山と準備と二人
「んん~っ!ふぅ……」
澄み渡った青い空、日中に比べ随分と涼しい空気を肺に一杯吸い込みながら伸びをするナナシ。
開けた窓からちらりと覗くと朝露が木々の葉を濡らし、野鳥達が朝の訪れを祝っているように鳴いている。
すーっ、ともう一度深呼吸をして空気の清清しさを味わう。
「おーい、ナナシ。朝飯じゃよ。」
ナナシの背後の寝室ドアから機を狙ったかのようにゴンベエの顔がニョキっと出てきてナナシを朝食に誘った。
「どうせ、昨日と一緒でしょぉ……アタイは肉が食いたいんだけどなぁ……」
贅沢言うんじゃない、と先に台所に行ったゴンベエが声だけでナナシを嗜めた。
もっとも、肉が食いたいという気持ちはゴンベエも同じで自分に言い聞かしている部分もかなりある。
分かっていても愚痴るのはやめられないようだ。
(まぁ気温が熱いときに一人でも“熱い”ってついつい言っちゃうモノだろう……。)
二人の自分と暮らし始めて二日目。
折り合いをつけたり、色々と気付いたりなど、まだまだ慣れは遠い様だ。
ダイイニングで昨日と同じく野草と沢蟹スープで腹を満たした。
「昨日も言ったけど、やはりこのままじゃイカンじゃろうな。」
「食べ物の飽き、というか普通に生きていけないよね。アタイらここで。」
食べ終わり、適度に寛ぎながらも今日の予定を簡単にまとめる事になった。
とは言っても大体は頭の中で決まっている、まずは……第一目標を決める。
二人とも何事もまずは主軸となる事を決めてから行動を成すべきだと考えた。
「うん、第一目標はアタイらが出来るだけ楽して無難に暮らせることだね!」
「客観的に見ると、うん、選択は間違い無かったのかもしれんのう。見事に性根が腐っておるの。」
目標は出来るだけ高い方がいいんだよぉ!と頬を膨らませながら抗議するナナシを無視して第一目標をとりあえずそれで決めた。
次に必要なのはその目標に向けて当面どうして行くかだ。
「まずは人里を見つけるんだろ?まぁ、無難だよね。次はファンタジーぽい世界だし冒険者ギルドとかに所属するとかかな。んでモンスター的なモノをハントして賃金を稼いで生活していくと。」
「ま、まぁ、その通りじゃな……ただ、その最初が難しそうじゃな……」
髭をさすりながらゴンベエは難しそうに唸る。
この廃村は盆地になっており、周りが山に囲まれている。
その為、辺りを見渡してもこの盆地内しか様子が分からず、この村で一番高いこの教会から周辺を見渡しても盆地内では人工物らしき物はここ以外には無かった。
「じゃあ、やっぱり登山しかないのかぁ……正直気が進まないんだけどねぇ……」
教会より高い場所から周囲を見渡せる場所となると山となる。従って、登山しなければならない事になる。
もともとアクティブな性格じゃなかったのか、二人とも登山には難色を現している。
しかし、ただ単に運動が嫌いだからという理由だけでもない。
「……魔物、いるかもしれんからのぅ……十分に準備してから行くしかないのう……」
魔力が存在する世界だ。
魔物がいてもおかしくは無いはずだと推測する。
未だに二人は野生動物以外に魔物らしいものと出合ってはいない。
魔物がどれくらいの強さなのかは未知数。
そもそも自分達がどれくらい戦闘できるかも不明なので確かめてみる必要がありそうだ。
「まぁ、とにかく廃屋にリュックとかあったし、登山の準備しながら武器とか防具とかも集めようか。」
「そう、じゃな、手当たり次第この教会に持ってきて、色々と実験するかの。」
前々から必要だと思っていた、自身のスキルの実験も含めて戦闘準備をする事とした。
早朝から動き始めて一、二時間であらかた登山と戦闘に必要なものは集まった。
教会のリビングには山となった道具の数々。
バッグやリュック、盾や胸当て、弓や剣など様々だ。
その量は背の低いナナシの胸ぐらいまでの高さとなっている。
