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オーガ対決

翌朝、セレスは約束通り俺たちのところに現れ、オーガの居場所を教えてくれた。今いるところから馬車で丸一日のところにある山岳地帯に群れがいると。


「ありがとう、助かったよ」と俺は礼を言った。


「いえ、それではご武運を」とセレスが淡々と告げ、そのまま姿を消した。


「さて、問題は単独でいるオーガが居るかどうかだな」俺は腕を組んで考え込む。


「まずは偵察からですね、単独でいるオーガが見つかったらその近くに落とし穴を掘りましょう」と小鈴が提案する。


「それじゃ、早速向かおうか」と俺が言うと、「はい!」「おー!」と二人が元気よく返事をした。


数日後、俺たちは目当てのオーガと遭遇した。幸い、群れから離れて単独行動をしていたようだ。これなら狙い通りに戦える。


「よし、作戦開始だ」と俺が合図すると、ティナと小鈴がそれぞれの位置についた。


獣人化を使ったティナが鋭い牙を見せながら「ニャ!」と一声上げて駆け出した。猫族特有の俊敏性と身体能力強化スキルを全開にしたティナは、まるで矢のように疾走する。その動きはまさに獲物を狩る野生動物のそれだ。


「グオオオオッ!!」


巨体のオーガは怒号を上げ、棍棒を振り回しながらティナを追いかける。だが、その動きは遅く、ティナの速さに全く追いつけない。


「ほらほらこっちだよ〜♪」


ティナは挑発するように声を上げながら岩陰を縫って走る。彼女の猫耳が敏感に敵の位置を察知し、鋭く反射する瞳が危険を感知する。時折振り返りながら猫パンチを繰り出し、オーガを煽るような動きを見せる。


「ガァアア……」


オーガは唸り声を上げながら執拗に追跡する。その巨大な手が何度かティナを掠めるが、寸前で彼女は身を翻す。紙一重の回避に息を飲む瞬間もあるが、ティナの猫族特有の第六感が危険を察知し、常に安全圏へと導く。


その隙に俺と小鈴は作業を進めている。彼女の三本の尻尾が魔法の媒介となり、大地がわずかに震える。地面が柔らかくなり、大きな落とし穴ができる。


「幻狐!」と小鈴は唱えた、その瞬間くぼみが更地のように見えるようになった。


「ティナ、もう少しだけ引きつけて!」


小鈴の指示にティナは頷き、さらに速度を上げる。オーガは苛立ちを増し、棍棒を振り回しながら怒号を上げ続ける。


「ゴガァァァッ!!」


ついにティナの服の裾がオーガの棍棒に引っかかりそうになった瞬間—彼女の反射神経が炸裂した。猫特有の柔軟性を活かした跳躍で急旋回し、棍棒の一撃を華麗に避けた。


「危なかった〜!」


汗を拭いながらもティナの目は冷静だ。彼女はオーガの死角に滑り込みながら、さらに落とし穴へと誘導していく。


「よし、もう少しだ……!」


俺は魔法の準備を整えながら状況を見守る。オーガは完全にティナに釘付けで、彼女の予測不能な動きに翻弄されている。まさに作戦通りだ。


そしてついに—


「ティナ、今ですよ!」


小鈴の声にティナは即座に反応し、後ろ向きに跳躍して距離を取った。その瞬間、オーガは前方しか見えておらず、小鈴の魔法で隠された穴に突然地面が消えたかのように大きく崩れ落ちていった。


「グワァァッ!!?」


轟音と共にオーガが落とし穴に落下していく。その巨体が底に激突する鈍い音が響き渡った。


「捕縛陣」小鈴が三本の尻尾を揺らせて叫ぶ。


穴の底で魔法の蔦がオーガを絡めとる。


「サンドブラスト!」俺は砂で落とし穴を埋めていく、手元から砂がどんどん出てくる。



普通の土では重量で踏み抜かれてしまいそうだったので砂で埋めた。どんどん砂が穴へと投入されていく。オーガはもがいているがサンドブラストと魔法の蔦のおかげで身動きが取れなくなっていく。


