コボルト討伐
今日は朝からギルドの訓練場で魔法の練習だ
的に向っていろいろ魔法を試してみる、
ファイヤーアロー
ひょろひょろと火の矢が的の右上に逸れていった。
フリーズアロー
氷の矢が床に刺さってしまった。
「なんでぇぇぇぇええ」
思いっきり上を見上げて叫んだ。
「集中力が足りてないからだとおもいますよ?」
後ろにいつのまにか受付嬢さんが立っていた。
「なるほど・・・でも上達が遅くて焦ります、ほんと」
「訓練をしていれば、時機にうまくなりますよ。」
ギルドカードを確認するレベルアップするとステータス画面で自動的に通知がくるそうなので今のうちに設定をしておくことにした。
ギルドカードに自分自身を触らせるとデータが自動的に更新された。
「これでよし」
早速レベル確認機能を使ってみる。
【ステータス】
名前:ユート・エル
種族:ハーフ精霊
年齢:10歳(体のみ)
HP:21/21
MP:92/100(New)
レベル:7(New)
スキル:
・剣術LV1
・言語翻訳
・アイテムボックス
・生活魔法(発火、浄化、飲み水、照明)
・鑑定
・精霊膜LV2
・回復魔法LV1
称号:
・異世界転生者
・小鈴の友人
・紅葉の友人
おお、MPがいつのまにか増えているぞ!
「よし、もっと頑張ろう!」
近接戦闘は
レッサーパンダのように舞い、
猫のようにぱんちをくりだずが、あまり練習にならない。
改めて魔法の練習に励んだが成果はイマイチ。
昼過ぎにギルドに戻るとティナが待っていた。
「新しい依頼があるよ」
彼女に促されて掲示板を見る。
【Eランク依頼】
内容:コボルト討伐
報酬:銀貨12枚
詳細:指定区域内の魔物討伐
対象レベル:7以上推奨
「ちょうどレベル7になったし」ティナが目を輝かせる。
「これはチャンスかも」
受付で手続きを済ませてすぐに支度を始めた。
「今回は魔法中心に戦おう」
「了解!」彼女は短剣を確認する。
---
依頼の場所は町の外れにある草原だった。
「準備はいい?」ティナが緊張した面持ちで確認する。
「うん」
草原に入ってすぐにコボルトを発見した。
「静かに」ティナが唇に指を当てて制止する。
葉陰から姿を現したのは小柄な獣人だった。
毛並みは灰色で耳が大きく垂れている。
体躯は少年くらいだが腰巻き姿で手には木の棒を持っている。
特徴的なのは愛嬌のある大きな黒い瞳と小さな口元。
「か……かわいい……」
思わず声に出してしまうほど無邪気な風貌だった。
想像していた狂暴な魔物とはかけ離れた姿に呆然とする。
「コボルトってこんなに可愛かったの?」
ティナも同様に驚いているようだ。
敵は警戒した様子で周囲を見回しているが殺気は感じられない。
むしろ好奇心いっぱいの表情で鼻をヒクヒクさせている。
「ユート……なんか倒すの可哀想になってきたよ」
彼女の言葉に強く共感する。しかし依頼は依頼だ。
「それでも依頼は果たさないと……」
決意を固めたその時。
突然コボルトがこちらに気づき甲高い声で鳴き始めた。
「くぅん!くぅーん!」
まるで助けを求めるように鳴く様子に胸が締め付けられる。
しかも逃げるどころか恐る恐る近づいてきてさえいる。
「どうしよう……攻撃できない」
握る手が震える。このままでは任務失敗だ。
「仕方ないよ」ティナが短剣を構えた。
「早く終わらせないと他の魔物が集まってくるかも」
「うん……」
腹を括り魔法の詠唱を始めた。
「ファイヤーアロー…」
しかし火の矢は小さく弱々しいものとなった。コボルトの足元に着弾するが効いていない。
逆にコボルトは興味深そうに煙を嗅ぎ始めた。
「こんなことじゃ……」
もう一度手を構えるが手が動かない。
「ティナ、代わりにやってくれない?」
「いいけど……私も正直辛い」
二人とも躊躇している間に新たな動きがあった。
茂みから別のコボルトが現れたのだ。
こちらは痩せていて毛並みも粗雑。明らかに飢えた様子だった。
「きゃうん!」
新たな個体が威嚇するように唸り始める。
この状況なら攻撃しても罪悪感は少ない……かもしれない。
「今度こそ……ファイヤーアロー!」
少し大きな火の矢が痩せたコボルトを直撃し、ティナが短剣を突き刺た。
コボルトは悲鳴を上げて倒れた。
残されたのは最初の愛らしい個体だけとなった。
「くぅ……くぅん……」
震える体でこちらを見上げる姿に胸が痛む。
「これで終わりだよね……?」
「一匹で充分だよ」ティナが目を潤ませながら答える。
愛らしい個体のコボルトはこっちをじっと見ている
「おいでおいで」とティナが手招きをすると嬉しそうに近寄ってくる。
「かわいい~」ティナが抱きしめる。
コボルトは頭を撫でられてとても喜んでいるようだ
「これ、家で飼えるのかな?」とティナが冗談交じりに言う。
「さあ?」
とりあえず痩せていたほうのコボルトをギルドに納品することにした。
「やっぱり可愛かったね」帰り道ティナが言った。
「うん、でも二度と戦いたくないな」
「同意見」
受付で事情を説明すると案の定同情されてしまった。
「あの種族は通常温厚なんです。討伐対象になっているのは極一部だけで」
「えっ!?」二人同時に声を上げる。
「稀に凶暴化する個体がいるのですが……今回はそれだったのでしょう」
何はともあれ無事に依頼を完了することができた。
報酬を受け取りながら今後の課題を話し合う。
「次はちゃんと魔物っぽいのを選びたいね」
「同感」
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