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エイドス……計画通りに行くぞ

 水の吹きあがる噴水を背に、しばらく歩いた先。


 そこに目当ての場所はあった。


 ブーツと剣が交差する紋章を掲げた建物――冒険者ギルド。


 名は『鉄の槌旗亭』。


 この街には、いくつか冒険者ギルドがある。


 だが、他は登録料以外にも色々と必要だったり、ブラックな噂も絶えない。


「エイドス……計画通りに行くぞ」


『イエス、マスター・レン。カメラレンズの方向に注意をしながら、中に入って下さい』


 無骨な黒鉄の扉を開ける。


 重い。


 冒険者登録料は、五〇〇ペルリらしい。


 もちろん、そんな無駄金を払う気はない。


 喉が渇くな。


 無料の給水所の水を口に含み、ラウンジからメンテナンス場へと歩く。


 首に巻いたチョーカー――擬装カメラが捉えた光景が、エイドスの演算回路へと吸い込まれていく。


(これ、バレても大丈夫なのか?)


 周囲の冒険者たちの視線、職員の動き。


 全部が、俺を訝しんでいるように感じる。


 とりあえず、ギルドを一周。


 再び外へと出た。


「どうだった?」


『解析完了。このギルドは現在、装備の「予期せぬ損耗」により機能が大きく低下しています』


 エイドスの声が響いた。


『粗悪な武器を手にしている者が多くいました。また販売されている装備品は、多くが品質の低いものです』


「……なら、方針は決まりだ」


 俺は思考を切り替えた。


 再びギルドの扉を押し開けた。


 やっぱ重いな。


 まず向かったのは売店だ。


 女性販売員が、カウンターで店番をしていた。


 おあつらえ向けに、暇そうに爪を磨いている。


 ちょうどいい。


「少し、よろしいですか?」


 いくつかの「約束」を取り付ける。


 次に彼女を連れて、併設された鍛冶場へと踏み込んだ。


――熱波。


 肌を焼く空気。


 鼓膜を直接揺さぶる鉄打音。


 視界の端には、折れた剣が山積みされている。


 その手前には、巨漢の男がいた。


「彼がバッカスですか?」


「ええ。そうです」


 女性販売員の確認がとれた。


「いい仕事ですね。……店に置いてあるのは『鈍ら(なまくら)』の見本なのに」


 バッカスの手が止まる。


「あぁ!? 何だと小僧。俺の打った剣が鈍らだと!?」


 怒気。


 鍛冶場の熱気よりも、暑苦しいな。


「剣を見せて差し上げてください」


 販売員が、店に置いてあった一振りの剣を差し出す。


「この剣の重心ですが、〇・三ミリ右にズレている。分かりますよね?」


「なに言ってやがるっ、そんなハズは……」


 鼻で笑う。


 しかし、顔色はすぐに変わる。


 バッカスが店員から強引に剣を奪い取った。


「……これは」


 静寂。


 職人の目に狂いはなかった。


「ガキ、お前は鍛冶の経験でもあるのか」


「少し違和感があっただけですよ。それよりも……」


 深く追及されたら面倒だ。


 早く本題に移るとしよう。


(エイドスの言ったことを、そのまま口にするだけだが)


「三回も振れば刃こぼれをする作りですね。『修理費で稼ぎたい』人でもなければ、こんなのを売りはしません。そうは思いませんか?」


「どういうことだ!」


 怒号が鍛冶場を震わせる。


 店員を見る目が険しいな。


「彼女に問題があったのなら、わざわざ剣を差し出しませんよ」


「あぁ、そうだな。すまん……。俺の剣がすり替えられたのか……いや、そんなことは」


 バッカスの困惑は表情だけで分かった。


(なるほど。彼は知らなかったか)


「剣をギルドにそのまま渡したのなら、販売されるまでの間に、別の剣に入れ替わったと考えるべきでしょう。……マスターに直接確認するのが一番早いのでは?」


 ギルドの本館へと、バッカスの視線が向けられた。


「……チッ、あいつ、いい加減な仕事をしやがって!!」


 怒り狂っているな。


 彼は地響きを立てて歩き出す。


 だが、その前にやってもらうことがある。


「売り物の剣をすべて確認しませんか。問題があれば、売るのを止めないと危ない」


「……そうだな。その通りだ!」


 売店へと引き返す。


 バッカスは、陳列された剣を一本一本、ひったくるように手に取って確認していく。


「くそっ、……これもか。これも……!」


 確認するたび、彼から漏れる声の怒気が増していく。


 やがて、彼はそれらすべてを乱暴に店の奥へとひっこめた。


 売られていたのは、すべて『鈍ら』だった。


 鬼のような形相とは、今のバッカスのためにある言葉だろうな。


最後まで読んでいただきありがとうございます!


面白い、続きが気になると思っていただけた方へ。


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