full★男2女2~男3女2★名無し君の不始末・番外特別編★瑠璃×夢★その3★約40分
名無し姫の不始末・特別番外編
瑠璃×夢★その3
■CAST(男2女2)
★黒凪 夢
・女。ヒロイン。黒髪長髪。黒目。心優しいお姉さん。二十一~二十六歳。素直で真面目。優等生。瑠璃のことが好き?
地球の地底メイド喫茶で働いていた。今は出世して、営業をしていることが多い。着やせするタイプ。特技は着付けと歌。色白で胸がでかいのがコンプレックス。
★カズマ・瑠璃
・男。二十一~二十六歳。紺色の短髪。面倒臭がりだが、基本的には真面目。
ぼーっとしていることが多いが、考え事をしているだけ。夢のことが好き。夢には素が出る。家族になりたいと思っている。
あまり笑わない。素っ気ない。ぶっきらぼう。愛想が無い。ポーカーフェイス。
現在は月面に出来た新都市で、インドランス(アンドロイドのようなもの)の研究をしている。
一年前までは、地球で、夢や神酒と一緒に喫茶店で働いていた。
★ディズィ・ブルア
・男。瑠璃の同僚。瑠璃の大学時代の同級生。親友。関西弁。軽い。優しくて普通にいい人。
金髪眼鏡。細身で長身。声は男性にしてはかなり高め! 軽い。
★神酒 ゆゆ音
・女。夢の後輩で同僚、相棒。黒縁眼鏡。原色オレンジボブカール。やんちゃ娘。
夢や瑠璃と同じ、地球の地底メイド喫茶で働いていた。
瑠璃のことが好きだったが。夢に譲り。今は誰にも恋せず仕事一筋。お洒落で可愛い女の子。
★ジョーカー (※ディズィ役か瑠璃役と兼ね役可能)
本名、ジョルド・ルーティ。黒い狐の面を着けている、黒装束の青年。謎に満ちている。二十五~三十代前半。低音ボイス。
■役表(男2女2)
夢 ♀:
瑠璃 ♂:
ディズィ ♂:
神酒 ♀:
ジョーカー(※ディズィ役か瑠璃役が兼ね役可能) ♂:
【前編開幕】
月のエアポート。瑠璃と、その親友のディズィが、夢と神酒を待っている。
ディズィ「カズマ。もうそろそろちゃう? もう着くんちゃう!?」
瑠璃「あー」
ディズィ「ワクテカ!?」
瑠璃「わく、てか?」
ディズィ「あれっ?」
瑠璃「なん? お前、相変わらず言葉のチョイス、古いで」
ディズィ「せやろか? うーん」
瑠璃「ふぁぁ……」
ディズィ「ちょ! もう来るんやで! しゃきっとせい!」
瑠璃「なんでや……あっ」
移動用の簡易カートに乗ってくる、神酒と夢。
神酒「瑠璃さーんっ!」
夢「瑠璃ーっ!」
瑠璃「来おった」
ディズィ「どっどっちが彼女!?」
瑠璃「いやあの、彼女ちゃうねんて何回言わすん」
ディズィ「せやからっ! なんで両想いなんに!」
瑠璃「や。う~ん」
ディズィ「あ!?」
瑠璃「勘、やけどな……? あいつ……」
神酒「瑠璃さぁんっ!」
夢「瑠璃……」
瑠璃「ん。おはよ」
神酒「お久しぶりですう! わ~っ! 瑠璃さんだ! 瑠璃さんだぁ!」
ディズィ(ちょちょちょ、カズマ!)
瑠璃「あ?」
ディズィ(どっちも可愛いやん!)
瑠璃「お前飢え過ぎやアホ」(ディズィの腹を軽く殴る)
ディズィ「ぐっ」
瑠璃(咳払いして)「夢、ミキ……。コレ、通話で説明しといたヤツ。俺の同僚。ディズィ」
神酒「あっはじめましてっ! 神酒 ゆゆ音ですっ!」
瑠璃「コレは前職の後輩」
神酒「コレ~!?」
瑠璃「これな」
夢「はじめまして。黒凪 夢と申します」
ディズィ「!!!?」(おいいいいいいい!? カズカズ!)
