初めてのゴブリン討伐
翌朝早起きした俺は講習の時間を確かめようと1階に降りた。ロビーには既に10名ほどの男女が集まっている。皆同じようにFランクのプレートを首から下げていた。
「おはよう!!」教官らしいマッチョの男が現れた。
「今日は基本的な戦闘技術を教えるぞ。」
見ると参加者はほとんどが少年少女。十代半ばから後半といったところだ。中には武器を持参した者もいる。
教官は木剣を構えながら説明を始めた。
「ゴブリンのような雑魚相手でも油断は禁物だ」
一人ひとり順番に木剣の素振りを指導していく。俺の番が来た。
「ほぅ?」教官は俺の構えを見つめると目を細めた。「体力が足りないな毎日走り込みをするといい」
「すみません」恥ずかしくてうつむく。
「いや」教官は首を振った。「魔力操作には才能がありそうだ」
講習は夕方まで続いた。受講者同士で模擬戦を行う実践パートも組み込まれている。対戦相手は同じ初級者の女の子だ。剣先がぶつかる乾いた音が響く。
結果は惨敗。最後は女の子の木剣が俺の肩を打ち、地面に転がった。
「まだまだだな」教官が苦笑する。
「すみません」情けなくて涙ぐみそうになる。
けれど受講者の女の子が手を差し伸べてくれた。
「大丈夫?」彼女の名札には《ティナ》と書いてある。
「ありがとう」
彼女はにっこり笑った。「初心者同士、仲良くしましょう」
教官が解散を告げると他の受講者も挨拶してくれる。帰り際、ティナが声をかけてきた。
「明日も来るよね?」
「もちろん」
「じゃあ一緒にトレーニングしない?」彼女は提案してきた。
「喜んで」
ギルドを出て宿へ向かう途中、先日の受付嬢が待ち構えていた。
「初心者講習、どうでした?」
「とてもためになりました」正直に答える。
「それは良かったです」彼女は一枚の依頼書を差し出した。「あなたにピッタリの案件がありますよ」
「はい?」
【Fランク依頼:街中ゴミ掃除】
報酬:銅貨15枚+道具レンタル付き
内容:町内のゴミ拾い
期間:毎日夕方~日没
「今日は休みですし」受付嬢は笑顔で勧めてくる。「怪我もしませんし、見習い冒険者にはそれなりに人気があるんです」
「分かりました、やってみます」
「決まりですね」彼女は嬉しそうに頷いた。「集合場所はギルドの裏口です」
その日から俺の日課が始まった。朝は走り込みや初心者講習。昼は街中を散策。夕方はゴミ拾いの依頼をこなし、夜は宿でティナと自主練習する日々。
次第に体力もつき、以前は重すぎた木剣を自在に扱えるようになった。
三週間が経ったある朝、ティナが意を決したように切り出した。
「今日、一緒にFランクの魔物討伐に行かない?」
「え?」思わず聞き返す。
「ゴブリンくらいなら今なら私達二人でやれると思うの」彼女は自信に満ちた表情だ。
「だけど……」
「大丈夫」ティナは微笑んだ。「私たち、もう見習いじゃないよ」
確かにFランクの魔物なら今の俺達の実力でやれるかもしれない。
「わかった、いこう」
「決まり!午後に町外れの森で待ってるね」
彼女の瞳が輝いた。
その日は午前の講習が終わると急いで支度を整え森へ向かった。空は晴天、木々の隙間から陽射しが差し込む。
「ユート!」ティナが手を振って迎えてくれた。
「待ってたよ」
「今日は絶対成功させようね」
森の中を歩くこと15分。茂みの奥で二匹のゴブリンを発見した。
【ステータス】
種族:ゴブリン
HP:30/30
レベル:7
特徴:痩せすぎ
二人で同時に動き出した。ティナの短剣が一匹の喉元を切り裂く。俺はもう一匹に木刀を振り下ろした。
断末魔の悲鳴。
初めての勝利の余韻に浸る間もなくティナが声をあげた。
「見て!レベルが上がってる!」
【ステータス】
名前:ユート・エル
種族:ハーフ精霊
年齢:10歳(体のみ)
HP:13/15
MP:60/65
レベル:2→3(+1)
スキル:
・剣術LV1
・言語翻訳
・アイテムボックス
・生活魔法(発火、浄化、飲み水、照明)
・鑑定
・精霊膜
称号:
・異世界転生者
・小鈴の友人
・紅葉の友人
レベルが一つ上がっただけでこんなにHPとMPが増えるのか?
「私も!レベルが上がった」ティナが自分のステータスを確認する。
【ステータス】
名前:ティナ
種族:人間
年齢:15歳
HP:18/20
MP:5/5
レベル:2→3(+1)
スキル:
・短剣術LV1
・罠探知LV1
・身体強化
「おめでとう」
「お互いね」彼女は微笑んだ。
ギルドに戻ると受付嬢が驚いた顔で迎えてくれた。
「ゴブリン討伐、おめでとうございます」
「ありがとうございます」二人で頭を下げる。
「ところで」彼女は一枚の依頼書を取り出した。「こんな案件もありますが」
【Fランク依頼】
ランク依頼:イノシシ肉調達】
報酬:銀貨5枚
内容:食用イノシシ肉の確保
対象:食用可能部位1頭分
期限:常時
「これなら二人で挑戦できそうですね」受付嬢は説明する。
「面白そうですね」ティナが目を輝かせた。
「よし」二人で顔を見合わせる。
「受けてみよう」
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