オーガの皮納品
そして夕暮れ時、ついに決行の時が来た。
「よし、いよいよ引き上げだ」と俺は指示を出す。小鈴が魔法陣を展開し、地面が揺れ始める。ゆっくりと、しかし確実に砂が動き始めた。
「土狐!」大量の砂が狐の姿となりどんどん穴から出てくる。「妖狐魔法ってすごいな」と俺は思わず感心して言った。
砂山が崩れ落ち、中から徐々にオーガの姿が現れてきた。その巨体は完全に窒息死しており、生命の兆候は一切感じられない。
「よし、これで任務完了だな」と俺は安堵のため息をついた。
「ハイ、皮もきれいな状態を保てたと思います。これなら高品質なものを確保できたはずです」と小鈴が自信を持って答える。三本の尾が誇らしげに揺れている。
「そうだね、この作戦は大成功だったね!」ティナも猫耳をピコピコさせながら喜ぶ。
俺たちは早速オーガの遺骸を小鈴のアイテムボックスに入れ帰路につく
「よし、これで依頼完了だな」と俺は満足げに言った。小鈴とティナも同様に満足そうな表情を浮かべている。
「ハイ、これなら職人ギルドも納得の出来だと思います」と小鈴が答える。彼女の三本の尾が優雅に揺れている。
その姿は堂々としており、今回の任務の成功を確信しているようだ。
「ティナの連携も完璧だったよ」と俺は彼女を労う。
「えへへ、ありがとう♪でも、みんなのおかげだよ」とティナは照れながら答える。猫耳が嬉しそうに動いている。
帰り道は比較的穏やかだった。行きと同じく数日かかる旅路だが、気分は晴れやかだ。オーガ討伐の緊張感から解放されたことで、自然と会話も弾む。
「帰ったら、砂糖を購入しに王都まで行きませんか?あのあんぱんの件もありますし」と小鈴が提案してきた。
「それ、いいアイデアだね!セレスも喜びそう」ティナが猫耳を立てて賛成する。
「・・・砂糖があれば他にもいろいろ作れるしな・・・ただ砂糖1キロ金貨1枚するのが難点なんだよな」と俺は考えながら同意する。
砂糖は薬扱いで貴重品だ。前世の記憶がある俺としては、甘味がこれほど貴重なものだとは思わなかった。現代の世界では当たり前に手に入る砂糖が、ここでは高級品扱いされている。
「砂糖かぁ……薬として扱われてるし、甘味と言ったら果物が一般だしね・・・」とティナが猫耳を揺らしながら言う。「でも金貨1枚って高いよね……」
「そうですね。ただ、セレス様へのお礼も兼ねていますし」小鈴が三本の尾を揺らして答える。
「そうだな。砂糖は少量でも贅沢品だ。少量買うだけでも大金が必要だが……」と話しながらギルドに到着した
「あんぱんを作るのに町の砂糖はかなり使ったしな・・とお疲れ様」俺はギルドの大きな扉を押し開けながら言った。
「お疲れ様でした」小鈴が三本の尾をゆらゆらと揺らしながら微笑む。
「早くマリーさんに報告しなきゃね」ティナが猫耳をピコピコさせながら促す。
ーーーーーーー
ギルド内はいつも通り冒険者たちで賑わっていた。依頼板の前には人だかりができており、受付カウンターではマリーさんが忙しそうに応対している。
「マリーさん!オーガの討伐依頼の報告に来ました!」俺は声を張り上げた。
マリーさんは一瞬で俺たちを見つけ、手を振った。「ユートさんたち!無事でしたか!すぐに解体場へお願いします!」
ギルド裏手の解体場へと向かう。そこでは既に専門の職人たちが待ち構えていた。巨大な台座があり、彼らは期待に満ちた表情で俺たちを見つめている。
「おお、オーガの遺骸か」髭面のベテラン職人が腕を組む。
「まずは状態の確認をさせていただきますね」マリーさんが小鈴のアイテムボックスからオーガの遺骸を取り出すよう促した。
