第16話 種族の呼び名
「そう言えばルビアルカ。 この世界にドラゴン・・・じゃなかった。 《龍族》はいる?」
オーク達の住処が在る、《ヴァストゥ森林》に向かう道中、俺は気になっていた事を聞いてみた。ちなみにルビアルカには、俺が別の世界から来たという事は既に伝えてある。
「ああ、もちろん居るさ。 《ドラゴン》。」
ルビアルカは、さも当然のように《ドラゴン》と口にする。
「へ? 《ドラゴン》って呼び方で良いの? というか《ドラゴン》やっぱり居るんだ!」
《ドラゴン》が居ることに驚くよりも先に、意外なその呼び方に面食らった俺は、素っ頓狂な声を出して聞き返してしまった。
「うん? あぁ、そうか。 こっちの大陸では何々族って呼び方が主流だけどさ、他の大陸とかでは、別の呼び方の方が主流の大陸や国が多いんだよ。 まぁ、大陸や地域、種族によって、呼び方は変わって来たりするけどさ。」
ルビアルカは、俺が別の世界の人間だったとすぐに思い至り、説明をしていってくれる。
「例えば《人族》は《ヒューマン》って呼ぶって聞いただろ? エメから。」
「ルビアルカは、相変わらず私の呼び方、エメなのね・・・。」
「まぁ、《人族》は有名だから、《ヒューマン》って呼び名は知れ渡ってるってのはあるかもしれないけどさ。」
ルビアルカは、エメリィの些細な抗議に、全く気にした様子も無く話を進める。
「例えばあたしら《竜人族》は、《ドラゴヒューマン》だったり、あたしの場合だと《赤竜人》って呼ばれたりもするし、《エルフ族》は、《ハイエルフ》や《ハーフエルフ》って呼ばれたりもする。 まぁこの辺りは純潔か混血かとか、性別、外見とかで呼び方色々変わってくるんだけどさ。 他の種族だと・・・、《人魚族》だったら《セイレーン》とかね。」
「それにカイトだって普通にオークとかエルフって、族抜きで呼んでたりするだろ? それに何々族って言いにくいしさ~。」
ルビアルカは、最後に少し私情も挟みつつも、きちんと種族についての説明を終えてくれた。
「ははっ。 ありがとうルビアルカ。」
「これから色々な種族の呼び方を、覚えられるようにしていくよ。 けど結構博識だね~、ルビアルカは。」
「よよ、止せ! 恥ずかしいだろ!!」
俺がお礼と称賛の言葉を贈ると、面と向かって褒められるのは慣れていないのか、ルビアルカは声を上ずらせ、照れながら物申して来た。
「まぁ、あたしら《竜人族》・・・。 ん~、せっかくさっき教えたし、別の方の呼び名を使っていこうか。 《ドラゴヒューマン》達は、皆自由な奴らばかりでさ。 ねぐらに籠って何もせず寝てたり、色々旅をしたり、戦いに明け暮れたり・・・ね。 かく言うあたしも別の大陸に行って旅したりしてるしさ。」
「いいな~。 ねっ、カイト! 今回の件が解決出来たら、他の大陸に行ってみない? 話聞いてたら行きたくなっちゃったっ!」
エメリィが楽しそうに、旅に出るプランを提案してくる。
「良いね。 俺もこの世界を色々見てみたいと思ってたんだ。 ここを乗り切って、皆で!」
そう言い終えた時、気付けば俺の眼前には生い茂る木々が視界一杯に広がっていた。俺達が話をしながら向かっていた先、《ヴァストゥ森林》と荒野の境界に辿り着いたのだ。
「・・・。」
3人とも一度そこで立ち止まり、表情を引き締めて生い茂る木々を見ている。ここからはオーク達が急に襲い掛かってくる可能性もある。それを分かっているからこそ、油断を失くそうとしていた。
しかし、3人で気を引き締めていた中、俺は少々考えていた。先程の会話は、よくある死亡フラグなのではないかという事を。
「行くわよ! カイト!!」
そう言ってエメリィが足早に森の中へと進んでいく。
「あっ、おいエメ!」
「ま、待って! エメリィ!!」
勇ましく先に行こうとするエメリィ。しかしながら、エメリィを先に行かせるのは不安であり、心配でもある俺とルビアルカは、それを引き留めようとする。
しかしエメリィは・・・。
「早くー! カイトー! ルビアルカー!」
森林に入った少し先で、エメリィは呑気な笑顔を見せながら手を振り、俺達の名前を大きな声で呼んで来る。
『はぁ・・・。 仕方ない・・・。』
こうして、魁人達3人は《ヴァストゥ森林》へと入って行くのであった。




