Four Friends〜裏風〜
桜『どうかしましたか?上条君。』
そこに居たのは桜だった。
宏『どうした?そんなに驚く事じゃないだろ。』
彰『ああ、悪い悪い。ちょっとな…ところでなんで木下がここに居るんだ?』
工藤『木下が4人席を1人で使っていたから相席――いや、この場合は譲ってもらったと言うべきか。』
宏『そう言う訳だ。別に嫌じゃないだろ?』
彰『あ…ああ。もちろんだ。』
少し動揺しながらもさっき買った食券を2人に配ってから、彰は空いてる席に座った。
宏『お〜し。食券と席も確保したし、そろそろ行きますか。』
彰『そうだな。じゃあ工藤は―――って、いねぇし!』
彰はそう言うと、食券交換所に目をやると案の定そこには工藤がいた。
宏『あいつは忍者か?それともエスパー…』
彰と宏は唖然としながら工藤の方を見ていた。そして工藤がトレイを5枚くらい持って振り返った時、2人にはある疑問が生まれた。
彰『あれ?なんであいつ、あんなにトレイを持って居るんだ?』
宏『本当だ。よく1人で持てるよな。』
彰『いや、そうじゃなくて…まあそれでもいいんだけど、その食券は何処から出てき………』
宏『どうした?彰?』
彰は喋りながらポケットに手を入れて自分の食券を探した。しかしそこには何も無かった。それを見て宏もポケットに手を入れたけれど、予想通り何も無かった。
彰『宏…あいつはやっぱり謎だ。』
宏『そうみたい………だな。』
その会話を聞きながら桜は静かに笑いながら食事をしていた。
…………………
……………
………
…
昼休みが終わり、彰達は教室で席に座って話していると担任の先生が入ってきた。
担任『え〜、みなさん席について下さい。ついさっき決まった事なんですけど、今日の新入生歓迎パーティーは明日に延期されました。』
今まで騒いでいたのが嘘の様に静まりかえった。そして先生は話しを続けた。
担任『実は、この学校の高等部が国の学力調査テストの対象になったんだ』
途端にブーイングの嵐。先生はオドオドしながら生徒をなだめていると、学級委員謙学年トップの工藤が立ち上がった。
工藤『先生!そう言うテストは事前に報告してから行う物じゃないんですか?』
そーだそーだー、と回りの生徒はまた騒ぎ始めた。
担任『本当は近くにある立山南工業高等学校に決まっていたんだが、昨日の調理実習で集団食中毒になって高校2年生が学年閉鎖なってしまったのでこの学校に白羽の矢が立った訳だ。だから中等部の生徒はこのHR後に下校になっている。』
工藤『そうですか。じゃあ明日の予定――つまり時間割はどうなっているんですか?』
担任『明日の時間割は午前授業で、午前中にパーティーを行う。つまり1日授業が潰れると言う事だ。』
よっしゃー!と言う声があちこちから聞こえる。その中、彰は先生と工藤がなにやらアイコンタクトをしているのを目撃した。
彰(工藤……そう言う事か。)
いつもの工藤らしからぬ行動の訳を1人だけ理解した彰だった。
―帰り道―
彰と宏と工藤はいつもの様に3人で帰り道を歩いていた。
彰『おい、工藤。さっきの発言、わざと担任を助ける為にやったろ?』
宏『えっ!そうなのか、工藤?』
彰はさっき気づいた事を工藤に聞いてみた。
工藤『御名答!上条にしては察しがいいな。これでも一応は裏風紀委員で、その顧問が朝霧秀介ティーチャーだったからな。』
宏『そう言えば、裏風紀委員会て何するんだ?全く表には出ていないけど……顧問が居るって言う事はちゃんとした組織だろ?』
確かに、と彰も思いながら返答を待った。
工藤『裏風紀委員略して裏風と言う物はな、簡単に言うと風紀委員の特殊部隊みたいな物で、周りの連中には気付かれないように何かを企んでいる奴らを調べる仕事をしている。しかも、裏風には委員証明ナンバーと言うのがあって、その番号を使えば学校のホストコンピュータに入る事ができる。ただ、誰でもなれる訳じゃなく教員達から絶対的信頼を持っている者でないといけない。』
宏『何か凄いな…それ』
工藤『確か、1年生の始めに上条にもスカウトが来たはずだが?』
そう言うと工藤は彰の方をみた。
彰『あの黒装束の連中ってそんな立派の方々だったんだ。知らなかった。』
宏『でもさぁ。何で色んな事を企んでいる工藤がそんな所に入ってるんだ?お前にとっては敵だろ?』
今までの出来事を思い出しながら宏は聞いてみた。
工藤『愚問だな、敵の行動を知るのも作戦の内だ。』
宏『つまりスパイって事か。』
工藤『そう言う事だ。しかし、バレたら退学クラスにヤバいだろうけどな。』
彰『お前なら大丈夫だよ、絶対に。俺が保証してやるよ。』
昼休みの事を思い出しながら言った。
工藤『お前に保証されてもな………おっと、じゃ俺はあっちだからまた後でな、お2人さん。』
そう言うと工藤は帰って言った。
彰+宏(また後で?)
彰+宏『ただいま〜!』
2人揃って誰もいない家に向かって叫ぶ。
宏『何か寂しいな、少し大きめの一軒家に男2人だけなんて……』
彰『そうか?何を今更的な事を言ってるんだよ。2人で住み始めてから、もう2年になるんだぜ?』
すこし寂しげに呟く宏の言葉に彰は言った。
宏『そうだけどさ………しかし、どうせなら女の子が1人でも居てくれたならなぁ〜。』
彰『だったら、テメェで彼女つくりやがれ。部屋だったら貸してやるから。』
宏『お〜恐、何怒ってるんだよ?』
彰『明らかに俺よりモテルお前が彼女をつくらない事に腹を立ててるんだ。この間だってコクられたの断ったって言ってただろうが!』
宏『だって別に好きじゃ無いのに変に期待させたくないし……』
彰『ケッ、贅沢な野郎だ。』
宏『まぁ、そう言うなよ。工藤よりはましだ。』
彰『アイツは例外だ。告白する女子の気が知れない。』
宏『それもそうだ…ところでさ、どうでもいいけど、玄関で立ち話はやめようぜ?疲れるから。』
彰『そうだな、立ち話なんて面倒くさい。』
玄関での話しを一区切りしたところで、2人はリビングに向かった。