本当に手当たり次第持ってきたのだ。
常人であれば何往復もする必要がある量なのにも関わらず二人は数回で運んでいた。
早く運べたのには種があった。
二人は荷物を運ぶ為に力と体力が必要だと判断し、『やり直し』スキルで能力値を一旦分解・収束、そしてSTRとVITに振れるだけ振ったのだ。
その結果、ともに値が10だったのが倍の20まで増え、すいすいと物を運べるようになった。
どうやらこの程度の入れ替えならば何回か出来るみたいで、調整を加えつつ作業を行った。
あまりにAGIが低いと持てても遅かったり、LUKが低すぎると躓いてしまったりなど色々と試行錯誤が必要みたいだ。
「登山用の荷物は良いとしても、防具はやはり大人サイズしかないのう……」
山盛りの道具の山から革製の胸当てを取り出して呟くゴンベエ。
「でもまぁ、アタイらは体格とか自由に変えられるっぽいし、それも含めて戦略とか準備をこなしていこうか。」
もしもの時を想定して、対抗する為の戦闘スタイルを見つけていく。
その為には自身の能力を把握するべきだと二人は考えた。
今、二人が使えるスキルは主に四つ。
『やり直し』、『ステータス化』、『感覚共有』、『理性強化』となる。
これらを順に検討していく事にした。
―――――――――――――――――――――――
―――数時間後
薄暗い教会の祭壇に人影が二つ。
片方は四十代後半に見える長身の男だ。
祭壇に腰をもたれかけながら肩に届くぐらいのウェーブがかかったブロンドを気だるげにかきあげる。
老いの中にも確りとした芯のある表情は恐ろしいほど整った風貌で誰もが息を潜むほどの妖艶さを秘めている。
適度に細い顎に手を当て、少しだけ生えている髭を撫でながらもう一人の人影に向かって話しかける。
「くくっ……無駄な事をする……いずれ訪れる終焉の時を大人しく感受すればいいものを……まったくもって勇者というモノは理解に苦しむ……。」
重低音の様な声が教会に響く。
演技がかった手振りで、こめかみを手を覆いながらもう片方の人物を金色の目で覗き込む。
もう片方の人物は十代後半に見える小柄の女だ。
苦しむように片膝をついて、腰まで届くであろう絹のようなストレートの金髪は今はしなだれ、顔に張り付いている。
だが金髪の隙間から覗く碧眼と金色のオッドアイは怒気迫る形相で男に向けて睨みつける。
優しさと勇敢さを秘めた女の風貌はおとぎ話の主人公のような魅力に溢れている。
「貴方は悲しい人なのですね……。きっとその悲しみから逃れられず、終焉を望んでしまった……いいでしょう。あなたが終焉を望むのであれば私が貴方の野望を打ち砕き、優しく絶望を希望で塗りつぶして差し上げましょう…!」
苦しみなど感じられぬ、聖女のように清く、清流の様に清々しい声が決意を語る。
少女は力強く立ち上がり豊満な胸を微かに揺らしながら、男と対当した。
「ならば私はお前を絶望という衣でお前を包み込み深淵まで堕落させてみせよう…さぁ、」
「祈りが届かぬならば届かせるまで…さぁ、」
お互いに決戦に挑むように構えを取る。
空気が凍りつき、世界そのものが緊張しているかに思える。
「「行くぞッ!―――」」
「輝きの聖女、勇者ナナシよッ!」
「深淵色の堕落王、魔王ゴンベエよッ!」
……輝きの聖女ナナシが適当な動作で右手を前に出して、はーぁっと言いながら何かだしたフリをした。
「勇者ビーム!」
「ぐわー」
適当な断末魔らしきものをゴンベエが言うと、体が翡翠色の光を発光し始め、沸騰したお湯の様にボコボコと泡立ち、最後には発光しながら爆発した。
ゴンベエがいた場所には翡翠色の液体が撒き散らせており、ゴンベエは姿形が無くなった。
「……。」
顔を伏せ、ナナシは無言だった。
くくっ……と漏れ出た様な笑い声と共に顔をがばっと上げた。
「いやぁー!今回は結構良かったんじゃない!勇者と魔王ごっこ!」