瑠璃「なんや」(うるさいわ)
ディズィ「こんなべっぴんやなんて聞いとらんで!」
瑠璃「はぁ?」
ディズィ「知っとるやろ! 僕、和装黒髪美人が……ドストライク!!」
瑠璃「いや知らんわ」
ディズィ「教授は超ブスだって……! おかめんこみたいな顔やって言うとったやろ!」
瑠璃「またからかわれたんちゃう」
ディズィ「おおっお嬢さんっ!」
瑠璃「俺らタメやで」 夢「はい?」
ディズィ、夢の手を取って。
ディズィ「僕、カズマ・瑠璃くんと同じ職場で働いています。ディズィ・ブルアと申します。以後お見知りおきを」(かっこよく)
夢「あ、は、い」
瑠璃「~」
ディズィ「手小さっ! ふわふわ! 可愛っ……!!」
夢「?」
瑠璃「……っ」
神酒「月でもモテるの!? ゆめ、恐ろしい子っ!」
ディズィ「♪」
神酒「あたしだって顔は可愛いのに~!」
ディズィ「そっちの君はちょっと派手過ぎるわあ。それに背ぇちっさすぎ! 十代?」
神酒「むかっ。二十二ですぅ!」
ディズィ「えっ? 小学生やないん!?」
神酒「いらっ! っ……! わぁーん! 夢さぁぁん」
夢「あ、あの。あまり苛めないであげて下さい……」
ディズィ「オーウ。すみません、夢さん。君にそんな顔はさせたくなかった……」(夢の頬に触れて)
瑠璃「なんなん。ざけんなや。触んな」
ディズィ「敬語キャラなんですね!」
夢「あっ……癖で」
神酒「あたしも敬語使ってますよ!」
ディズィ「うんうん。……夢さんむっちゃ可愛い」
瑠璃「まぁそれは認め……っ、(咳払い)」
夢「……あ、ありがとうございます」
ディズィ「僕、耳フェチで!」
夢「はいっ?」
ディズィ「夢さんピアスの穴開いてないですね! いいっ!」
夢「あっ……っと」
瑠璃「おい。ディズィ」
ディズィ「!! 左耳の中に賢者黒子!!」
夢「あ……。は、はい」
ディズィ「エロいね! 舐めたいっ」
夢「へっ?」
瑠璃「お前しばくぞ。轢かれろ」
神酒「夢さんをそーゆー目で見ないでくださあい! 何ですか!? この人! 初対面ですよね!?」
夢「はは……っ」
神酒「はーあ。まったくもう。夢さんっ。もうホテル行きましょうっ! 荷物置きたいしっ! 観光しなきゃだし!」
夢「そうですね」
瑠璃「うちに泊まってもええねんで。夢」
夢「ん、っと……」
神酒「あたしも瑠璃さんちに泊まりたかったんですけどお~!」
夢「店長が、ダメ! って……」
瑠璃「なんや。会社大きゅうなって。月の一号店で研修、……やっけ」
夢「はい」
ディズィ「凄いなぁ。月にメイド喫茶が出来るなんて思わんかったわぁ」
神酒「夢さんとあたし、が! 講師なんですよっ!? 凄いでしょ! ふふん!」
瑠璃「たった一年で二人とも、出世したなぁ」
夢「現場に入ることが少なくなってしまって。少し寂しいですけど」
神酒「でも。週に一回は、あのお店。行ってるんですよ? エリアマネージャーですからっ! あたしたちっ」
瑠璃「凄いな」
神酒「夢さんはと・く・に! サーヴィスコーチもやってますからね。忙しいですよね」
夢「そうですね……」
ディズィ「サーヴィスコーチ、ってことは、接客?」
夢「接客もそうですけど。お店の営業の内面的なことも、指導しながら色んなお店をチェックして回っているんです」
ディズィ「へ~!」
神酒「夢さんはメイドの接客大会で、日本一にもなったんですよ!」
ディズィ「凄い!」
夢「い、いえいえ。基礎にこだわっただけです」
ディズィ「いやいや。んな簡単にはなれんやろ」
夢「……ディズィさんって、瑠璃さんと同じ訛りがあるんですね。やっぱり」
ディズィ「僕も、ケテラスのリゼルの、田舎出身なんで」
夢「あっ。そう、だったんですか」
ディズィ「夢さんも、ケテラス出身やって、カズマに聞きましたけど」
夢「えっ!?」
瑠璃「……」
ディズィ「アイゼル城下の貴族なんですよね?」
夢「えっ……あ、ああ」
夢(……そういう話になっているんですね?)
瑠璃(ああ……。元姫やなんて言えへんやろ?)
夢「……ふぅ」
神酒「じゃ、瑠璃さん。ホテルすぐそこなんで。ホテルのロビーで待ってて下さいっ!」
瑠璃「ん。わかった」
夢「……あれ?」
ディズィ「どうしたん?」
夢「お財布が……えーと、あれっ」
ディズィ「なくした?」
神酒「さっきそのポーチに入れてませんでした?」
夢「んー。ない……かも」
神酒「困りましたね……」
ディズィ「やっぱ夢さんはカズマん家泊まるしかないんやない?」
瑠璃「え」
神酒「えーっ!? ゆっ夢さん! 私がホテル代の前金、払いますからあ! あたし、一人でホテルなんて泊まれなぁい!」
夢「神酒さん、丁度しか持ってこなかったって言ってませんでした?」
神酒「おおおお土産代があります!! 五千円!」
夢「五千円……って。月のお金に電子金、換金してこなかったんですか?」
ディズィ「五千円じゃあ一泊も出来んやろ」
神酒「えっ!? ああっ! ももももおっ!」
ディズィ「落ち着いてや。あっちで換金出来るで。一緒に行ったるわ」
神酒「ううう……。すみませえん」
ディズィ「んじゃ。夢さんはカズマん家に行ってらっしゃい。また晩御飯時にでも♪」
神酒「はぁ。こうも簡単に二人きりにさせちゃうなんて……」
ディズィ「君もかー」
神酒「へ?」
ディズィ「いーや。なんも」
換金ブースに行く、神酒とディズィ。
神酒「あれっ? あそこに落ちてるのって……」
夢「っ……」
瑠璃「エアポート内でなくしたん? 見つかったら連絡来るやろ。行こ」
夢「う、うんっ」
瑠璃「荷物。持つ」
夢「だ、大丈夫です!」
