表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/67

ギルマス3

宿屋の前でリリアと別れ、部屋に入る頃にはすっかり陽も沈んでいた。

「明日は素材の売却だな」

俺がベッドに腰掛けながら言う。素材の持ち帰りができるのはアイテムボックス様様だな。通常であれば台車用意するかポーターを雇わなければならないからな。

「そうですね」小鈴が魔法陣の準備をしながら答えた。「オーガの素材は高値で売れますから」

宿の外を見た。魔法の光が夜道を照らしている。魔法の光が結構きれいだ。


「とりあえず今夜はしっかり休んで……明日からまた頑張ろうぜ!」

俺の言葉に二人は頷いた。


明日は久しぶりに討伐依頼とか神殿での依頼を受けるのもいいかもな


「みんな、お疲れ様です!」

小鈴が穏やかに挨拶する。宿屋の一室では、今日の冒険を終えたばかりの俺たち三人が、簡単な夕食を囲んでいた。

「今日は予定外の収穫があって、ホントにラッキーだったよね!」

ティナが満面の笑みを浮かべながら、オーガの焼肉を頬張る。その口の周りにはソースが付いていて、見てるこっちまで幸せな気分になってしまう。

「リリアのおかげだな」

俺も肉を一切れ口に運びながら言った。「まさかあんな凄腕の狩人が同行してくれるなんて思わなかった」

「えへへ、実はね」

ティナが得意げに鼻を鳴らす。「ギルドマスターはちゃんと戦闘能力も評価されるんだから!」

「そうなんですね」小鈴が目を丸くした。「妖狐族にはあまりそういった制度がないので、勉強になります」

「でもさ、あの中二病モードだけは勘弁してほしいよな……」

俺が冗談めかして言うと、二人も声を合わせて笑った。

その時だった。コンコンとドアをノックする音が聞こえた。誰だろう?