金髪オッドアイの少女は幼く感じるような動作できゃきゃと笑い声を上げながら喜んだ。
「まぁ、そうじゃのう!中々の演技じゃったしな!」
でもワシが敵役になる事多くない? と呟く声が何処からか聞こえてくる。
その発生源は翡翠色の液体の方から聞こえてきた様だ。
すると先程まで翡翠色の液体だったものが、急に蠢き、一点に集中するかのように空中に集まりだす。
翡翠色の液体は固まりに大きな球体になり、破裂する前の状態に戻るかのように逆再生していく。
すると再び人型を形取り、老体が現れた。
そう、数時間前のゴンベエの姿だ。
「にしても中々にアタイ達もスキルの使い方が上手くなってきたわねぇー。」
豊満な胸を手のひらで軽く持ち上げながらナナシは呟いた。
そのあどけない表情を見たゴンベエは急に笑みが消えた。
あれ? と、呟きながら自身の体を見始める。
いやぁーやっぱデカい方がいいよなぁー、とか言っているナナシを無言で見つめる。
そして腕を組み何かを思い出すかのようなそぶりし、ハッと何かに気付くような表情になる。
「……なぁ、ナナシよ。」
汗をだくだくと出しながら尋ねるゴンベエ。
「なによ、ゴンベエ。」
「今、元の姿になってふと思ったのじゃが……。」
「ワシら、もしかして結構痛い事しているんじゃないかの……。」
冷や汗をかきながら、深刻な顔をして問いかけた。
取り返せない過ちをしていまい、助けを請うような顔は何時になく深刻だ。
その顔を見て、ナナシもようやく我に帰った。
「いや、でも…スキルを慣れる為には必要な……。」
「慣れは必要じゃが、ステータス化で補助し始めたら直ぐに慣れたじゃろ?数分で…。」
金髪長髪オッドアイの巨乳少女が言い訳をする様に呟いた言葉は直ぐにジジイに否定される。
「い、いや、慣れてもいつ、どんな時に何が必要に成るか分からないだろう?手の数は多い方が良いと……」
「金髪長髪オッドアイの巨乳少女はいつ、使うんじゃろうな……。」
「うっ!い、いや、使う可能性はゼロじゃ……。」
ゴンベエはしげしげとナナシの現在の格好を見る。
優しく、慈愛満ちた表情でナナシに語りかける。
「なぁ、ナナシよ……もしや、その姿はお主の心が描いた理想のじぶ、」
「ゆ、勇者ビーームッッ!」
「ごぼぅっ!!!」
打撃音と共に今度は液体状にならずに腹を抱えながら床に沈んだゴンベエであった。
―――――――――――――――――――――――
実験をすること数時間、スキルの大まかな所が分かってきた。
解明にあたって、何より大きな立役者は『ステータス化』だろう。
「まさか、あんなに便利なスキルだとは思わなかったねぇ……」
いつの間にか元の姿に戻っていたナナシが祭壇の上に座りながらしみじみと感想を言う。
「ぐぐぶぅ……た、確かにのぅ……」
くぐもった声で呟くゴンベエ。
一方ナナシはそのゴンベエを見て、目の前に四角い枠と数値が現れる。
HP:28/50
この四角い枠は、一番最初に自分たちのステータスを確認したときに出た不可解な枠と一緒だ。
「便利だよねぇー、こう思った内容が直ぐに数値として、分かりやすく表示されるのは。」
ナナシは目の前の数値見ながら感慨に耽る。
「……説明も同時にしてくれるから助かるんじゃなぁ……。」
ナナシ更に『HP』と書かれている所に意識を向けると、下に四角い枠が追加される。
HP:28/50
・HP:生命力や体力などを総合的に現した数値。無くなると死亡する。
意識した単語に対する端的な文章が載っている。
「多分、自分たちが調べる手間を省いて結果だけを載せてくれるんだよね。」
「時間が短縮できて助かるのう。じゃがその分、自分たちが分かる内容でしか説明してくれんから要注意じゃな。」
分からない内容はいくらステータス化を使っても分からないと言う結果だった。
何故ならゴンベエが言ったとおり、このスキルは『調査の時間を極力省略して数値、または文にするスキル』だからだ。