瑠璃「んや。持たせて」
夢「でも」
瑠璃「夢は……俺の手持って」
瑠璃。夢と手を繋ぐ。
夢「っ! ……はい」
瑠璃「久々やな……」
二人、歩みはじめて。
夢「毎晩通話してるじゃないですか」
瑠璃「感触はわからんやろ」
夢「先月もお会いしましたし」
瑠璃「言うたやろ。……俺、片時もお前と離れとおないねん」
夢「……瑠璃……」
瑠璃「たまらんわ」
夢「?」
瑠璃「会いたかった」
夢「……うん」
瑠璃「赤い靴、履いてきたん?」
夢「うんっ。瑠璃に貰ったやつだからっ」
瑠璃「時計も」
夢「瑠璃も!」
瑠璃「夢に貰うたやつやから」
夢「ふふ」
瑠璃「夢」
夢「はい」
瑠璃「結婚しよ」
夢「えっ……」
瑠璃「ふ。うそ。まだ無理やんな? 仕事、楽しそうやしな。一緒には……暮らせへんやろ」
夢「わ私……もしかしたら月に住むようになるかも知れないんです」
瑠璃「えっ?」
夢「ここの月の一号店。来期の店長になるかも知れなくて。……そうしたら」
瑠璃「そうしたら。一緒に暮らせる?」
夢「まだ、決定ではないので……。なんとも」
瑠璃「夢……」
瑠璃、夢を抱き寄せて。
夢「っ。……瑠璃?」
瑠璃「(夢の頬にキスをして)……ちゅ」
夢「る、……っん……っ」
瑠璃「大好きや」
夢「私も……」
瑠璃「……(咳払いして)……行こか」
夢「はい」
瑠璃「っ! ……おい」(夢の背中を見て)
夢「はい?」
瑠璃「半分は観光かも知れんけど。んな背中あいとる服……」
夢「だってあっついんですよ」
瑠璃「お前もうちょい自己防衛せい!」
夢「んんっ!?」
瑠璃「この間も変な男に道で絡まれた~言うとったやろ!?」
夢「あっ。えっ。は、はい」
瑠璃「なんべん言わすねん――……」
夢「る瑠璃っ! 前っ!」
瑠璃「え? わっ!!」(小さい樽に足をぶつけて転びかける)
夢「瑠璃っ!!」(夢の背中が光り、瑠璃が地面に直撃しないよう、光で風を起こし)
瑠璃「っ!? えっ」
瑠璃「? ……っ?」(ふわりと地面に片足を着いて)
夢「大丈夫ですか!?」
瑠璃「今の光……夢が?」
夢「えっ?」
瑠璃「あ、いや。なんもない。行こか」
夢「はいっ」
夢の背中に、アイゼル王家の紋章が現れ輝き。……すぐに消えて。
瑠璃のマンション。
夢「瑠璃、マンションの自室……帰って来るの久々なんですか?」
瑠璃「ん?」
夢「だって……郵便受け、凄いことになってますよ。ほら、電子表示。ちゃんとチェックしないと……」
瑠璃「あー……」
夢「もしかして」
瑠璃「寝にこうて来てる、って感じかな」
夢「そうですか……。郵便、あけます、ね? 何か大事なものが入っているかも知れないし」
瑠璃「あー、うん」
夢「休み、久々なんですか?」
瑠璃「んー……」
夢「えっと……。光熱費の明細、居住税……、デパートのチラシ、スーパーの割引券、……と、これは?」
瑠璃「夢、何飲む?」
夢「あっ、自分でやりますよ!」
瑠璃「ん、いやー」
夢「ケテラス言語の……手紙?」
瑠璃「あー、多分、家族から」
夢「あっ。……そうですか……」
瑠璃「会えへんかな」
夢「え?」
瑠璃「こっちに呼ぶんやったら、ええやろ?」
夢「ご両親……ですか?」
瑠璃「うん……」
夢「……そうですね。私は……ケテラスには近付きたくないので」
瑠璃「……」
夢「瑠璃、ごめんなさい」
瑠璃「いや」
夢「瑠璃……」
瑠璃「ん?」
夢「不思議だなって、思ってました」
瑠璃「なんが」
夢「私が……名無しのだと、知っていたのに。瑠璃は私のことを……」
瑠璃「関係ない」
夢「でもご両親は……」
瑠璃「両親にも、アイゼル城下の出身やって言うから」
夢「……嘘じゃないですか」
瑠璃「いやいや。お前、十数年前に死んだ、アイゼル城のほんもんの王女やなんて言えんで」
夢「わかってます! でも」
瑠璃「“黒凪 夢”やって、嘘の名やろ。今の君の履歴書に書いてあるんのんも、嘘が……」
夢「名前がないから。嘘をつくしかないんです」
瑠璃「まだ。夢はそうやって。ずっと……クロム姫の心のまま止まっとるんやな」
夢「そ、そんなことは……っ」
瑠璃「死んでも守りたい人がおったんやもんな」
夢「……本当の名前さえわかれば、私は戻れる……っ!」
瑠璃「夢……?」
夢「っ! ご、ごめんなさい」
瑠璃「戻る気……なんか」
夢「……違う……」
瑠璃「……」
ディズィ「おーいっ!」 神酒「夢さぁーんっ!」(二人、瑠璃の部屋の扉を叩いて)
夢「あっ」
瑠璃「夢、おまえ……」
夢「はい……?」
瑠璃「なんで、死の偽装なんてしたん? なんで……死ぬ必要が……」
夢「瑠璃には関係ないです」
瑠璃「……っ」
夢「お願いですから。誰にも何も言わず。もう、何も、そのことに関して、思わないで下さい」
玄関に行く夢。
瑠璃「……」
神酒「お邪魔しますぅーっ! あーあっ。喉乾いたっ」(瑠璃の部屋の中にずかずか入って来て)
瑠璃「茶ー飲み」
神酒「わーいっ! いただきますうっ」
ディズィ「夢さん。はい。お財布!」
夢「えっ。あっ! ありがとうございますっ!」
神酒「落ちてるの、あたしが拾ったんですよ~っ!」
ディズィ「ちょお! ……っ!(こっちの手柄にしてくれる言うたやろ!?)」
神酒「ん~っ? はぁ~っ? なんですかぁ?」
ディズィ「んっがー!」
夢「? ……神酒さん、ありがとう」
神酒「いいえいいえっ! ほんとーにっ良かったですぅっ!」
部屋の中、警報が鳴り響く。(ジョーカー役「ウーウーウーウー……」)
神酒「っえっ!? 警報っ!?」
夢「これは……」
ディズィ「なんや!?」
