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Friends  作者: リョースケ
9/10

Eight Friends〜悪戯(1)〜

―昨年度卒業式前日―

この日、彰・宏・工藤の3人は卒業式の後にあるの《卒業生を祝う会》に行う“イベント”の最終調整の為会議をしていた。

工藤『では、今年もやってきた卒業式に一発ハデに作戦を遂行させ、卒業生を勢い良く送り出そうではないか。』

宏『おぅー!』

彰『オーケー、派手にキメようぜ。』

黒板の前に立ち威勢良く熱弁する工藤、それに応えるように目を輝かせて返事をしている宏、いつも面倒くさがっている彰も今回はやる気満々である。

宏『彰さぁ〜、何か卒業式とかお別れ会みたいなのだと、かなりはりきるよな〜。』

彰『ああ、俺そう言うの嫌いだからな。』

今まで疑問に思っていた事を聞いた宏だったが、答えにならない答えで返されてしまった。

工藤『まぁいいではないか下条よ。こうして上条もやる気になっているのだから。』

宏『ま、そうだな。』

すると、工藤は校内の見取り図みたいな物を黒板に磁石で貼り付けた。

工藤『今回のイベントも実行員3名、つまり我々だけで行う訳だが、前にも話したとうり、このような配置になるのだが、何か質問などはあるか?』

宏『ない。』

彰『ないな。』

工藤『よし、時に上条、寿司屋とピザ屋、それからヘリの方はどうなっている?』

彰『ああ、叔父さんに頼んでおいたから大丈夫だ。あの人は親父と違ってこういう冗談が分かる人だし、その方が卒業生も喜ぶな、とか笑ってたしな。』

工藤『上条の方は大丈夫そうだな。では下条の方はどうだ?』

宏『こっちは結構てこずているな。あとは水を溜めて下の方をバレないように防水加工して、装置をつけて電源を入れるだけだな。』

彰『大変そうだな。手伝おうか?宏。』

宏『いや、てこずているとは言っても今日中には終わらせるから心配するな。それに、彰はああいう力仕事は苦手だろ?』

彰『分かった。頑張れよ。』

宏『オウよ!任せときな。』

工藤『と言うことは、下条の方も問題はないのだな?』

宏『一応な。んで、そう言う工藤は大丈夫なのか?3人の中で一番仕事が多いのはお前なんだぞ?』

沈黙………

宏『まっ、まさか工藤お前――』

と言いかけた瞬間に彰がとっさに宏の口をおさえた。

彰『そこから先を言うと、また工藤のあつ〜い演説を聞く羽目になるぞ。』

工藤『ふっ、上条よ、貴様もやるようになったな。友として俺は嬉しいぞ。』

彰『はいはい…』

小さくため息を吐きながら流す。そして話が違う方向に行っていたので、進路を元に戻す。

彰『で、お前の方はどうなんだ?工藤。』

顔を睨みつけながら少し怒った感じで言ったが、工藤はそんな事は気にせず、涼しい顔で答えた。

工藤『俺にしてはいつもより、少々時間をとっているが、まぁ問題ないと言っていいだろ。』

彰と宏は少し驚いた。それもそのはず、工藤は今まで“仕掛ける”準備をするのに、時間をとられることは、今まで一度も無かったのだ。

宏『けど、工藤がてこずるのも無理ないか。』

彰『ああ、今回は今までよりも遥かに大規模だからな。』

工藤『だが、その分やりがいがあるがな。』

彰『それで、明日の活動だけど――――』会議は2時間にも続いた。会議が終わった後はそれぞれの持ち場に行き、最後の準備を始めた。




―翌日―

遂にやってきた卒業式の日。彰達の計画はこの1ヶ月以上前から立てられ、何度もシュミレーションしたので準備万端だった。

工藤『上条・下条、これより作戦を実行にうつすが、何か異論はあるか?』

工藤の問いかけに、2人とも無言で首を振った。それを見ると、工藤は威勢のいい声で《作戦開始》と叫んだ。

………………

………


彰『………って言うけどさ、午前中は卒業式だからやること無かったよな〜。』

卒業式が終わり、卒業生を祝う会の“正規”の準備をしながら、隣にいた宏に同意を求める。