「これで良し、後は生き埋めにして動かなくなったところを引きずり出すだけだな」俺は額の汗を拭いながら言った。


「捕縛陣!ハイ、完璧ですね!」小鈴が満足げに答える。三本の尾が誇らしげに揺れている。


「ふぅ……やっと一息つけるね」とティナが猫耳をピコピコさせながら安堵の表情を浮かべる。彼女の身体は疲労の色が濃いが、目は依然として鋭さを失っていない。


「そうだな、でもまだ作業は残ってるぞ」と俺は落とし穴を見下ろしながら言った。砂を注ぎ込む魔法を維持しつつ、オーガの動きを監視する必要がある。


「捕縛陣!ハイ、これで数日もすれば息絶えるはずです」と小鈴が答える。彼女の三本の尾が優雅に揺れている。


「その間、私は野営の準備に取り掛かかるね」とティナが猫耳をピンと立てて言った。


「ありがとう。じゃあ頼むよ」と俺は頷いた。


「了解!あとで美味しい焼きオークをご馳走するね!」ティナがウインクしながら答える。彼女の猫耳が嬉しそうに動いている。


小鈴は捕縛陣を何度か使いオーガの拘束を維持している、俺はひたすら砂でオーガを埋めていく。オーガの巨体が徐々に砂の中に沈んでいくが、奴の抵抗は予想以上に激しい。太い腕が必死に砂を掻き分けようとする度に、小鈴が魔法陣を展開を繰り返し捕縛陣を強化する。


「ぐぉおおおおッ!!」

オーガの咆哮が砂煙の中から響く。その声には苦痛と怒りが混ざっていた。


しかし、魔法の蔦が容赦なく奴の四肢を締め付け、自由を奪っていく。


「なかなか手強いな……」俺は額の汗を拭いながら呟いた。サンドブラストの魔法を維持するための集中力が徐々に削られていく。


「大丈夫ですよ、ユートさん。まだまだ魔力には余裕がありますから」と小鈴が安心させるように言った。彼女の三本の尾が心配そうに揺れている。


その言葉に励まされながら、俺はサンドブラストの魔法を継続する。手元から溢れ出る砂が、オーガを埋めていく。


ティナは少し離れた場所で焚き火の準備を始めていた。彼女の器用な手つきで薪が積み上げられ、その上に乾燥した薬草が置かれる。猫耳が小刻みに動いて周囲の音を捉え、警戒を怠らない。


「ユート、小鈴、休憩しなよ!焼きオークの香りがしてきたよ!」ティナが声を上げる。その声に振り向くと、煙の中に食欲をそそる匂いが漂ってきていた。


落とし穴はすでに砂で埋まり、今は山を作っている状況だ。オーガの動きは完全に封じられ、もはや身動き一つ取れない状態になっている。


「よし、一旦中断しようか」と俺は提案した。小鈴とティナも頷き、3人で焚き火の側に集まる。


「ふぅ〜疲れたね」とティナが猫耳を垂らして言う。彼女の顔には安堵の表情が浮かんでいる。


「お疲れ様でした、ユートさん」と小鈴が三本の尾を優雅に揺らしながら労う。その目には感謝の色が宿っている。


俺たちは焚き火を囲んで、焼きあがったオーク肉を味わった。芳醇な肉汁があふれ出し、口の中で旨味が広がる。疲れた体に活力がみなぎるような感覚だ。


「やっぱり美味しいな、ティナの料理も悪くないな」俺は思わず褒め言葉が口から溢れる。


「えへへ、ありがとう♪」ティナは照れながらも嬉しそうだ。


食事を終えると、俺たちは交代で仮眠を取ることにした。まずは俺から。焚き火のパチパチという音をBGMに、目を閉じる。疲れ切った体が休息を求めていた。


次に小鈴が休憩し、最後にティナが休む番になった。その間、彼女たちは常に周囲に警戒の目を光らせている。冒険者としての習慣が身についているのだろう。


一夜明け、朝日が昇り始めた頃、俺たちは再び活動を開始した。落とし穴の砂山は昨日のまま、オーガの気配は完全に消えている。


「どうやら完全に息絶えたようですね」と小鈴が観察した結果を報告する。彼女の三本の尾が揺れている。


「念のため水を追加して、半日ほど置きましょうか?」小鈴が提案した。


「そうだな、念には念を入れた方がいいだろう」と俺は頷いた。


「水狐!」と小鈴が唱え、水の狐が砂の山に吸い込まれていく・・・


その日、俺たちは周囲の警戒を続けながら過ごした。小鈴は定期的に穴の状態をチェックし、異変がないか確認する。ティナは相変わらず敏感な猫耳で周囲の音を拾い、警戒を怠らない。

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