瑠璃「……っ」
神酒「っ!! 瑠璃さん! モニターが!」
瑠璃の部屋にあるPCのモニター、電子モニター、神酒とディズィと夢の手首に巻いてあるネットワーク回線が、赤く光る。
神酒「全部、ひらいて行きますっ!」
ディズィ「んなああっ!?」
神酒「なんでぇ!?」
四人、みんなで部屋の外側に向かって座り、突然の出来事に対応する。
夢「ネットワークが破損して行きます!」
瑠璃「あかん。このままじゃ住居システムが崩壊する」
ディズィ「何ぃ!? ちょっ!! 阻止出来ひんのか!?」
神酒「っひゃあ!? 何っ!? 洪水!? 地震!?」
瑠璃「――っ夢!」
夢「はいっ! ひとまずアクア障壁のデコードをします!」
瑠璃「頼む!」
神酒「!? 瑠璃さんっ! モニターに何かっ!」
ディズィ「海賊旗!?」
瑠璃「エド……ヴァルガ……?」
夢「!!!!」
ジョーカーの高笑いが、聞こえる。
ジョーカー『クククッ……くっはっはっはっはっはっは!!』
神酒&瑠璃&ディズィ&夢「っ!!?」
神酒「何? 誰!?」
夢「ジョーカー……」
瑠璃「ジョーカー……?」
ジョーカー『よう、クロム』
夢「っ……どうして」
ディズィ「クロム?」
ジョーカー『元気そうだな』
夢「また程度の低いイタズラですか?」
ジョーカー『フッ。趣味がいい、或はハイセンスな嗜好ですねと言ってくれよ。なぁ……クロム姫』
夢「その名前で呼ばないで」
神酒「クロム? ってもしかして、ケテラスの?」
ディズィ「いや、まさか。歴史上の人物やろ?」(馬鹿にしたように笑いながら)
瑠璃(立ち上がって)「……ジョルド・ルーティ……」
ジョーカー『あぁ?』
瑠璃「どういうつもりや」
ジョーカー『クロム、俺のことを話したのか』
夢「い、いえ。瑠璃、どうして」
ジョーカー『瑠璃……。(検索して) ふん、昔のクロムの職場の人間か。今はインドランスの研究員……。ご立派な人間じゃねえか。興味ねぇな』
瑠璃「夢のことを調べれば調べる程……。必ずお前に辿り着く……」
夢「えっ?」
瑠璃「元アイゼル貴族の大悪党海賊、ジョルド・ルーティ」
ジョーカー『まあ俺のことを知っているのは褒めてやってもいい。だがな、』
神酒「るっるっるっ瑠璃さぁん!! お掃除ロボットとかの理論障壁とかもう色々とデリートされてますよお!」
ディズィ「そんなんよりもや!! カズマ! このままじゃここ浸水するで!」
神酒「あたし泳げないのにい!」
瑠璃「何が目的や」
ジョーカー『クックックッ……』
夢「ジョーカー……やめて。私に復讐したいんですか?」
ジョーカー『復讐? 俺は、お前に苦しめられた覚えは無いがなぁ』
夢「この三人は、月の未来を背負っているんです。……月だけじゃない。だから」
ジョーカー『お前に関わる者は、不幸になる運命なんだよ』
夢「っ……!」
神酒「ちょっと!! あなたさっきからなんなの!? 夢さんの何!?」
ディズィ「せやせや!」
ジョーカー『夢って誰のことだ』
夢「っ!」
瑠璃「おい……! やめろ!」
ジョーカー『この世に黒凪 夢なんて人間は存在しない』
夢「っ」
神酒「はぁ!? ほんっとなんなんですかこいつ!!」
ディズィ「うっざ!」
神酒「あたしはもう五年以上夢さんと一緒に働いてるんですよ!」
ジョーカー『そこに居る黒凪 夢は、十数年前に死んだ、アイゼルの――』
夢「っジョーカー!! やめて下さいっ! あなたが私をこうしたんじゃないですか!」
神酒「夢さん……?」
夢「っ……っ」
ジョーカー『そうだ。だから、お前の人生は俺のものだ。クククッ』
瑠璃「夢……」
夢「もう、貴方に馬鹿にされるのは沢山です……」
ジョーカー『ナナシのカヴァーオペをしろ。今すぐだ』
夢「またですか? ナナシはもう、ディラとダナに任せたんです!」
ジョーカー『お前に人情があるんなら。これを受け取れ』
夢の近くに、何かが転送されてくる。
夢「!!?」
神酒「転送プログラムです!」
ディズィ「なんや!?」
夢「神酒さん、危ないから下がってっ」
ジョーカー『俺が作ったリゼヴァングだ。お前、来月誕生日だろ? やるよ』
夢「リゼヴァング……? っ……!!」
神酒「ちょっ! 何? じ、銃!? おっ女にこんな物騒なもの送り付けてくるなんて! あんた絶対ケテラス人でしょ!」
ジョーカー『おお。よっくわかったな』
ディズィ「あの~。僕もカズマも、ケテラス出身なんやけど」
神酒「えっ!? あっそっか!」
夢「以前使った……ゾディアックとは」
ジョーカー『あれの改良版だ』
夢「っ……。また、一銭の得にもならない発明ばかりして」
ジョーカー『そう思うかは、この映像を見てからにしろよ』
夢の前にあるモニターに、宇宙空間の映像が表示される。
ディズィ、瑠璃、神酒、夢の後ろに寄って来て。
夢「っ!? キャギラの軍団!?」
神酒「ええーっ!? キャギラ!? わっ!! 凄い! わぁっ!?」
ディズィ「どこの海域や!?」
夢「これ、リアルタイムですか?」
ジョーカー『ああ』
神酒「こここここ! この近くにあるの、プルートじゃないですか!?」
ディズィ「太陽系外やんか!」
瑠璃「協会に知らせんと……!」
ジョーカー『おっと、待てよ。通報なんてさせる訳ねーだろ』
瑠璃「っ! キャギラは、俺らが創ったインドランスのっ……!」
ジョーカー『出来損ない。人造生命体の腐った、非消滅迷惑遺伝子の成れの果て。だろ?』
ディズィ「貴様ッ! 言わせておけばっ!!」
ジョーカー『元人間に機械繋げて延命させて。楽しいかァ? お偉い研究員さんたち、よ』
