第100話 新たな出会い
戦勝記念兼、結婚式典を終えたその日、エメリィ達14人と新婚初夜を過ごした魁人。
「さて、カイトよ・・・。 シェリアとお主との孫の顔を見れる日も近いのか・・・? ん?」
「ど、どうでしょうか。 はは・・・、はははは・・・。」
「まぁ、この話は後日じっくりと尋問するとしてじゃ。」
「じ、尋問・・・。」
戦勝記念兼、結婚式典が開かれた翌朝、ロアギルに今後について話があると呼ばれ、俺は1人、玉座の間に来ていたのだが、案の定、俺にとっては冷や汗の出てしまう様なシェリーの話から始まった。
「カイトには、《シルヴァリス》における公爵の位と、小さいが《ディレスティナ大陸》東にある、《シルヴァリス》の土地の一部を授ける。」
「えっ!? 公爵ってすごく偉いんじゃ? それに土地まで・・・、良いんですか?」
「良い。 お主は今回の《魔獣》、《魔物》、そして《アンデット》との争いにおいて、それだけの成果を出してくれたということじゃ。 それにシェリアの夫でもあるしの。」
「そしてこれが土地の権利書と、この国における爵位証明書じゃ。 受け取るが良い。」
「あ、ありがとうございます。」
ロアギルの言う通り、今回の成果が大きかったのだとは思うが、シェリー達、娘を溺愛しているロアギルだからこその褒賞分もあるのだろう。俺は未だ褒章の大きさに動揺しながらも、ロアギルから証書を受け取った。
「ワシからは以上じゃ、カイト。」
「それで、お主はこれからどうする?」
「そうですね・・・。 俺は皆を新婚旅行に連れて行ってあげたいと思ってます。 だから、今日はこれから皆で冒険者組合に行って報奨金を貰って、そのお金で指輪を買って、残りを旅費にしようと思ってます。 この大陸での目的であった、結婚式を挙げる事はお陰様で達成出来ましたし、家も、メルサリアとリルドミナが、眷属の女の子達も住み込みで良いなら、天空城を俺の物にって、くれたので。 」
「そうか。 では良い土産話が聞ける事を祈っておるぞ。」
ロアギルからの問い掛けに対し、これからの自身の中で考えていた予定を伝えると、ロアギルは旅に出る子供を見守る様な、そんな優しい顔をして小さく頷きながら、旅へ送り出す言葉を掛けてくれた。
こうして、ロアギルと今後の話を終え、玉座の間から自身に当てがわれている部屋へと戻った俺は、エメリィ達皆を伴って《アルシェント城》を発つと、《レルムンガルド》の商業区にある冒険者組合本部へ足を運んだ。皆へプレゼントする指輪を買う為の資金を得る為だ。
『に、2億4000万テオン~~~~!?』
そして報奨金を得ようと、手続きをしている途中、俺達は思わず叫んでいた。
《アポトリカ》で冒険者登録して以来、貢献度による報奨金を初めて貰おうとしたのだが、思ってもいなかった高額の金額が、冒険者の証であるブレスレットの記録を読み取る魔法具に表示され、驚いてしまったのだ。
「さすが私達の旦那様~。 結婚して早々そんなに稼げるなんて、まさに夫の鏡!」
「エ、エメ? 眼が1万テオン硬貨の様になってるぞ・・・。」
「はっ!?」
報奨金の額の大きさに、エメリィが目をキラキラと輝かせながら、褒めちぎってくる。そんな正気を失った様な状態のエメリィの威圧感に圧されながらも、ルビアルカが怖々とエメリィへ指摘を入れると、エメリィは正気に戻った様だった。
「パーティ、勇者と愉快な嫁達。 冒険者ランク5。 クロミネカイト様。 報奨金は現金での支給にしますか? それともキャリットへの支給にしますか?」
「あはっ! 何かもう私達のパーティ名、それになってるんだね~。」
「はは・・・。」
受付の女性が、報奨金の支給方法を尋ねて来た。しかしながら、初めて聞くキャリットという物よりも、ナユカにとっては、パーティ名がすでに周知の事実になっている事の方が、興味を惹かれた様だ。俺はもう、その事については諦めるしかないかと、苦笑いを零すしかなかった。
「こほんっ。 ところで、キャリットって何ですか?」
改めて気を取り直し、初めて聞いたキャリットという物について、受付の女性に尋ねた。
「キャリットはお金を1000億テオン。 物を10個まで収納可能な、魔法具のミニポーチです。 冒険者組合での報奨金の支給額が、1度に1憶テオンを超える方には、特別にお話しさせて頂いています。 キャリットを500万テオンで1つ作成し、そちらに報奨金を支給する事が出来ます。 また、所有者の方のみにしか使用できませんので、安全面でも効果的です。 お持ちで無い様でしたら、作成しましょうか?」
「それじゃあ、お願いします。 報奨金からキャリットの作成費を引いておいてもらって、残りをキャリットへ直接入れておいてもらっても大丈夫ですか?」
硬貨であれ、紙幣であれ、大金を常に持ち歩く事は、荷物がかさばったり、盗られる等のリスクがある。これからも色々な場所に行ったりするのであれば、かなり便利な代物だ。その為、現在の予算も問題無さそうである為、二つ返事でキャリットの作成をお願いする事にした。
「承りました。 3分程お待ち下さい。」
「分かりました。」
(ははっ。 3分って・・・。 何だかカップ麺みたいだな~・・・。)
想像よりも短かかったキャリットの作成時間を聞き、了承の返事を返すと共に、内心では今まで慌ただしくて忘れていたが、気付かない内に懐かしいと感じる様になっていた、カップ麺の事を思い出していた。
