第22話 リリィ=グラス
「いやいや、エメリィ。 さすがにそれは・・・、無いと思うけど?」
俺は自身の光属性の魔力が、さすがにそこまでのものでは無いのではと思い、エメリィの言葉に否定的になる。
「私も推測ではって感じだけどね。 でもカイト、良く思い返してみて?」
「えっ?」
「キミは、あの戦闘でメテオに当たってもピンピンしてて、オーク達の持ってた鋼の武器が効かず、たぶん魔力のお陰だと思うけど身体能力抜群でルビアルカと渡り合い、あの数のオークを光属性のアンチ魔法で直したんだよ?」
『・・・・・・・・・。』
この場に居るエメリィだけがこれまで魁人をずっと見てきたが、他の者は初めて聞く事もあったのだろう。皆驚きを通り越して絶句している。
「ちなみに闇属性の魔力も・・・」
俺の闇属性の魔力についても、エメリィが何かを言いかけた時、
「何でまだこんな所で油を売ってるのよあんたはっ!!」
ドスッ!
俺達の目の前を、何か叫んでいる小さな影が横切る。そして気が付けば、先程まで話していたはずの妖精族の少年の姿が無くなっていた。
「ギャーッ! 痛たたたたた! お姉様許して下さいぃぃぃ!!」
先程まで話していたはずの妖精族の少年は、地面に倒れ伏し、その姉らしき妖精族の少女にぐりぐりと背中を踏みつけられていた。
「長が大変な時に! 未だ森を出たばかりのこんな所で! ぐだぐだしてるなんて! お仕置きよっ!! ふんっ!!」
ぐりぐりぐりぐり。
「ギャーッ。 そ、そこに光魔法をっ! つ、使えるっ、ゆ、勇者様がっ!!」
妖精族の少年は我が身可愛さに俺を指さし、あろうことか嘘まで吐いて助かろうとする。
「いいえ。 人違いです。」
俺は手を横に振りながら即座に否定した。何故なら俺は勇者では無いのだから、嘘を吐く訳にはいかない。
「薄情者ーッ!」
しかし妖精族の少年には俺に見捨てられたと映ったのだろう、妖精族の少年は涙目に、否、もう泣きながら非難の言葉を言ってくる。
「はぁ・・・、仕方ない・・・。 そこの妖精族のお嬢さん。 俺は勇者じゃないけど、光属性の魔法は使えるから、もう弟さんを許してあげない?」
「あら、そうだったんですね。 ご助力感謝致します。 ふふふっ。」
(怖っ。)
妖精族の少女の見せた性格の豹変ぶりが凄く、俺は内心で恐れを抱いていた。
「リリィは、弟と他の人との対応の差が相変わらず凄いわね・・。」
「あら? エメリィじゃないですか! お久しぶりですね。」
「まさかの知り合い!?」
俺は2人が和やかに言葉を交わすのを見て驚き、ついつい声を上げてしまう。
「ええ。 彼女は《妖精族》の《リリィ=グラス》。 たまに長同士の会合の時に、お母さまに付いて《シャーストラの森》に来る事があるんだけど、その時に知り合ってね。」
驚いていた俺に、エメリィがリリィと知り合った経緯を話してくれた。
「あっ、リリムリア様が大変なんでしょ? 早く行きましょう。」
「そうですね。 光属性の魔法を使える方が、エメリィのお知り合いなら、問題も無さそうですし、では皆様。 ご案内致しますので、こちらへどうぞ。」
リリィは俺達に、上品なメイドさんの様な、丁寧な対応をしてくれる。
「ほら愚弟! 早く付いて来なさい!」
「はいぃぃ。 お姉様~。」
だが、相変わらず弟にはきつい様だ。
こうして魁人達は《妖精族》の長、《リリムリア=リムル》の下へ向かったのであった。