ディズィ「ざっけんなや!!」
瑠璃「ディズィ! 落ち着け!」
ディズィ「落ち着いてられっか! お前はええんか!!」
瑠璃「……っ。死体弄って無理に命をリサイクルしとるんや……。悪く思う奴がおるんは当然や」
神酒「そんな!! 人類の進化の為にやっていることじゃないですか! インドランスの研究員が居なきゃ。今は医学だって!」
瑠璃「んでも! 使うとるんは自殺者や殺人鬼、犯罪者……! この世を恨んどる人間の身体を頻繁に俺らは……!」
神酒「なんなの瑠璃さんどこまで優しいの!?」
ディズィ「カズマ……! お前迷って仕事しとるんか!?」
瑠璃「ち、違う……! でも俺はっ」
ジョーカー「ククククッ……」
夢「ジョーカー! ……テトラだって、インドランスじゃないですか。そんな言い方は (しないで下さい……)」
ジョーカー『利用出来るもんは利用する。それだけだ』
夢「っ……」
ディズィ「勝手なことばっか言いなっ……!」
神酒「こいつ嫌いですっ! インドランスは、私たちの生活には欠かせないものですよ!?」
ジョーカー『だが暴走したインドランスは、キャギラと呼ばれ、狂い、人を喰らい、あのようになる』
瑠璃「土や光すら、キャギラのエネルギーになる……」
神酒「確かに、手が付けられなくなりますけどでもっ!」
ジョーカー『なあ、研究員さんたちよ。もうちっと丁寧に創れよなぁ。お前らがゴミばっか作るから……』
ディズィ「ゴミやとお!?」
夢「ジョーカーやめてっ!! ……っ! あれは……っ! ナナシ……!? なんでこんな―― (海域に……!!)」
ジョーカー『俺の大事な姫君の後輩が、今にもキャギラ共に喰われっちまいそうだなぁ』
夢「瑠璃! この宇宙船と通信出来ますか!?」
瑠璃「宇宙船!?」
夢「これです! ここに居る青い光線の……!」
瑠璃「やってみるわ」
ジョーカー『クロム。リゼヴァング、上手く使えよ。この世で唯一、アイゼルの王族にしか使えない一級品だ。面白ぇデータが取れる事を、期待してる。……じゃあな』
ジョーカーとの通信が切れる。
夢「……っ! ジョーカー……」
瑠璃「……あいつ、もしかして」
ディズィ「むかっつくわ! よその海域にキャギラ放つバカがおるか!?」
夢「ジョーカーにはこんなこと……」
瑠璃「暴走インドランスを収集して解放して……? んなこと出来るんか?」
夢「出来ないと、思います。こんなことが出来るのは、神か、」
瑠璃「インドランスのプロトタイプならどうや。モノクロームなら」
夢「モノクロームは既に全機処分されているじゃないですか!」
瑠璃「わかっとる! でもこんなっ! 数百天文単位のエフェクト展開、誰か人の力なん違うんか!? 例えば……別の……アイゼル王族の紋章の力とかな!」
夢「っ!? 瑠璃……。私を疑ってるんですか?」
瑠璃「あっ……、い、いや……」
夢「……っ」
神酒「っ! 夢さん! 建物の崩壊プログラム制止! なんとか再構築出来そうですっ!」
夢「ありがとうっ。そちらは任せます」
ディズィ「とにかく全部一旦回線を絶とうや!」
瑠璃「せやな」
神酒「おっけーですっ!」
夢「えっ。ち、ちょっと待って下さいっ! そうしたらナナシとは……!」
瑠璃「あっちだってなんか幾つか兵装積んどるやろ」
ディズィ「これ以上干渉されたら今度はどんなウイルスにこっちが汚染されるかわからんよ!」
夢「っ……」
神酒「夢さん! 切っちゃいますね!? こっちも!」
瑠璃「行くで」
ディズィ「おっけっ」
夢「ッ!! 待ってくださいっ!!」
少し、しんとなる。
瑠璃「夢……?」
夢「っ……お願いです。あの船を助けたいんですっ! どうしても!!」(みんなに向かって頭を下げる)
神酒「夢さん……」
ディズィ「型番KT967……。やっぱケテラスの船か」
夢「この船には、私の……かつての仲間が三人、乗っています。一人はこの船のプロセッサーコアを搭載したインドランスの女の子。一人は、エンジニア兼操縦士の男性。もう一人は……ケテラス星中央大陸、アイゼル城の現王女です……」
ディズィ「王女……? どうする?」
神酒「どうするって言われてもぉ~」
瑠璃「……夢……」
夢「瑠璃たちまで危険にさらす訳にはいきません。先にここから離れて下さい。なるべく早く終わらせますから……! 今だけ、ここを貸して下さいっ!」
神酒&瑠璃&ディズィ「っ……」
一人で何とかしようとする夢。ナナシにコンタクトを取ろうとするが、接続がロックされており、中々上手くいかない。
夢「……っ。……あちこちロックがかかってる……。やっぱりこんなに距離があるんじゃ、ダイレクトに通信をかけるなんて……。……っ。どうしたら……。ディラ、コーラ、ダナ……!」
瑠璃、夢の隣に座り。PCの鍵盤を叩く。瑠璃に続いて。神酒とディズィも座る。
瑠璃「通信障害はなんとかする。月のパスなら、第九惑星まで通して貰えんねん」
夢「瑠璃っ……!」
瑠璃「ただ、あっちと話しとる暇なんかなさそうやで。とにかくキャギラをなんとかせんと!」
夢「そうですよね。でもこの距離じゃ……」
瑠璃「夢。余裕やろ。……たった五十四億キロや」
夢「たったって……」
瑠璃「あーほ」
瑠璃、夢の鼻をきゅっとつまむ。
夢「んっ!?」
瑠璃「オペレーターが、んな顔したらあかん」
夢「っ……はいっ!」
神酒、舌を上顎に当ててテンポ良く何回かはじき鳴らしながら座る。
神酒「よい、しょっ。あたし、ケテラス人って実はずぅっと偏見があったんですけど。……でも、夢さんの大切な人なら。助けなきゃっ」
夢「神酒さん……」
