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第14話 ルビアルカ

 「カイトやり過ぎ!」

 「エメリィが悲鳴を上げるから!」


 エルフの集落を出発した魁人とエメリィの2人は、《トワイライトの森》を抜けた先にある、2人の出会った荒野に出たばかりの所で、いきなり言い合いになっていた。

 

 そして、その傍らにはフード付きの黒いマントの様な物を被っている怪しそうな人物が、魁人によって殴り倒されていた。


 『・・・。』


 言い合いを止めた魁人とエメリィは、その倒れている怪しそうな人物を改めて2人で見直す。


 「俺も確かに早計だった・・・ごめん。 エメリィを守るためとはいえ・・・いきなり力を込めて殴っちゃった・・・。」


 「あ、いや、私もこんな怪しそうな格好をした人に、後ろから肩を叩かれたから、ビックリして悲鳴上げちゃったし・・・。 ごめんなさい・・・。」


 止むを得ない状況だったための行動だったとはいえ、少し大げさにやり過ぎだった事に互いに後悔し、謝り合っている。倒れている怪しい人物はそっちのけでだ。


 「ねぇカイト・・・。 し、死んじゃってない・・・よね? この人・・・。」


 ふとエメリィは、怪しそうな人物が倒れたまま静かな事が心配になった様で、俺に聞いてくる。


 「とりあえず俺が確認する。 こんな見た目の人だから、念のためエメリィは少し離れてて。」


 俺はエメリィへの安全の配慮からそう言って、怪しそうな人物に近づいて行く。


 「あの~、大丈夫です・・・」


 俺が近くに寄ってそう尋ねようとした時、


 「おいこら! 誰だ!? あたしをいきなりぶん殴ったやつは!!」


 先程から倒れていた怪しそうな人物が急に立ち上がり、怒りを露わにしながら聞いてきた。


 「うわっ! びっくりした。」


 急に生死不明の怪しそうな人物が立ち上がった事でさすがに驚いた俺は、思わず声を上げてしまう。


 「はい! こちらのカイトくんです!!」


 エメリィはいきなりそう言って、俺を即行で見捨てた。


 「ちょっ! エメリィさん!?」


 再度の驚きで、思わず俺はエメリィの居る方をチラッと向いて苦笑いする。


 「へぇ~。 あんたが・・・。」


 そんな俺を見ていた怪しそうな人物のフードの奥で、口角が上がり瞳が紅く光った様な気がした。


 「ふんっ!」

 ビュッ!


 すると怪しそうな人物が、いきなり掛け声を発すると共に、左の拳を放ってくる。


 ドズンッ。

 「うわっ! 痛ぅ・・っ。」


 俺は咄嗟に左腕で受け止める事は出来たが、思わぬ威力に少し痛みを覚えた気がした。


 「は、ははっ! こりゃ強いっ! あたしを殴り飛ばせる訳だ・・・。」


 何を思っているのか、怪しそうな人物は少々驚きつつ、感心する様に言って来た。


 「いや~悪かった! あたしを殴り飛ばせる奴にあったのは久しぶりでね。 興味が湧いたのさ。」


 そう言って、怪しそうな人物は身に付けていた黒いフード付きのマントを脱ぐ。


 燃える様な真紅の瞳に少々野性味溢れる長めの紅い髪、そして《人族》には無い無骨な紅い角にお尻の辺りから足元辺りまで伸びる紅い尻尾、それらが程よく鍛えられた良い女性の体とキリッとした美形の顔とが合わさり、美しいと言える女性の姿が現れる。そう、フードを脱いだ彼女は《竜人族》だった。


 「あたしは《ルビアルカ》。 赤竜の《竜人族》だ。」

 「で、あんたは?」


 そう自己紹介をしながら、ルビアルカが俺に握手を求めて来た。


 「俺は魁人。 《黒峰魁人(くろみねかいと)》。 《人族》・・・かな?」


 俺は元々この世界の住人ではない為、種族については少々自信無さ気に伝え、握手に応じた。


 「ははっ! 何だそれカイト。」


 すると、そんな俺の物言いが可笑しかった様で、ルビアルカが楽し気に笑みを浮かべた。


 「・・・。」

 「あ、あれ!? 私は!?」


 互いに気を許した様に自己紹介をする魁人とルビアルカを、ポカンッと見ていたエメリィは、自身が完全に蚊帳の外に置かれていることに気づき、声を上げるのであった。

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