「カイト様。 キャリットの作成及び、キャリットへの2億3500万テオンの入金を完了しました。 ご確認下さい。 使用方法ですが、物を入れる際にはそのままキャリットの口に入れ、取り出す際には取り出したい物を頭に浮かべながら、指、又は手を口に入れて引く動作をして下さい。」
「はい。 えーっと・・・、キャリットもきちんと使えてる・・・、お金も確認。」
教えられた通りに使用方法を試し、不具合等の問題が無い事を確認する。
「大丈夫です。 問題ありません。 ありがとうございました。」
「ご利用ありがとうございました。 またお越しくださいませ。 カイト様。」
冒険者組合を出た俺達は、同じ商業区にある、アクセサリー専門店へ足を運んだ。流石に現代の様に、指輪専門店はこの国には未だ無かった。
「これなんて、エメリィにどうですか? カイト様。 凄くお似合いだと思いますよ。 ふふっ。」
「リリィ・・・。 これ、指輪じゃなくて・・・、首輪なんじゃ・・・。」
「あはは・・・。」
「ご主人様とエルフ娘の奴隷プレイ。 こういうの大好きですよね? エメリィ。」
『やっぱり確信犯!?』
リリィのその小さな体にとっては、指輪も首輪も随分大きく感じるだろう。もしかすると、違いが分かっていないのではないかと、そんな極々わずかな希望を持っていた俺とエメリィだったが、やはりその希望は脆くも打ち砕かれた。
「ご主人様。 今日はどういったご用向きですか?」
「ご主人様は止めろ!!」
俺達の会話を聞いていたのだろう、店員のおじさんも話を合わせて来る。
「結婚指輪を皆に贈りたいんですけど、ここではどんなの扱ってます?」
「普段もお付けになる予定で?」
「そうですね・・・、出来れば普段も身に付けていられる物が良いです。」
「ウチが扱っているデザインで、普段も付けられるタイプの物は、こういったストレート型、トーション型、クロス型です。 それをこの様に太め、細めで選んでもらいます。」
「なるほど。 リングの太さで皆に合いそうなのは・・・細めかな。 デザインは、皆に聞いて決めるか。」
店員のおじさんがサンプルのリングを見せながら、どういった指輪があるか丁寧に説明してくれる。
「皆。 この3種類のデザインで好きなのある?」
『これ!』
皆に問い掛けてみると、満場一致で皆が指差したのは、ストレート型のシンプルなデザインの指輪だった。
「皆そのデザインが良いの?」
『結婚指輪ならあれっ!!』
「ははっ。 分かった。」
エメリィ達が真剣な顔をしながらこちらへ詰め寄って来て、上目遣いでじっと見て来る。どうやら、この世界の女性にとって、結婚指輪には、並々ならぬこだわりがある様だ。
「なら、このストレート型の指輪を、細めで。 後は邪魔にならない程度の小さ目の・・・このサイズのダイヤモンドを1粒埋め込んでおいてもらって・・・、同じ物を18個、お願いします。 あっ、それと、イフリートとクロム、アルカメリルの3人分はネックレスにして、指輪をチェーンから取り外せる様にしておいてもらえますか?」
「承りました。」
「では皆様、サイズを測りましょう。」
他の店員も交え、3人づつ順に指輪のサイズを測っていく。
「今回のご注文の料金の見積もりは、400万テオン程になります。 それで・・・、料金の約1割、前金を40万テオン頂きたいのですが・・・。」
「はい。」
店員のおじさんがこちらの様子を窺いながら、今回の指輪注文に必要な料金を伝えて来る。この国に来てから、《魔獣》や《魔物》関係の事件には遭遇したが、未だ人による事件には遭遇していない。その為、犯罪等は起きにくい平和な国なのかと思って居たが、流石に現代の日本程の治安の良さが有る訳では無い様だ。王族のシェリーが居ても、店側としては、高額な支払いをきちんとする客かどうか、見定める必要があるのかもしれない。俺は支払う意思がある事を示す為に、躊躇なく前金を支払った。
「ありがとうございます。 お預かりします。 そしてこれが今回の注文の契約書になります。 明日には仕上げておきますので、お昼以降に、契約書と代金の残りを持って受け取りに来て下さい。」
「分かりました。 よろしくお願いします。」
前金を受け取った店員のおじさんは、にこやかな顔をして契約書を渡して来た。
「これは細やかながら、ウチの店からの贈り物です。 良ければ使って下さい。 それでは、またお越しの日を、心よりお待ちしております。」
「ありがとうございます。 大事に使います。」
『受け取るのそれ!?』
『使うの!?』
店員のおじさんから、先程エメリィとリリィと一緒に見ていた黒い革製の首輪を、贈り物だと言って両手で差し出された為、俺はお礼の言葉と共にそれを素直に受け取ると、エメリィ達から突っ込みを入れられてしまう。
こうして、結婚指輪の注文を終えた俺達は、アクセサリー専門店を後にした。
「これから・・・。」
ジャラジャラジャラ。
「ん?」
大通りを皆で歩きながら、俺は新婚旅行の行き先の相談を持ち掛けようとしたが、ふと、何所からか鉄の鎖の鳴る音が聞こえて来た。
ジャラジャラジャラジャラ!
『あっ!?』
「あ痛っ!?」
『カイト!?』
『わっ!?』
それどころか、鉄の鎖の鳴る音が段々と大きくなる。すると突然、わき道から飛び出て来た者達が居た。その者達は、魁人に衝突する寸前、目前に人が居た事に驚いて声を上げたが、結局魁人に衝突する事となり、魁人達も思わず驚きの声を上げる事となる。
そしてこの時、この者達と出会った事が、新たな物語への始まりとなる事を、魁人達は知る由も無かったのであった。