神酒「運が良ければ~。軌道によっちゃ、四十八億キロじゃないですかぁ」
夢「えっ」
神酒「夢さん。今の科学で、距離の問題なんて解決出来ますっ。楽勝です!」
夢「……っ。頼りにしてます!」
ディズィ「あーあっっと! しゃーないなっ。元はと言えば、僕らの先輩が創ったインドランスたちやからなぁ。後処理しましょかね」
夢「ディズィさんっ」
ディズィ「夢さん。終わったら、デートして下さいねっ!」
夢「えっ」
瑠璃「あほ」
神酒「みじん切りにしてカレーに入れますよ」
ディズィ「きゃっほい!」
瑠璃「ミキ」
神酒「はいっ! 瑠璃さんっ!」
瑠璃「光やったらどんぐらいで行ける」
夢「ひっ光ですか!?」
神酒「え~と、時速百キロで進んだ場合がえ~と、54の24の100で割って一年を365日で考えると~う、6164.38年です、かぁ? 大体6164年かかるから~。光だと、宇宙の真空中で秒速30万キロでいいですかねぇ? 時速だとえーと、んーと、あー。五時間くらいですかねぇ~」
夢「五時間……」
瑠璃「つまり。光の速さで行っても。間に合わん訳や。こんな蟻地獄の中、五時間も飛んでられへんやろ」
神酒「逃げ場もなさそうですね」
ディズィ「このライヴの映像は、光よりはやいん?」
神酒「あ~。これはぁ。すっごいカラクリがあってですねえ」
ディズィ「因果律崩壊になんでならないん?」
夢「っ……!」(溜め息を吐く)
ディズィ「夢さん……万策尽きた感じ?」
神酒「燃料はどのくらい残ってるんですかねえ?」
ディズィ「冥王星にかくまって貰えへんの?」
瑠璃「無理やろうな。プルートはケテラスと戦争したばっかや」
夢「っ! 戦争……」
神酒「んー。つっま、り。冥王星の軍艦に撃たれるかキャギラに喰われるかどっちかでしょうねえ~。あっ、めっちゃ追われてるっ!」
夢「ディラっ……! っ……どうしたらっ」
瑠璃&神酒&ディズィ「……ぁ~」(夢を見詰めて)
夢「んっ!? はいっ!?」
瑠璃「ジョーカーに貰うた銃」
夢「えっ。あっ。コレですか?」
ディズィ「なぁんで銃なんか」
神酒「取説ついてないんですかぁ? まあ、銃なんてせいぜい飛んで1キロ。役に立たないでしょうけど」
夢「……リゼヴァング……」
夢がその銃を握ると、突然その銃が光り輝き。巨大化しながら夢の右手にすっぽりとはまる。
神酒「わっ!? 光ったっ!」
瑠璃「変形した……」
夢「わわわっ! わっ!?」
ディズィ「その銃、もしかして……ダイブ機能とかついてる訳やないよな?」
夢「……えっ?」
瑠璃「弾が別次元に飛ぶ、いうんか?」
ディズィ「そそ。夢さん、前にもそれ使ったことあるんやろ?」
夢「は、はい。ジョーカーが……っさっきの人が、宴会芸用として私に作ってくれて……」
ディズィ&瑠璃&神酒「宴会芸ぃ?」
夢「そうなんです。私、実はメイド喫茶で働いていた時に、ちょこちょこと実はあの船に乗る機会があって……。で、たまにする飲み会で。いつも、一発芸をしなければならなくて」
瑠璃「消える弾なん? 壁をすり抜ける~とか」
神酒「お花がめっちゃ出るっとか?」
ディズィ「金やな! 銃口から金がむっちゃ出てくる!」
夢「あの人の発想にしては、凄くロマンチックなんですけれど……。実はこの銃、ごにょごにょ……」
瑠璃&神酒&ディズィ「ふむふむふむふむ……」
瑠璃&神酒&ディズィ「はぁ……?」
神酒「星座に銃口をかざすと?」
瑠璃「その星座の特徴の」
ディズィ「弾が出る……??」
瑠璃「大丈夫なんか? プラネタリウム銃?」
ディズィ「ロマンチック過ぎるわ!」
神酒「それであの人たち助けられるんですかぁ?」
ディズィ「諦めも大事やで。夢さん」
夢「も、もうっ! 本当なんですよっ! 見てて下さいっ! 今やってみますからっ!」(窓のほうへ駆けて行って)
夢「彦星……。っ! えいっ」
瑠璃&神酒&ディズィ「???」
夢、彦星に向かって銃口をかざし。トリガーを引く。
夢「よしっ。……準備おっけーですっ!」
瑠璃「これでここ全部吹っ飛んだら笑えんな」
神酒「いやいや、笑えませんよ!」
ディズィ「夢さんっ。耳とか塞いどったほーがええ!?」
夢「い、一応ダイブゲート、開いておいて貰えますか!?」
ディズィ「おお。ほいほいっ。……ほいっ。どーぞっ。冥王星付近の車軸に合わせたでっ」
夢「ありがとうございます。……行きますっ! っ!! “アルタイル”っ!!」(ぱちんっという、軽い音が鳴る)(※夢役、指を鳴らす)
静まる。
神酒「……えっ?」
ディズィ「……ふぁんたじー」
瑠璃「真面目にほか考えよか」
夢「まっ待ってくださいっ! おかしいなっ!? 前はこうして……っ。えいっえいっ!? えいっ!」(ぱちん、ぱちん、という軽い音がする)
瑠璃「どっちにしてもや。ただの宴会芸じゃ、キャギラを殲滅出来んで」
夢「そうですよね……」
神酒「ディズィさん、危ないからさっさとダイブゲート閉じて下さいよぉ。飲み込まれたら困りますぅ」
ディズィ「あいあい……っと、」
ダイブゲートの先から、強烈な叫び声のようなものが何十何百と聞こえ、みんなの鼓膜にかなり振動が走る。
全員「ぁあああああああああああああああっ!!!!!?」
神酒「なっ何この音っ!?」
ディズィ「キャギラの鳴き声!?」
瑠璃「こっ鼓膜っ……死ぬっ」
夢「っ! ナナシが……!! ディラ!! っ!!」
神酒「ああああっ! 食べられちゃいますよ! あの船っ!!」
ディズィ「もう終わりや!!」
夢「ディラっ、コーラっ! ダナっ!」
夢、再び銃を星座にかざして。トリガーを引く!
