93 宇宙の心はおっぱいだったんですね
「なぁなぁ、このおっちゃんは、そんなにおっぱいが大好きなん? でも、本で読んだことあるけど、おっぱいが大好きなんは赤ちゃんと違うん?」
ウルルは純真無垢な質問を俺に投げかけた。
確かに、女性のおっぱいからでる母乳は赤ちゃんを育てるために必要なものである。どうやらそういう知識は、地下帝国人であるウルルにもあるようだ。だが、ウルルは知らない。赤ちゃん以上におっぱいが大好きな人間が居ることを! それも様々なタイプのオッパイニストが存在していることを!
いや待てよ、男というものは大人になっても、赤ちゃんのときの記憶を強く残しているのかもしれない。それ故に在りし日を懐かしみ、おっぱいを求めてしまうのではないだろうか? さらに、そのおっぱいの揺れる動きにも謎が!! そして楕円の形にも!! さらには魅惑のピンクのさくらんぼにも!!
「どないしたん? ぼーっとして?」
ウルルが俺の目の前で、手を蝶々のようにひらひらと振っていた。
「いかん! 思わず妄想に浸りこんでしまっていた……」
俺の思考は完全におっぱいスパイラルに陥って、精神はイドの渦へと飲み込まれてしまいかけていた。ようだ。おっぱい恐るべしである。
そんな俺の思考を察知してか、オウ・サマは俺に満面の笑みを向けていた。
『わかる! わかるよ、大宇宙さん! おっぱいとはもはや宇宙の心そのものと呼んでもよいのだ! いや、宇宙そのものがおっぱいの中に存在していると言っても過言ではない!! 我々はおっぱいの中で暮らしているのだ!!』
俺の頭の中に言葉が!? オウ・サマの思考が俺の頭の中に流れ込んでくる。どうやらオッパイニスト同士は、エスパー並みに精神感応できるようだ。勿論、おっぱいについてのみ限定なわけだけだが……
『確かにおっぱいは素晴らしい。それは俺求める。いや、世界の男子の大半が認めることだろう。しかし、それはおいておいてだな。話を戻そう、俺達がやってきた理由を聞いたところまで戻そう! そうしないと、おっぱいのことだけで話が進まなくなってしまう!! いかんいかん、おっぱい以外のことだと思考が届かなくなる。と、とりあえず、おっぱいおっぱいおっぱいおっぱい!!』
俺は心の中でおっぱいをいっぱい連呼することで、おっぱいテレパシーを強引に送信させた。ってか、おっぱいテレパシーってなんだよ!?
「わかりましたっぱい!」
オウ・サマはどうやらおっぽいテレパシーの副作用で、実際の会話の語尾におっぱいがついているようだった。
「こほん、それで御用は何なのでしょう?」
「今となっては、頼むのに不安がおっぱい……いや、いっぱいなんだが、このウルルをオウ・サマ・キングダムに住まわせてくれないだろうか?」
俺の言葉に合わせるように、ウルルはペコリと頭を下げた。前かがみになったせいで、セーターに出来た隙間から、魅惑の谷間が見えたのを俺は見逃さなかった。
「うーむ、それは難しい問題ですねぇ……」
オウ・サマは顎に手を当てて考え込んでしまった。
これには俺も当惑した。これだけおっぱい大好き人間であるオウ・サマならば二つ返事でオッケーしてくれると思いこんでいたからだ。まぁ、おっぱいの力で住まわせてもらうというのもどうかと思うわけだが、オウ・サマは無害なオッパイニストである。オウ・サマはおっぱいを遠くから愛でられて幸せ、ウルルは地上世界で住むところが見つけられて幸せ。ウルルが幸せに暮らすことができれば、地下帝国の地上世界侵略計画もなくなり全世界の人が幸せになれるだ。『風が吹いたら桶屋が儲かる』どころか『おっぱい揺れたら世界が助かる』なのである。
「わたしは以前、王国を肥大化せ悲劇を招いたことがあります。それ故に、たった一人とは言え、王国に住まう人間を増やすことには些か抵抗があるのですよ」
オウ・サマに苦悩の表札が浮かび上がった。そして視線が俺に何かを訴えかけていた。
そう言えば、昔俺はオウ・サマと一緒に飲んだことがあった。どうやらその日のオウ・サマは酒量が過ぎてしまったらしく、いつもより饒舌になっていた。そして、こんな事を語りだしたのだ。
