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ギルマス3

「おはようございま~す!」


朝靄が漂う森の入り口で、ティナが元気よく手を振った。リリアの姿があった。今日は黒いローブではなく、普段着のような簡素なワンピース姿だ。


「今日もよろしくね」リリアが穏やかに微笑む。その笑顔は昨夜の中二病モードとは別人のようだ。


「本当に同じ人なんでしょうか……」小鈴が小さく耳打ちしてきた。


「まあまあ」俺は苦笑いしながら荷物を背負い直す。「ギルドマスターって公務以外は普通に過ごす人も多いらしいぜ」


森に入るとすぐに薬草探しを始める。リリアは案外詳しくて、


「あ、この赤い葉は止血効果があるんだ」

「こっちの青いものは解毒剤の材料になるわよ」


と的確に指示をくれた。


「リリアさんって薬草に詳しいんですね!」ティナが感心する。


「昔取った杵柄よ」リリアが謙遜する。「昔はよく冒険中に怪我した仲間の治療してたから」



しかし昼過ぎ―


ガサガサッ!


茂みが激しく揺れゴブリン達が現れた。5匹はいるみたいだ。


リリアが鋭く叫ぶと同時に弓を構えた。例の魔弓『雷迅の弦月』だ。矢が番えられると青白い閃光が走る。


「みんな下がって!」リリアの声が鋭くなった。


シュッ!ズババババーン!


雷撃をまとった矢が一直線にゴブリンを貫通、さらに木々に反射しながら3匹を仕留めた。残り2匹も俺の剣とティナの蹴り技であっさり撃退。


「すごい……」ティナが目を丸くする。「今の攻撃パターン……昨日のパフォーマンスとそっくり!」


「偶然よ偶然」リリアがはにかみながら矢筒を背負い直す。「ほら、早く薬草探しましょう」


収穫は順調で籠いっぱいになった頃、リリアが突然歩みを止めた。


奥にはオーガが見え隠れしていた。だが、リリアが矢を放った途端、シュ・・スパーンとオーガの胸板を矢が貫通した。


「すげぇ・・・」俺は息を呑む。「一撃でオーガを仕留めるなんてすごいです、俺たちじゃ傷すら付けられないのに・・・」


「オーガは素材になりますからね。あとは、魔石かなぁ」リリアがにっこりと笑った。「皆さんも手伝ってくださる?」


「もちろん!」ティナが嬉しそうに手を挙げる。


「私も協力します」小鈴が静かに同意した。三本の尻尾が期待に揺れている。


俺も頷いた。「手伝わせてください」


リリアが嬉しそうに微笑む。「ありがとう。では、まずは解体から始めましょうか」


三人で分担して作業を進めることになった。ティナは興味津々な様子でオーガの死骸を調べている。


「よく見てもすごいね、胸板に貫通跡があるだけで、他は傷がないよね。これ革のランクBとかつくんじゃない?」


リリアは誇らしげに胸を張る。「これが私の得意技なの」


俺はその言葉を聞きながら感心していた。こんな凄腕の狩人がいるなんて思いもしなかったからだ。


「さすがですね」俺は率直に賞賛した。すると彼女は少し照れたように頬を赤らめた。「そんなことないわよ……」と言いながらも嬉しそうな表情を浮かべている。


そして小鈴が口を開く。「でも、これだけの威力があれば冒険者として活躍できますよね?」その言葉にリリアは少し困ったような表情になる。


「確かに……でも私はギルドマスターとしての責務もあるから」どうやら彼女には色々事情があるらしい。


それ以上追求することは避けた方が良さそうだと思った。その後も順調に進み、夕方までにはすべての工程が完了した。


帰路につきながら夕陽を眺めているとふと気になることがあったので聞いてみることにした。


「ところでリリアさんはどうしてこの仕事を選んだんですか?」


すると彼女は優しく微笑みながらこう答えたのであった―

「それは秘密ね♪」と言っていたものの目元には涙が浮かんでいるように見えた気がしたけれど気のせいだろうと思い込みつつ再び歩き出すことにしたのだった――


「薬草も採取できて、オーガの素材もゲットできて、今日は大成功ですね!」ティナが嬉しそうに尻尾を振る。


「そうだな。リリアさんのアシストもあって早く済んだし」俺は荷物を背負い直す。


「オーガの肉って美味しいですよね」小鈴が控えめに言う。狐耳が嬉しそうに揺れている。


「今夜は盛大にオーガの肉で焼肉だね!」ティナが拳を突き上げた。


「私も参加していいかしら?」リリアが遠慮がちに聞いてきた。


「もちろん!」ティナが即答する。「みんなで食べた方が美味しいもんね!」


「ありがと。じゃあギルドで雑務を片付けてから向かうわね♪」リリアがにっこり微笑む。


その時、彼女の目つきが微妙に変わった。


「あーっと……」


突如、彼女の全身から黒い霧のようなものが立ち昇る。ローブが勝手に変形し、闇色の装束へと変貌した。右手には例の魔弓が現れる。


「ギルドマスターの力を借りることなく成し遂げた功績を讃えよう……」


低い声で呟きながら片膝をつく。


「我が同胞よ、今宵は祝宴とするがよい。ただし……」


一瞬で中二病モードに移行していた。


「我との対話を望む者は明朝、《冥府の門》にて待つべし。覚悟はよいか?」


ティナがぽかんとする横で、小鈴が冷静に口を開く。


「それって普通にギルドに来て欲しいってことですか?」


「然り!」


リリアが勢いよく立ち上がる。その拍子に変身が解除され、元のリリアに戻った。


「……あら?私ったらつい癖で……」


顔を真っ赤にしながら俯く。


「まぁいいや!とにかく今夜はオーガ肉だよ!」


ティナが元気よく宣言すると、一同は笑顔で森を後にした。


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