば俺、普通に言葉交わせてるな・・。」
俺は今更になって浮かんできた疑問を口に出した。
(さっきもちょっと痛かった? 程度でダメージほとんど無かったし、俺ってこの世界の中では結構強いのかも? エメリィも驚いてたしなぁ。)
そんなことを内心で考えていた時だ。
「エメねぇ!! そいつから離れて!!」
ここから少し先に見える、森に覆われている砦の様な建物、そこの門みたいな建築物の前から誰かがエミリィに向かって叫んでいる様だ。
ちなみに女性みたいだが、俺に弓の様な物を向けている。
「エメねぇって言ってたし、妹さんかな?」
俺はエメリィに尋ねた。
先ほど転んだエメリィを見て、俺に追われているのだと勘違いしている様だ。
同じくしてエメリィもそう思い至り、手を振りながら笑顔で返事を返した。
「エメラ~。 この人~。」
ヒュンッ。
ドスッ。
ズザー。
「・・・。」
少しの間、エメリィは口を開けて笑顔のままポカンと固まっていた。
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーー!?」
それも束の間、エメリィは矢に射抜かれた瞬間の魁人を見て驚いた。
タッタッタッタッ。
「エメねぇ、大丈夫!?」
同じ集落に住む妹の《エメラ=トワイライト》がエメリィにそう言って駆け寄ってきた。
「ちょっとぉっ。 エメラぁぁっ。 早いよっ!? 撃つの早すぎるよっ!!」
涙目になりながらエメリィはエメラの肩に掴み掛かり、前後に揺する。
「そうだよ!! ちょっと痛かったじゃん!!」
俺はそう言いながら、矢の当たった額を擦って起き上がる。
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーー!?」
エメラは驚きのあまり叫んでいた。
「あっ! 叫び方同じだね。 姉妹だ。」
ニコッっと笑い掛けながら俺はそう言った。
「私はキミの頑丈さには、もうだいぶ慣れたなぁ。」
エメリィは腰に手を当てて、しみじみと魁人にそう言うのであった。