意外なことにステータス化とは数字だけかと思ったが万物数値化で処理できない部分は文として表示される。
だが、それは信憑性にかけるものだった。
恐らくだが数値化出来ないもの以外はステータス化の内訳のもう一つ、他能力補佐が働いて、通常の調査―――スキルでもなんでもない目で見たり触ったりなどの行動―――を補佐する形で文にしているのだろう。
それでも二人にとってはありがたいスキルで、調査時間をほぼゼロにする事ができるのだ。
だが『ほぼゼロ』であって色々と制約があるみたいだ。
例えば、対象は何でも出来て、自分であろうと物であろうと何でもステータスを見れるようになる。
範囲はイマイチ分からないけど二、三メートルぐらい離れていても大丈夫だ。
だが実際にその対象に触ると手が淡い緑色に発光してステータス化しやすくなるみたいだ。
試しに祭壇から数メートル離れている長椅子をステータス化してみたが数十秒ぐらい掛かり、意外と時間が掛かった。
また廃屋のいたる所にある長細い謎のアーティファクトに対してステータス化してみたが、「オブジェ」としか名前が出てこなかった。
つまり、表示されている数値は自分にとって分かりやすい数値を表示されているだけであって、それが対象の情報全てを引き出す訳じゃないようだ。
具体的な例としては以前、ステータス化されたナナシのステータスを意図的に別の表記で表示するとこうなる。
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名前:ナナシ
性別:女
種族:人間
ジョブ:
力 :8
素早さ :12
体力 :8
賢さ :12
魅力 :8
運の良さ :12
特技:やり直し・ステータス化・感覚共有・理性強化
―――――――――――――――――――――――
大まかな所では合っているが微妙に変わってくる。
しかも、魅力とか前回は無かった数値などもあったりする。
また、容姿によって多少の変動が起きているのかもしれない。
考えてみれば幼女の筋力とジジイの筋力が同じな訳が無かった。
STRという数値が同じであっても、色々な要素が絡み合ってその数値で表示されている様だ。
今回の場合で言えば、ナナシは無意識に魔力で筋力を補っているのだろう。
じゃあ具体的に10と言う数値がどれくらいなのか?
今回は物を運ぶためにSTRを20まで上げたが10と比べてどれくらい違うのか。
山積みにされていた物を持っておおよその差が明らかになった。
STR10の時は四十キロぐらいは持てた。対してSTR20の時は百キロぐらい持てた。
ただ単に倍という訳ではなさそうだ。とりあえずステータス化について分かった事といえばこれくらいだろう。
実験で数十回使っていたが魔力が減っている感覚はあるものも微々たるもので、何十回でも使えそうだ。
このステータス化を使って他のスキルを出来るだけ分かりやすく解明していった。
端的にまとめるとこうなった。
・やり直し 〔自己分解〕触れている自身を分解し、元素魔力に変換する。
〔自己収束〕自身の元素魔力を収束させ自由度の高い状態にする。
〔自己構成〕自身を望む形へ構成する。
・感覚共有 あらゆる情報を共有状態であるものと共有できる。
・理性強化 理性を強化し、平常状態に戻ろうとする。
……簡単すぎる内容だがこれで十分。
実際に詳しい事を調べたかったら、「ここをもっと知りたい」とキーワードを念じれば追加の説明文が出てくる。
スキル実験の最初の頃、ある程度の内容を吟味した後だ。
実験としてゴンベエはちょっと自分の顔をスキルで美形にしてやろうと思いった。
すると何の不都合も無くやり直しのスキルを発動出来たが突如顔面が翡翠色に発光し始めた。
発光は収まることを知らず、一瞬で顔面が光ながらブクブク沸騰したように膨らみ、そのまま顔面が光を撒き散らせながら破裂した。
