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容赦ない先生

三日後、準備を整えた俺たちは町外れの森へ向かった。今回は弓矢も用意してある。罠の設置ポイントを見極めながら進むと、ティナが急に身をかがめた。

「あそこに」


木々の隙間を小さな動物が通り過ぎていく。おそらくイノシシの子供だろう。

「罠を仕掛ける?」ティナが小声で聞く。

「待って」俺は息を殺した。「親が来るはずだ」


案の定、大人のイノシシが現れた。大きな牙と突進力を持つ相手だ。。

「私が囮になる」ティナが提案した。

「危険すぎる」

「大丈夫」彼女は短剣を構え身体強化を使った


 迫り来る巨体から吹き荒れる殺気に肌が粟立った。ティナが必死に身をかわすが、イノシシの鼻面が彼女の腿をかすめる――鮮血が散った。


「ティナ!」

 怒号と共に足が勝手に動いた。体内で何かがが循環するような感覚がする。手足の表面に薄い膜のようなものが感じられる


イノシシを木刀で殴りつける、どうやら木刀も薄い膜で覆われているようだ。

イノシシの頭を滅多打ちにする


「ブギィイ」イノシシが昏倒する


【ステータス】

名前:ユート・エル

種族:ハーフ精霊

年齢:10歳(体のみ)

HP:13/15

MP:55/70

レベル:3(+1)

スキル:

・剣術LV1

・言語翻訳

・アイテムボックス

・生活魔法(発火、浄化、飲み水、照明)

・鑑定

・精霊膜

称号:

・異世界転生者

・小鈴の友人

・紅葉の友人


「大丈夫?」ティナに駆け寄ると彼女は膝をついていた。

「大丈夫……痛いけど」彼女の表情が歪む。流血が止まらない。

「すぐに治療する」


バッグからポーションを取り出し傷口にふりかけた。

淡い光が傷を癒していく。

「ありがとう」彼女はほっとした顔を見せた。


痛みが引いていくようでよかった。


ギルドで納品を済ませると受付嬢が驚嘆の声をあげた。

「こんなに大きいのは久しぶりです」彼女は目を輝かせた。

「運が良かっただけです」謙遜する。

報酬の銀貨を受け取るとティナに分けようとした。

「いいよ」彼女は首を振った。「私の負担の方が大きかったし」


「でも……」

「じゃあ次回のお昼ご飯をおごってね」彼女は微笑んだ。


銀貨を半分ずつ分け合う。

「今日は本当にありがとう」ティナが礼を言う。

「こちらこそ助かったよ」

「また一緒に依頼をこなそうね」

「もちろん」握手を交わした。


その夜、宿の部屋で精霊膜を試してみた、どうやら魔力で身体や武器が強化されるようだ

すこし体も頑丈になった気がする


次の朝、ギルドに行くと新人指導を担当している教官から呼び止められた。


「ユート! そろそろ魔法を習ってみないか?」


彼は期待に満ちた眼差しを向けてきた。


「魔法ですか?」思わず聞き返す。


「ああ」教官は頷いた。「生活魔法以外にも使えるものがあるかもしれない」


そういえばこの世界には様々な魔法がある。攻撃・回復etc……。だが俺はステータス欄に『生活魔法』しか表示されていない。


「試してみたいです」


教官は嬉しそうに肩を叩いた。

「よし、なら講習を受けるがいい」


彼の案内でギルド裏の訓練場へ移動した。他にも見習いと思われる子供たちが集まっている。

「今日は特別授業だ」教官が宣言する。

「魔法について勉強する?」ティナが興味津々で近づいてきた。


「うん」教官に連れられて訓練場へ向かうと既に何人かの受講者が準備運動をしている。


「皆さん、今日は基礎魔法の理論と実践を行います」教官が説明を始めた。

「まずは魔力の流れを感じることが重要です」


全員で座禅を組む形で集中する。体内を巡る不思議な波動を感じ取ろうとするがなかなかうまくいかない。


「ユートさん」隣に座ったティナが小声で話しかけてきた。「どう?感じられる?」


「ううん、難しいよ」

「私も同じ」彼女は苦笑した。


教官が一人ずつチェックしていく。

「もう少し呼吸を深くしてみなさい」俺の背中をポンと叩く。



「ユートくん!」教官が声を上げた。「君は前衛にはあまり向かないね。魔力量も高いし生活魔法以外でも使えそうだよ」

「そうですか?」思わず聞き返す。

「そうだな」彼は腕を組んだ。「まずは水魔法から挑戦してみよう」


教官の指導で水滴を作り出す練習を始めた。指先に意識を集中させる。

「魔力を細く絞るようにイメージするんだ」教官が助言する。


汗が滲むほど集中すると、ようやく小さな水玉が浮かび上がった。

「出た!」ティナが歓声をあげる。

「まだ小さいが、感触は掴めたようだな」教官は満足げに頷いた。


練習を重ねること2時間。ついに「ウォーター」と唱えると手のひらから水球が現れた。

「おめでとう」教官が拍手する。「初歩の初歩だが立派な成果だ」


「ありがとうございます」達成感に胸が熱くなる。


その後も火や風などの属性に挑戦したが、それなりに使えるようだ

訓練の最後に教官が紙切れを渡してきた。

「これが君の適性判定結果だ」


【魔法適性診断結果】

名前:ユート・エル

属性適性:

全属性

魔力量:高

成長率:高


「全属性?すごい!」ティナが目を丸くする。

「確かに珍しいな」教官も驚きを隠せない様子だ。


「どういうことですか?」

「君は全ての魔法属性に適性があるということだ」教官は説明した。「ただし今は制御が甘いから、特定の系統を磨くのが良いだろう」


「分かりました、そうします」


帰宅後、自分の部屋で魔力操作を反復練習した。

明日から本格的に魔法の勉強だな。そう考えるとワクワクして眠れなくなる。


深夜まで机に向かい参考書を読み漁った。


翌朝早くからギルドの資料室に籠った。

魔法体系に関する古文書を読み解きながらメモを取る。ティナも隣で同じく学習している。


「ユート、ここの文法おかしくない?」彼女が疑問を投げかける。

「本当だ」二人で首をひねる。


資料室の司書さんに尋ねてみると丁寧に解説してくれた。古代語の言い回しや魔法理論の基礎について教わる。

「魔力は体内で練り上げられると、自然の理に沿って変換されます」司書は図示しながら説明する。

「つまり生活魔法も応用次第で強い火力や水流を生み出せるということですか?」質問してみる。

「まさにその通り」司書は頷いた。


それから毎日のように資料室に通い詰めた。ティナと一緒に知識を蓄えていく。

半月後にはいろいろな属性の魔法が使えるようになった。とはいえ威力は低いが、日常生活では十分だ。


「教官、回復魔法はどこで教えてもらえるのですか?」

「それなら神殿だね。寄付をすれば教えてくれるよ。回復魔法の習得は難しいらしいけど、君たちならきっと大丈夫だ」




 昼ごはんを適当に済ませたあと神殿に向かう。この世界の一日は朝日が昇ってからスタートするから午前中が結構長い。朝食を食べて2人でギルドで依頼を確認し、訓練をしてから神殿に向かった



 神殿というと石造りの神殿を思い浮かべるがここは普通の建物だった。ただ奥に石造の像が建っている。ここの神様だろうか。元女神エーテル・エルメキダに似ているように感じる、。何人か人がいたが、お祈りをしてたり、よくわからない作業をしていた。神様って言ってたし本人かもしれないな。眺めていると神父らしき人が声をかけてきた。




「神殿へようこそ、冒険者の方。何か御用ですかな?」




「はい、ここで回復魔法を教えていただけると聞いて」




「そうですか、では回復魔法を使える神官のところへ案内いたしましょう」




 一度神殿を出て隣の建物に向かう。ロビーには怪我人や具合の悪そうな人が座っていた。神父さんに連れられさらに奥へ入っていく。




「こちらがシスターフィーナです。ではフィーナ、よろしくお願いしますよ」




 そう言って神父さんは去っていった。シスターフィーナは金髪で長い髪をしたクール美人でたぶん30歳くらいだろうか。背は160cmほど。白を基調とした質素な服に身をつつんでいた。