神酒「あっ、夢さんっ!?」
夢「絶対に助けるっ!! 死なせる訳にはいかないっ……!!」
ディズィ「何度やっても無駄やって! 宴会芸用の銃なんてなあ!」
夢「それでもジョーカーが私の為に創ってくれた!! 私にしか撃てないのなら……っ!!」
夢、再びダイブゲートに銃口を向ける!!
しかし、謎の叫び声は渦を巻き、更にうるさくなって。
ディズィ&神酒「うっぎいいいいいいい!?!? うるさっ……!!」
神酒「こっこのままじゃ私たちまで死んじゃいますよぉお! 死因が鼓膜破裂によりなんていやぁぁ!!」
ディズィ「夢さん、もう……っ!! くうっ!!」
瑠璃「夢にしか……撃てん……銃……」(思い詰めて)
夢「ッ!! お願いですリゼヴァング!! ディラを守ってぇ!!」
瑠璃「っ! 夢!!」
無理やり夢の服を脱がし、彼女の背中に現れ淡く輝いている、ケテラス王家の紋章を見詰める瑠璃。
夢「えっ!? ひゃあっ!?」
ディズィ「カズマッ!? お前ちょっ!? ご乱心!? 公開せっく――ブッ!!」(神酒に張り手される)
神酒「ひゃああああ!? ばっバカあ! ディズィさんは見るなあっ!!」(ディズィの腹を何度も蹴り上げる)
ディズィ「ボガアッ!? あぐっ!?」
夢「る瑠璃!? 何するんですかっ!」
瑠璃「やっぱ見間違いやなかった! 背中っ! 夢、銃貸しっ!」
夢「えっ、はっあいっ!?」
瑠璃「いくで!」
瑠璃、夢の背中の紋章に向かって、トリガーを引く! すると、銃が再び輝く!!
夢「っ!!!?」
神酒「まぶしっ!? じっ銃がまた光ったっ!」
ディズィ「おおっ!? もう耳から目からどんどん五感を攻撃されてっるウ!!」
瑠璃、夢を後ろから抱き締めるようにして、銃を彼女の右手に返す。
瑠璃「これでどうや!」
夢「いっいけそうです!」
瑠璃「熱ッ……!」
夢「る瑠璃! もういいです! この銃、トリガーを引いてからはずっと星のエネルギーを充填するので、物凄く……!! (熱くなるんですよ!)」
瑠璃(夢の台詞に被せて)「いや!! ……お前さっきから震え過ぎや。しっかりせえ……っ!!」
夢「……っ。瑠璃まで火傷しちゃいます!」
瑠璃「うるっさいわ!! はよ撃て!! 絶対に助けるんやろ!!」
夢「っ――! ……はいっ」
神酒「夢さん!! またあの宇宙船が! 追われてますっ!!」
ディズィ「夢さんっ!!」
神酒「キャギラのほうが、速度が上みたいですよっ!」
ディズィ「急いでっ!」
瑠璃「夢……っ!」
夢「っ……いきます!」
夢の背中の紋章と、銃が、更に輝いて。
瑠璃、夢の右手の上に重ね続けていた自分の右手の力を強めて。
夢「……っ“ヴィアラクテア(天の川)”!!」
瑠璃&ディズィ&神酒「っ!!!!」
リゼヴァングから、流星のような強い光が放出され。それがダイブゲートを通り、キャギラの群れを殲滅していく。
神酒&ディズィ「ひゃあああああああああああああ!!?」
夢「っ――! 弾が出た……っ!」
神酒「凄いっ!! 光より速い弾を撃てる銃だなんてっ! 宇宙の革命っ!?」
ディズィ「群れが消えてくで!」
神酒「このまま逃げ道を確保出来そうですね、あの船っ!」
瑠璃「ゆ夢! ボサっとすんな! もう一発!」
夢「は、はいっ!! もう一回っ……!!」
3時間後。
神酒「ふぅ……。じゃあ夢さん。あたし、ディズィさんとご飯食べてからホテルに行ってますね」
夢「はい。今日は本当に、ありがとうございました」
ディズィ「処理閉め手伝わなくて、大丈夫ですか?」
夢「はい。もうあと少しですから。瑠璃さんも、お風呂入っちゃってますし」
神酒「普段研究ばっかで、あんなに運動したの、久々なんじゃないですか? ふふっ」
夢「……かも、知れませんね」
ディズィ「じゃあ夢さん。また明日」
夢「あ、はい」
ジョーカーから、夢に通信が入る。
夢「ん……通信?」
ジョーカー『……クロム』
夢「あっ。ジョーカー……」
ジョーカー『上手くいったようだな』
夢「まあまあです」
ジョーカー『しっかり叱りつけておけよ。後任船長サマに』
夢「貴方が言ったらどうですか?」
ジョーカー『嫌われてるからなぁ。ディラには』
夢「ふぅ……もう。驚かされましたよ」