『知ってますか? 私の持っている能力『オウ・サマ・キングダム』それは私の領土内では、どのような物理現象も意味をなさなくさせることができるんですよ。絶対防御の力……それこそが私の持つ力。私はその力を使って自国の領土を広げていきました。一度自国の領土とかしてしまえば、能力のおかげで奪還されることは百パーセント無いわけなのですから、領土は増える一方です。こうして、わたしは宇宙の星々を手中に収めていきました。しかし、この能力には、自国の領土の中に住まうものには、適応されないという欠点があったのです。わたしは、他国のに侵略に怯えることはありませんでしたが、身内の内乱に怯える日々を送ることになったのです』
オウ・サマはコップの中の日本酒を一気にあおった。
『それ故に、わたしは自国に住まわせる民衆に異常とも思えるほどの忠誠心を要求しました。そして、少しでも反逆の意図が見られれば即時国外追放としたのです。それでも、それでも日々猜疑心に心は悩まされ、安らぎを得ることはなかったのです。そこでわたしは学びました。私が欲しいものは、そんな権力でも国土でもなく、この両手でつかめる範囲にある家族だけでよいのだと……』
オウ・サマは一升瓶を三本ほど抱きかかえて言った。
『わたしは全ての国土を開放し、この身一つでこの《宇宙》のこの《星》へと流れ着いたのです。あぁ、重い荷物を捨てたことによる開放感……それはまるでおっぱいのようですぅぅぅぅ! おっぱいおっぱいおっぱぱぱぱぱぱぱぱぱぁぁぁぁい!!』
そう叫びながらオウ・サマはおっぱいを揉みしだく手の動きをさせながら眠りについたのだった。
以上回想終わり。
過去の出来事のせいで、オウ・サマは他人を受け入れるということに未だ強い警戒心を持っているのだ。とはいえ、この俺もオウ・サマの酒での席の話を全部信じているわけではない。いやいや、確かに見た目は立派な王様って感じではあるが、宇宙の星々を支配下においていたとかいうのは、眉唾ものである。
だが、この『絶対防御の力』これは真実なのだ。
皆さん俺が大蛇からママを守るために、二つの作戦を用意したことを覚えているだろうか? 俺はそのうちの一つである、藤宮花火をけしかけるという方法をとったわけなのだが、もう一つの作戦こそが、この『オウ・サマ・キングダム』の領地内へと逃げ込むことだったのだ。
この『オウ・サマ・キングダム』に対して、どのような攻撃も意味を成すことはない。そう、それがもし核ミサイルだとしても、爆発の威力はもとより、放射能ですら意味を成さずに無効化される。その話も最初は半信半疑だったわけなのだが、ある日、何時ものように花火を怒らせてしまった俺は、偶然にもこの『オウ・サマ・キングダム』領内へと逃げ込んだ。その領内へと一歩踏み込んだ時点で、花火の惑星破壊レベルの正拳突きが発動された。あぁこれは分子のレベルまで分解されて死ぬわ……と思った刹那、花火の拳の力は何事もなかったかのように霧散しかき消されたのだった。それを目の当たりにした俺は、この『絶対防御の力』を信じざるを得なかった。
そして、その力を知っているからこそ、ウルルをここに住まわせようとしたのだ。ここに住んでしまえば、ウルルは何ものからも危害を加えられることはない。まぁ、一番怖いのがオウ・サマのエロ親父化なわけなのだが……
「頼む! ウルルをここに住まわせてやれないと、世界が危ないんだ!」
俺の言葉に嘘はなかった。
「うーん。大宇宙さんにはいろいろ借りがありますからねぇ……。わかりました! ならば、テストをしましょう!」
「テスト!?」
「この『オウ・サマ・キングダム』に住むのにふさわしいかをテストするのです。それに見事合格したならば、ウルルちゃんが住むことを許可いたします」
オウ・サマが杖を振りかざすと、三つの大きなプラカードが空から降ってきた。プラカードにはそれぞれ『知力』『体力』『時の運』と書かれていた。
「知力! 体力! 時の運! その三つの試練を乗り越えて、オウ・サマ・キングダムに行きたいかァァァっぁ!! 罰ゲームは怖くないかァァァっぁぁっ!!」
オウ・サマは異様にノリノリだった。この流れ、昔何処かのTV番組で見たことがある。確か、アメリカ横断ウルト○クイズとかいう……
「うち、がんばるよー!」
ウルルもノリノリだった。




