第12話 魔力と魔法(3)
「ずっとこのままでいたいけど・・・。 時間も無いし、実際に魔法を使う練習をしましょうか。」
エメリィが俺の腕の中から名残惜しそうに抜け出し、魔法の練習を始めようと促してきた。
「分かった。 どうすれば魔法が使えるのかな?」
俺はすぐに相槌を打ち、表情を引き締めて魔法の使い方を聞いた。
「使い方は簡単よ。 さっき確認したから、今はもう自分で自身の魔力を感じられるでしょ?」
「うん。 それは出来る。」
「なら、必要なことはこれから教える2点だけよ。」
「自分の中で自身の魔力を使って生成したい魔法の形と、その魔法をどうしたいかをイメージするの。」
「なるほど。 具体的にはどんな風に?」
「例えば・・・、そうね。 さっき私が見せたウッドアロー。 あれは木属性の魔力、さっきカイトの言ってた緑色のやつね。 その魔力を使って木製の矢をイメージして形を生成、風属性の魔力で空中に留めておいてから撃つ、とイメージをしたものなの。 後は自分の中で使いたい魔法の分の魔力を切り離すだけ、そうすれば魔法が発動するわ。」
「ねっ! 意外と簡単でしょ?」
エメリィは俺に魔法の発動に必要な過程を、自身が使用した魔法を例に挙げて解説してくれる。
「ただ、注意しなくちゃいけない事も2点。」
「基本的に自分の中にある魔力なら、どの魔力を使っても魔法は発動出来るんだけど、使用する魔力の高さや、純度に応じて威力が変わってくるんだよ。」
「例えば使った魔力が小さければ、生成できる魔法が小さくなったり、飛距離が短くなったりね。 この適量を見極めるには慣れるしかないかな。」
「うん、分かった。 なら後もう1つは?」
「それは魔力を使い切った場合、その属性の魔力はしばらくの間無い状態、要するに使えない状態になってしまう事。 もちろん時間が経てば回復するけどね。 たぶんカイトなら魔力量が多いから、大丈夫だとは思うけど、使い過ぎには注意。」
「大体基本はこんなところかな。 後は、若干人によって変わってきたりするけどね。 何か他に聞きたい事はある?」
エメリィは、俺への基本的な魔法の使用方法の説明を終え、他に疑問点が無いか聞いてきた。
「あ、最後に1つだけ良いかな? ウッドアロー! みたいに呪文? の様な物は要らないの?」
俺はエメリィが魔法を使う際、呪文の様な物を唱えていたことを思い出し、必要が無いのか聞いてみた。
「うん。 あの呪文は魔法のイメージをし易い様に言っているだけで、唱える必要は無いから。 自分が魔法を使いやすい方法で良いよ。」
「分かった。 ありがとうエメリィ。 じゃあ、後は実際にやってみるか・・・。 危ないかもしれないから少し離れてて、エメリィ。」
俺はお礼を言い、魔法を使った際にエメリィに危険が及ば無い様に離れていてもらう。
「・・・。」
俺は目前の池に向かって掌を前に突き出し集中する。
キィィィィィィン。
それも束の間、魔力の収束する音がした後、魁人の掌からほんの少し離れた空間上に黒い小さな球体ができた。
「はぁっ!」
俺はそれをゆっくりと前方に飛ばした。
スゥーーーー。
「あはははははっ! カイト~、何その可愛い魔法!」
離れて魁人の様子を窺っていたエメリィは、大した事の無さそうなその魔法を見て、思わず笑ってしまう。
スゥーーーー。
黒い小さな球体は等速移動で池を超えていく。
「あはっ、あはははははっ!」
笑いのツボに入ったらしくエメリィは未だに笑い続けている。否、お腹を抱えて笑っている。
メキョッ。
「は、はれ?」
笑い過ぎて涙目になっていたエメリィが、異音を聞いてそちらに視線を向ける。
ギュバンッ!! ズズーンッ!
「えぇっ!? う、嘘ぉーーーーーーーー!?」
俺が放った魔法の思わぬ威力に、それを見ていたエメリィが驚愕した声を上げた。
何しろ、池を超えたところに生えている樹木に当たった小さな黒い球体が、音を鳴らし、一瞬でその中心部から元の何倍もの大きさの黒い球体になり、その範囲を抉り取って消えたのだ。
「あわわわわっ。 カイトってもしかして・・・。 勇者様じゃなくて魔王様・・・? だったりしないよね・・・。」
あまりに驚愕し過ぎたエメリィは、思わず冗談を言ってしまう。
「お、俺も思ったより強力でビックリした・・・。」
「ま、まぁ、とりあえず魔法も使えたし、明日出発しようか。 エメリィ。」
想定より強かった魔法。魁人はその結果に若干の動揺を見せつつも、明日調査に向かおうとエメリィに告げたのであった。