え? え? と言いながら何気なく見ていたナナシはあまりの急な出来事に目を丸め、呆然としながら呟いた。
見つめた先には首なしのゴンベエの姿がある。
撒き散らした翡翠色の肉片らしき液体はほんの数秒間だけ地面に飛び散り、ずずずっと動き始め元の顔の位置に戻ろうとした。
それは時計の針を逆に回しているようかのような光景だ。
翡翠色の肉片はしだいに頭部を形作り、しばらくすると何かちょっと美形になったゴンベエを作り出した。
え、どしたの? といった顔を向けるゴンベエに対して無言でナナシはゴンベエの頬を引張だいた。
最初はあまりのグロいエフェクトにドン引いたが数回で慣れた。
その後、何回も容姿の変更を行ったが、どうやら変更には一度自分を分解する必要があるようだ。
ステータスのSTRやVITなどの数値の変更だと爆発する必要は無いようだ。
だが、もしかすると見えないところ、内臓とかでは同じく緑色に爆発しているのかもしれないが……。
その後、何回もの練習経て、何か自分自身の容姿が変わりすぎて妙なテンションになってしまった。
仮面をつけるとテンションがあがってしまう様なものだと思う。
その結果がアレだった……。
そして、今に至る。
ぼんっという音と共にゴンベエの前に人が立ちはだかる。
「で、どうよ。アタイのスペシャルナイスバディはよ。」
ゴンベエの目の前には身長175㎝の凹凸の激しく付いたぼんきゅっぼんの黒髪長髪の姉ちゃんがおもむろに魅惑のポーズを取っていた。
無論、この黒髪長髪姉ちゃんはナナシである。
芸能人も顔負けの整った美形で色めかしく笑み、ゴンベエを上目使いで覗き込む。
おもむろにTシャツから弾けそうな胸を腕で上げて強調させる。
「うーん、やっぱオカン見ている時ってこんな気持ちなのかなって気分。」
だが当のゴンベエはふぅーん、って言いそうな関心無さそうな目でナナシを見ている。
「不能なんじゃねーの?」
「オイ馬鹿やめろ。やはり性別がどっちつかずのせいで性的興奮はあまり無さそうじゃな。」
「そもそも自分に欲情しないだけか、ジジイだから枯れているのかって可能性もあるな。」
髪をいじりながら、どことなく不満げに言うナナシ。
ここまでの実験の結果色々と分かった。
容姿を任意の容姿に変える事は簡単みたいだ。
なので性別も容易に変えられる。
更に頑張れば人間の骨格の範囲内であれば指を渡したり、腕を付けたりも出来るみたいだ。
基本的には二人分の肉体しか無い。なのでその中で足し引きはできるみたいだ。
「あー、そういえば理性強化とかも影響しているのかものぅ……」
二人の実験で唯一解明しきれてないのが理性強化だ。
どうもこのスキルは自動効果スキルのようだ。
「使う」という意思で使う任意効果スキル、やり直しとかステータス化とは種類が違う様だ。
なのでイマイチ理解が乏しい。
「まぁ、なにはともあれ準備はこれでOKでしょ!」
スキル以外の準備も整っていた。
リュックや食料、水筒、防具、武器など一箇所にまとめいつでも出発が出来そうだ。
日は頭上に上がったばかり、正午過ぎぐらいだろう。
意気揚々と腕を掲げながら幼女のナナシが腕をまくる。
結局二人は元の普通の幼女とジジイに戻った。
「……よし、じゃあ行くかの……。」
不安を感じながらも前に進まなければ生きてはいけない。
「でもな、ナナシよ。出発する前に一つ言っておかねばならない……」
「ん?何?」
「……お主、通常より胸を若干大きくしてるじゃろ?」
「な、な……そ、そんな……」
「もしやお主の性格の方が男寄りなのかもしれんな、それもかなりのおっぱい星じ」
「ナナシエクスプロージョン!」
「ぼぶらぷっっちゅっっ!」
ビンタと共に破裂するゴンベエの頭部。強制的に自分を分解するのはお手の物だ。
新しい自分に戸惑いつつも二人は次に進む。