「はーい」

ティナが立ち上がって扉を開ける。そこに立っていたのは……黒いローブに身を包んだリリアだった。しかも例の中二病ポーズ付きで。

「闇の眷属よ」彼女が低い声で語りかけてきた。「今宵は真の祝福を授けん」

「うわぁ……また始まった」ティナがげんなりした表情になる。「普通に"晩ごはん一緒に食べるよー"って言えばいいじゃん」

「否!」リリアが大きく首を横に振る。「これは古の盟約に基づく儀式なのだ!」

小鈴が困惑した様子で耳を震わせる。「えっと……リリアさん、本当に来たんですね……」

「左様。我らの絆を確かめるためにな」リリアがさらりと流し目を送ってくる。「さあ、供物を捧げるがよい」

「供物って……オーガの肉のことか?」

俺が呆れ気味に言うと、リリアは満足げに頷いた。

「そう、それは地上における聖なる糧なり。されど我にとっては……」

突然、リリアの背後から巨大な闇の渦巻きが出現する。宿屋の天井が透けて見える演出付きだ。

「真の試練の始まりを告げる前触れに過ぎぬ!」

「それって……」ティナが眉間に皺を寄せる。「単なる腹減ってて早く食べたいってことじゃないの?」

「その通りだ!」

リリアが両手を広げて宣言すると、闇の渦巻きが霧散した。そして元の姿に戻った彼女が恥ずかしそうに微笑む。

「もう、バレちゃった……」

「やっぱそういうことだったんだ」俺は苦笑いしながら席を一つ空ける。「さあ、座って座って」

「ありがとう!」リリアが嬉しそうに椅子に座る。「オーガの肉って、実は大好きなの」

「じゃあ、いただきます!」

四人で夕食を囲む。リリアは次々と肉を平らげていき、その食べっぷりに三人とも思わず笑ってしまう。

「やっぱり冒険の後のご飯は最高だね!」ティナが元気よく言う。

「そうだな。みんなで食べると一段と美味しく感じるよ」

俺も同意しながら、窓の外に広がる魔法の夜景を眺めた。遠くの塔ではまだ灯りが灯っている。きっと多くの人がこうして夜を過ごしているんだろう。


「ふぅ……お腹いっぱいだよ〜」

ティナが満足そうに背伸びをする。リリアも意外と健啖家で、かなりの量を平らげていた。


「このオーガの焼肉、すごくおいしいですね」

小鈴がお皿に残ったソースをパンで拭いながら言う。


「そうそう!」


リリアが頷く。彼女の目はいつもよりも緩やかで、どこか解放されているように見えた。


「実はさぁ」


グラスの水を一口飲んでから、珍しく彼女が言いにくそうに続けた。


「ギルドマスターって……思ったより大変なんだよね」


「え?」


三人がほぼ同時に聞き返した。


「毎日毎日机に向かって書類とにらめっこ。時には街の有力者と政治的な駆け引きも必要だし……」


リリアは遠い目をして窓の外を見る。


「たまにはこうやって……自然の中で泥に塗れたり、モンスターと直接対峙したり……単純に楽しいことしたいって思うの」


「あ〜分かる分かる!」


ティナが同情的に身を乗り出す。「大人になると自由時間が減るもんね」


「だから薬草採取みたいな単純作業が好きなんだ」


リリアは少しだけ肩を竦めた。


「細かい計画もなく、ただひたすら歩いて草を集めるだけ。それが意外と心を落ち着かせてくれるの」


「そういうことだったんですね」

小鈴が理解したように頷く。「リリアさんはむしろ実務タイプなんですね」


「そうなんだよね……」


彼女はため息混じりに言う。


「この中二病ポーズもストレス発散みたいなものかな。役を演じてる時は……一時的にだけど別の自分になれるから」


「ちょっと待って」


俺が茶化すように言う。「じゃあ普段の中二病は演技なんですか?」


「半分はね」


リリアがウィンクする。「残りの半分は……趣味?」


「趣味かよ!」


ティナが大笑いする。


「でも本当にね」

リリアが真面目な表情に戻る。「こういう時間があるからこそ、また明日からの仕事が頑張れるんだと思う」


部屋の中が一瞬静かになり、暖炉の炎だけがパチパチと音を立てている。


「さて!」


リリアが急に立ち上がった。「明日はどんな依頼を受けようか考えてる?」


「明日は久しぶりに討伐依頼をしようかと思ってます」と俺が答え、「あと、神殿での依頼も考えてますが」と付け加える。


「あら……」


リリアの眉が微かに上がった。


「明日は……残念ながら同伴できないわ」

彼女はゆっくりと髪をかき上げながら言った。その動作には先ほどのリラックスした雰囲気はなく、むしろどこか公式の場のような硬さがあった。


「そうですか……」

小鈴が少し寂しそうに耳を垂らす。


「実は明日は」


リリアの表情が一瞬だけ曇る。


「王都から使節団が到着する予定なの。ギルドマスターとして正式な迎賓儀礼を執り行わなければ」



「えー!明日も焼肉祭りだよ?」

ティナが残念そうに口を尖らせる。


「それはまた後日に……」

リリアが申し訳なさそうに手を合わせる。


「分かりました。お仕事なら仕方ありません」

俺が頷く。ギルドマスターとしての責務は理解できる。


「でもね」


リリアが急に姿勢を正した。


「あなたたちに一つだけ注意しておきたいことがあるわ」


彼女の視線が三人の顔を順番に捉える。その眼差しは普段の冗談めいた口調とは異なり、真剣さを帯びていた。


「最近、他の地域では魔物の被害が増えているのは知っているよね、ここの地域でもそうなるかも知れないから注意してほしいの」


リリアの表情が一層厳しくなる。

「特にこの辺りは薬草の採取地だから重要なのよ」


その言葉に俺たちは身を固くした。確かにここ数週間、他国から魔物の襲撃に関する報告が増えてきていた。ギルドでも護衛依頼が急増している。


「私たちも気をつけないとダメですね……」

小鈴が静かに答える。彼女の三本の尻尾が緊張からかわずかに膨らんでいた。


「ええ」

リリアは深く頷く。

「それにしても不思議なのよね……」


彼女は窓際に歩み寄り、夜空を見上げた。月明かりが彼女の横顔を優しく照らし出す。


「なぜ一部の地域は魔物の被害がすくないのか……」

リリアの言葉には学者のような思慮深さが滲んでいた。普段の中二病的な言動とは対照的な表情だ。


俺はその言葉を噛みしめる。確かに彼女の言う通りだ。一部の地域では被害が激しく他は被害が少ない場合がある。


「それについて研究してる人がいるんですか?」

俺が質問するとリリアは小さく首を振った。


「まだ初期段階だけどね」

彼女は窓から離れ、再び椅子に腰掛ける。

「今現在わかっているのは、妖狐族、妖精族、エルフ族の村がある地域は被害がすくない所ね、他の地域は魔物の被害が増えている」


リリアの言葉には決意が込められていた。普段はコミカルな振る舞いが多い彼女だが、このような真剣な面を見せられると改めてギルドマスターとしての責任感を感じさせる。


「さて」

リリアが気持ちを切り替えるように明るい声を出した。

「今夜はゆっくり休んで明日に備えてね!」

彼女は立ち上がり、服の埃を軽く払った。その動作一つ一つにどこかぎこちなさが残っていた。


「ありがとうございました」

三人が同時に頭を下げる。


リリアは照れたように小さく手を振った。

「いいのよ。私も楽しかったし」


ドアに向かう彼女の背中からは疲労が滲み出ていた。それでも最後まで笑顔を崩さずに立ち去っていく。その姿を見送りながら俺は思う—普段からこのような重圧に耐えながら生活しているのだなと。


部屋に戻ると小鈴とティナも似たような心境なのかしばし無言だった。ティナがふと口を開く。


「リリアさんって普段あんなふざけてるけど本当は大変なんだね……」

「うん」

小鈴も同意する。

「もっと配慮すべきだったかもしれません……」


俺も黙ってうなずいた。次の日どんな依頼を受けようとも彼女の苦労に報いるような結果を残したいと思った。それができるかどうか不安はあるものの今は前向きに行こうと思うしかない状況だった……


翌朝 目覚めた三人だったがそれぞれ昨夜と同じ格好をしていることに気づく。誰か一人でも違和感を持つことなく日常が始まると思っていたところ意外にも違う服装であったことに少なからず驚きを感じていたであろうところだった



ご購読ありがとうございまする

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