「よ、よろしくお願いします」「よろしくお願いします」




 シスターのクールな視線にちょっと戸惑った。シスターが近寄ってきて体をぺたぺたと触ってきた。



「あ、あの、な、なにを」




 満足したのか、離れてくれた。


「魔力はそこそこありそうね、そちらの女の子も問題なさそう、魔法は使えるの?」


「生活魔法ならなんとか」


「なるほど、なら魔力の使い方は問題なさそうね」とシスターフィーナ


ティナもシスターフィーナを見つめながら


「私も回復魔法は覚えたいです」彼女は真剣な眼差しだ。


「二人とも、覚悟は良いですか?」シスターフィーナが確認する。


「もちろんです」「はい!」


「では始めましょう」


フィーナ先生がナイフを取り出してこちらの手首をつかんで、手のひらをサクっと刺した。

「なにするんですか!!」


傷口から血がぽたぽたと垂れる


「傷がないと治療の練習にはなりませんよ?、それに怪我を負った状態で集中して回復魔法を覚える練習にもなります。ささ、回復魔法を使うイメージイメージ」


手のひらがジクジクと痛んで魔力を集める集中がなかなかできない。


そもそも回復魔法の使い方すらまだわからないのだ。


「どうやって回復魔法をつかうのですか?」とフィーナ先生に聞いた

「傷口を覆うように魔力を集め、傷口がくっつくようにイメージをし、神に祈りながら集中します、慣れれば簡単な怪我ならすぐなおりますよ」とフイーナ先生


「!」


 フィーナ先生が手をかざすと痛みが徐々に消え、傷が消えた。




「どう?魔力の流れが見えた?・・・そうまだ足りなそうね、何度か試すしかないかな?」


 

今度はティナに向って、手首をつかんてで手のひらを刺した。



「よしよし、よく我慢したね。ではもう一度回復魔法をかける。よく見ておきなさい」




 集中だ、集中しろ、すべての力を魔力を感じることに結集するんだ。




「どう?」




「うーん、何か感じられたような……気がしないでもない」とティナ




 嘘じゃない。魔力が見えたような感じがする




「まあいいか。今度は指をだして。大丈夫、今度は指先にちょっぴり傷をつけるだけだから。」


 いやいや指を出すと指先をちくりとやられた。




「今度は自分で回復魔法をかけてみなさい」




 指先に魔力を集中して……回復魔法発動!……しなかった。




「魔力は発動してるようね。お茶をいれてくるから2人で練習してて」




 何度もやったけどうまくいかない。何が悪いんだろうか。生活魔法はあんなに簡単に。


ティナと向かい合いながら、回復魔法の練習をする。


 フィーナ先生がお茶を持って戻ってきたのでいただく。




「まあ一日でとか普通無理だから。わたしは魔法を使えなかったから半年かかったからね」




「半年!?」




「半年でも早いほうだよ。でも回復魔法を使えるようになったあと、他魔法を使えるようになったのは結構すぐだった」




 

「そもそも生活魔法を使えるんでしょう?魔力の流れを感じることができるはずだよ」




「あの、ぐさっとやる必要あるんですかね、先生。指先にちょっぴりやれば」




「痛くなければ覚えない。冒険者なんだから慣れる必要がある。さあ、大人しく手を開いて。」




 大人しく手をひらく。容赦なくナイフがささる。



「集中して。大事なのはイメージよ。傷が治る、傷のないもとの健康な体に戻ったことをイメージ」


そして、ティナにも容赦なく手のひらを刺した


「練習あるのみ!」


 大事なのはイメージ。水をお湯に変えるように、傷を治すのもできるはずだ。魔力を傷に集中するだけじゃなく、傷を治すイメージを心がける。失敗。


傷口がジクジク痛むが集中集中・・・・



 フィーナ先生の回復魔法を思い出しながら、手のひらに魔力を集中して……失敗。




 うーん、生活魔法とかは簡単なのになあ。



 再び手のひらを覆うように魔力を集中させる。治れ!その瞬間、発動したのがわかった。傷が治る。




 ステータスを確認してみると、回復魔法Lv1が増えていた。



【ステータス】

名前:ユート・エル

種族:ハーフ精霊

年齢:10歳(体のみ)

HP:15/15

MP:70/70

レベル:4

スキル:

・剣術LV1

・言語翻訳

・アイテムボックス

・生活魔法(発火、浄化、飲み水、照明)

・鑑定

・精霊膜LV2

・回復魔法LV1(NEW)

称号:

・異世界転生者

・小鈴の友人

・紅葉の友人


「おお」つい声が出てしまった。

「なにかあったの?」ティナが気遣うように尋ねる。

「回復魔法がLV1になった」

「すごいじゃない」彼女は羨ましそうに眺めた。


「さすがすでに魔法を使えると、覚えるのが早いね。」とフィーナ先生


フィーナ先生の指導は厳しかったが充実した時間だった。

ティナも回復魔法を覚えたようだ



「二人ともよく頑張りました」司祭が祝福してくれる。「これからも精進してください」


ギルドに戻ると受付嬢が嬉しそうに迎えてくれた。

「回復魔法を取得したんですね」

「はい」照れながら報告する。




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