瑠璃、風呂場から出てくるが、夢が誰かと通信をしているのに気が付き。声を掛けず。
ジョーカー『平凡な人生にスパイスを与えてやったんだ。感謝しろ』
夢「ここの住居システムまでハッキングして私の友人を脅かしたのは、やりすぎです」
ジョーカー『説教か?』
夢「でも、貴方がディラを助けたかった気持ちには、感謝できます。本当に、知らせてくれてありがとう」
ジョーカー『なんのことだ』
夢「あの方法でなければ、ナナシを救えなかった。たまたまナナシの救難信号を受けた貴方は、エドガーは……地球の近くを飛んでいて。とても、冥王星海域にまでは、距離がありすぎて」
ジョーカー『いいように捉えすぎだ』
夢「50億キロ以上離れた場所であっても。それでも貴方は、何か出来ないかと考えた。光よりも速く、強力な射撃でキャギラを殲滅出来ないかと」
ジョーカー『普通なら無理だな』
夢「でも貴方は、私が持つアイゼル王族の秘めた力を……信じてくれた」
ジョーカー『信じる? この俺がか?』
夢「ええ。あんな力、嘘か幻かも知れないのに」
ジョーカー「……幻なんかじゃない……。お前が九歳の時……」(ウイスパー)
夢「貴方はディラたちを助ける為に……。たまたま近くにあった、前創ってくれたオモチャの銃を改造して。月に居る私のもとへ届けてくれた」
ジョーカー『フッ……。俺はただ』
夢「?」
ジョーカー『お前が困った顔を見たかったんだよ』
夢「そうですか」
ジョーカー『お前なら……。っ……』
夢「はい?」
ジョーカー『いや。なんでもない』
夢「なんですか。言って下さい」
ジョーカー『……俺とお前なら、出来ると思った』
夢「!」
ジョーカー『またな』
夢「は、はいっ!」
通信が切れる。
夢「……ふぅ」
瑠璃「夢」
夢「っ! はっはいっ!」
瑠璃「へーきか?」
夢「はい! インドランス協会へも、きちんと報告書を出しておきました」
瑠璃「そか」
夢「後は……。ナナシが無事に太陽系に帰ってこれれば。一安心、です」
瑠璃「燃料は?」
夢「大丈夫みたいです。それよりも、お腹が空いたって、伝言が」
瑠璃「良かったな」
夢「はいっ」
瑠璃「……背中の、また消えたな……?」
夢「えっ? ……あっ」
瑠璃「夢、こっち来」
夢「っ。はいっ」
瑠璃、夢を抱き止めて。
瑠璃「ん……夢」
夢「……瑠璃?」
瑠璃「君はやっぱ、違うんかな」
夢「?」
瑠璃「ずっと一緒には……おられんのかな」
夢「瑠璃……?」
瑠璃「どんなに好きでも」
夢「ゎ、私――……」
瑠璃のPCに通信が入る。(神酒役「ツーツーツー!」)
瑠璃「ん? ……はい」(通信を受ける為、デスクの前に座って)
神酒『瑠璃さぁん!? ちゃんと夢さんのこと、ホテルに帰してくださいねぇ!? そっちに泊まらすとかなしですからね!?』
ディズィ『ちょお神酒ちゃん! 何電話しとるん!』
神酒『ばっかああ!』
通信が切れる。
夢「あ、ははっ」(座っている瑠璃の後ろに立って)
瑠璃「……行こか?」(振り向き)
夢「……んー」
瑠璃「? 夢?」
夢「もう少しだけ。二人きりで、居たいです」(彼を後ろからハグして)
瑠璃「っ!!」
瑠璃「っなんやもぉっ! あほぉっ!」
夢「へっ?」
瑠璃「かわいい」(立ち上がって)
夢「……ありがとう」
瑠璃「……ふぁ……ちょお疲れたな」
夢「少しお休みになりますか?」
瑠璃「……一緒に寝る?」
夢「えっ?」
瑠璃、夢の手を取って。
瑠璃「やっぱ簡単には諦められへんわ」(夢の手にキスをする)
夢「!」
瑠璃「側におって」
夢「はいっ」
瑠璃「朝まで」
夢「えっ!?」
神酒『ちょっとー!? 瑠璃さーん!? 夢さーん!?!?』
夢&瑠璃「強制回線!?」
瑠璃「お前いつからんな芸当を……っ!」
神酒『はやく来てくださいよねーっ!!』
ディズィ『おいお前邪魔し過ぎやろ!』
神酒『だってえぇぇ!』
夢「ふふっ。行きますか?」
瑠璃「あーあ。ったく」
夢「……瑠璃」(目を伏せてキスをねだって)
瑠璃「……ちゅ」(唇にキスをする)
二人、抱き合って。
瑠璃「むかつくなぁ」
夢「はいっ?」
瑠璃「俺のことだけ、考えてくれてれば……辛くならんのに」(優しく微笑んで)
夢「……?」
END