宏『いいじゃん、何でも。さすがに卒業式をめちゃくちゃにするわけには行かないだろ?』

彰『そうだな。よし、終わった。さぁ宏、アレ始めるぞ。』

宏『あい。』

そう言うと、彰は自分のロッカーからダンボールを取り出してきた。ダンボールの中には厚さが1ミリ程ある縦1センチ横2センチの長方形の紙らしき物体が入っていた。

彰『工藤の奴スゲーよな〜、卒業生全員分作っちゃうんだもんな。』

宏『だよな。それより、早くこの封筒に入れようぜ?』

そこには、卒業生を祝う会の開会式の時に卒業生が使うパンフレットなどが入っている封筒が置いてあった。

彰『分かった。』

一体これから何が始まろとしているかは、学校内で知っているのはこの3人のみだった。




―卒業生を祝う会開会式―

生徒会長『これより第58回卒業生を祝う会の開会式をはじめます。まず始めに、在校生代表の言葉。5年3組中嶋君お願いします』

生徒会長の凛々しい声とともに待ちに待った卒業生を祝う会が始まった。この会に出れるのは2〜4年生の実行委員と5年生だけである。彰達は2年生の実行委員だった。

工藤『どうだ?準備は完了したか?』

彰『俺の方は大丈夫だ。』

宏『こっちも準備OKだぜ。』

舞台袖で密かに密談する3人。彼らの正規の仕事は照明と音響だった為、人目に付かず色々な事が自由に出来る状態だった。もちろんこの仕事を自分たちから引き受けたのは言うまでもない。

工藤『ふむ、それを聞いて安心した。さて、もうそろそろ“俺たちの”パーティーの始まりだぞ。』

そう言って舞台の方に顔を向ける。彰と宏も工藤にならい舞台の上を見た。

生徒会長『それでは次に学校長の祝いの言葉です。お手持ちの封筒からしおりを出して、姿勢正しく聞きましょう。』

その瞬間、会場の空気が少し重くなった。それもそのはず、校長の話はいつも長くなんでもない集会でさえ30分以上は話す。それも、この様な特別な会の時には1時間を超える時さえあったのだ。そのため会場にいる人間、生徒・教員を含む全員が心の中でため息をついた……ある3人を除く。

彰『始まったみたいだな、校長の話。』

宏『そうだな。あ〜面白すぎて笑いが止まらない。』

工藤『何を言っている下条よ、まだ何も始まっていないだろうが。』

宏『そうだけどサ〜、考えるだけで笑えてくる。』

そう言うと、宏は噴出しそうになりながら必死に声を殺して笑い始めた。舞台の方に目を向けながら彰は冷静に答えた。

彰『今笑ってると後がもたないぞ。ま、そう時間はとらなそうだな。』

工藤『ふむ。いつもより話しがつまらないからな。』

確かに、今校長は小さい頃に初めて釣りに言った時の話をしていた。

宏『あ〜、早くならなかな?』

彰『ま、とにかく待つしかないか……』




パキッ…

5分後、校長の声以外は静まり返っていた体育館内に変化が表れた。

パキッ、パキッ、パキッ、パキッ……

一度はじめに鳴った音が合図だったかのように、会場の至る所からその音が聞こえてきた。

宏『よしっっっ!』

ガッツポーズをとる宏、

彰『ふぅ、ようやくはじまったな。』

少し安心した表情で呟く彰、

工藤『ふっはっはっは、当たり前だ。俺の計画に狂いはない。』

得意気に笑う工藤。彼らの計画ははじまった。

3人はすぐさま校長の方を向き、1秒たりとも見逃さないように見張っていた。更に2分がたとうとした時だった。

突然、何の前触れもなく舞台の天井…すなわち、校長の真上からものすごい量の水が滝のように降ってきたのだ。それも綺麗なものでなく、色々な不純物が混ざったまさに泥水だった。

突然の出来事に一瞬は静かになった会場も、今では生徒のみならず、一部の教員も爆笑していた。校長はと言うと、降ってきた水の力によってカツラを流されてしまい、無言のまま台に手をつき俯きながらただ立ち尽くしていた。


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