小鈴が静かに手を動かすと、彼女の影から巨大なオーガの姿が現れた。その巨体は落とし穴で窒息したはずで、皮膚にはほとんど傷がない。
「おお!これは素晴らしい!」ベテラン職人が驚嘆の声を上げる。「こんなに状態の良いオーガは久しぶりだ」
職人たちが慎重に検査を始める。彼らは皮を撫でたり引っ張ったりしながら評価を下していく。
「どうでしょうか?」俺は緊張して尋ねた。
ベテラン職人は満足げに頷いた。「文句なしのAランク品だ。しかも全体的に状態が良く、Sランクに近い品質と言ってもいい」
「これなら依頼主も大満足でしょう」マリーさんが嬉しそうに言う。
解体作業が始まり、職人たちは手際よく皮を剥いでいく。大きな台座の上で繰り広げられる作業は壮観だ。
「見事な技術ですね」小鈴が感心した様子で見つめる。
「私達じゃ傷すらつけられないのによく解体できるよね。」ティナが首を傾げる。
「おう、これが俺らの仕事だ。冒険者が持ち込む素材を丁寧にかつ速く解体する。それが俺らのモットーだ」
職人の親父が豪快に笑いながら説明してくれる。彼の手さばきは見事なもので、オーガの厚い皮がするすると剝がされていく。
刃物を振るう度に精密な動きで不要な部分を切り離し、高品質な素材だけを選り分けていく。
マリーさんが近づいてきて小声で説明してくれた。
「ユートさんたちの持ってきたオーガはすべて最高品質のSランクとAランクの素材になりました。依頼主も大喜びですよ」
「おいおい、こりゃ本当にすごい素材だぜ。ここまで綺麗なオーガの皮は滅多に見ねえよ」
職人は驚きを隠せない様子で作業を続けながら称賛の言葉を漏らす。その表情からは純粋な感動さえ感じられた。
「本当に素晴らしいですね……」マリーさんも感心した様子で近づく。「皮の傷も見当たりません」
「よかった……」俺は胸をなでおろす。「長時間の作戦だったけど、無駄にならなくて本当によかった」
「ハイ、これもみんなのおかげです」小鈴が優しく微笑む。
「そうだよ!ティナのおかげだよ!」猫耳をぴんと立てながらティナが言う。
俺は二人の頭をもふもふとしてやった。やはり獣耳はかわいい。
解体作業は順調に進み、夕方にはすべての処理が終わった。高品質なオーガの皮と肉が整然と並べられ、その壮観な光景に職人たちも満足げな表情を浮かべている。
「皆さんお疲れ様でした!」マリーさんが満面の笑みで俺たちに声をかける。「おかげで大変貴重な素材が入手できました」
報酬金の手続きを行い、俺たちは重い革袋を受け取った。ずっしりとした重みが手に伝わり、今回の成果を実感させる。
「これでしばらくはお金に困ることはなさそうだね」俺は革袋を眺めながら呟いた。
「ハイ、砂糖とお酒を買いに行けますね」小鈴が微笑む。三本の尾が嬉しそうに揺れている。
「砂糖で別の料理も試してみたいな」と俺は思案顔で言った。「例えば、シュトーレンとか」
「え?シュトーレンってなに?おいしそう!」ティナの猫耳が好奇心でピコピコ動く。
「乾燥果物やナッツを生地に練り込んで、ドライフルーツなどをふんだんに使ったパンケーキかな・・・」
「聞いただけで美味しそうですね・・・楽しみです!」小鈴が目を輝かせる。
「じゃあ、明日から王都に向かう計画を立てよう。砂糖とお酒、それから新しい食材も探してみよう」俺は提案した。
「うん、それがいいね!」ティナが大きく頷く。「どんな料理ができるか楽しみ!」
「ハイ、私も楽しみです」小鈴も三本の尾を揺らしながら同意する。
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