オーガ狩りの依頼
数日おきに薬草採取の依頼をこなしつつ、たまに討伐依頼もこなしつつ3人で暮らしている。もちろん休養日は設けている、いつまでもフル稼働というのは不可能だしね。
会った女の子の二人のどちらかと一緒になると思ってはいたが、まさか両方とは思ってもいなかった。
ただ、ここの世界では重婚という概念自体ない、つまり、複数人と付き合っても問題ないらしい・・・いや、何かしらトラブルになる事もあるそうだけどね。
そもそも、魔物が跋扈する世界だ、冒険者や兵士の被害は大きく、産めや増やせやが当たり前の概念らしい。
2人の猫耳としっぽを同時に人目を気にせずもふもふするのもいい、はたから見るといちゃいちゃしてるように見えるそうだが、本人たちも楽しんでいるので問題はない。
毎晩、もふもふさせてもらっている。小鈴の3つのしっぽもいいがティナの猫耳もいい・・・いやいや、なんでもない。
それにしても、よく考えてみると俺もまだまだ子供だな・・・とはいえ、こればかりは本能なので仕方ないか?
3人での生活はとても充実したものになっている。毎日が新鮮で楽しい。
それに俺たちは長命だ、気長に生活することにしよう。
今日もいつものようにギルドで依頼板を見ていると、受付嬢から話かけられた
「ユートさん、ちょっとよろしいですか?」いつもの温和な笑顔で声をかけてくるのはマリーさんだ。ギルド職員の中で一番顔馴染みの女性で、最近では俺たちの担当のような存在になっている。
「ああ、何か用?」俺は依頼板から目を離し振り返りならが声を返した。
「ええ、実は職人ギルドからオーガの皮の調達依頼が来ていまして、それでなんですが今現在Cランク以上の冒険者が出払っていまして、それでユートさんのパーティならどうかなと」
マリーさんが困ったような表情で事情を説明してくれた。職人ギルドからの依頼は珍しいことではないが、タイミングが悪かったようだ。
「なるほど、それで俺たちか」俺は腕を組み思案する。
「オーガの皮か……確かに需要はあるよな」と、俺はティナと小鈴の方を見ながら呟いた。2人とも既に興味津々といった様子でこちらを見ている。
「オーガの皮って、あれだよね?鎧とかに使われる高い素材」とティナが指差す。彼女の猫耳が小刻みに動いている。
「はい、おっしゃる通りです。オーガの皮は特殊な加工を施すと耐久性が抜群になるんです。特に今は武器や防具の修理依頼が多くて……」マリーさんが補足する。
「なるほどな……」俺は顎に手を当てて考える。オーガ自体はCランク相当の魔物だ、皮を傷つけずに狩るのは難しい。しかも、要求される品質によって難易度が大きく変わってくる。
「どれぐらいの品質が求められてるんだ?」と確認してみる。
「Aランク品とSランク品を合わせて4つですね。出来ればAランク品以上を求められているので、できるだけ皮を傷つけずに狩ってきてほしいのです」とマリーさんが答える。
「えっと、Aランク品とSランク品となると皮が少し傷ついてもBランク品ならまだマシということでいいですか?」ティナが聞く。
「ええ、その認識で問題ありません。Cランク未満の品質のものは必要ないです」とマリーさんが頷く。
「うーん……それなら俺たちでも可能かもしれないな」俺は思案する。ティナの素早さと小鈴の魔法があれば、あるいは……
「よし、この依頼を受けよう。ただし、報酬は事前に提示してくれ」俺は決断した。
「ありがとうございます!報酬は金貨10枚ですね、もちろんオーガの肉なども回収できる場合はギルドで買い取ります」マリーさんが微笑む。
「よし、決まりだな。ティナ、小鈴、準備を始めよう」俺は2人に声をかけた。ティナは満面の笑みで猫耳を震わせ、小鈴は静かに頷く。
「まずは、オーガが居るところを探さないといけませんね」と小鈴が言う。
俺たちだと単体のオーガを相手しないと無理だろうと、考える。
「・・・ここはセレスに頼ってみるか」と俺は言う。
精霊のセレスならオーガの居場所くらいならわかるだろう、あとはその準備のためにアレを用意する。
アレとは以前、3人で食事をしていた時のこと「・・・やわらかいパンが食べたいな・・・」と何気なく言った俺の言葉を2人が聞き返して始まったのが発端だった
この世界のパンは黒パンという感じで、固いを通り越して硬い。水やスープにびたびたに浸して食べるのが一般的だ。
そこから試行錯誤の末できたのが発酵パンだった。俺のあいまいな知識と小鈴の知識で出来上がった。ふわふわの柔らかい発酵パンは3人の間でも人気であり、今はアイテムボックスの中に常時入れているくらいになっている。
今回、用意するのは、小豆と砂糖それをアクを取りながらこれをひたすら煮詰める。そして発酵パンの生地の間に詰め、それを焼く。
そう、作ったのはなんちゃってあんぱんだ。この世界では砂糖は貴重品、豆は家畜のエサとされは食用とはされず、あんこ自体が知られていない。
この新しい甘味ならよろこんで引き受けてくれるだろうと予想する、精霊に頼み事をするにはなにかを供物としてささげる必要があるそうだ。
精霊魔法なら魔力、契約や頼み事なら供物というふうになっているそうだ、もちろん対価に合わなければ成立しない。
ちなみに、お酒やお菓子などの贈り物も喜ばれる。
「これでよし」と完成したあんぱんを眺める。「後はセレスが来るまで待つだけだ」とティナと小鈴に声をかけた。セレスは不定期に現れることが多い。
「・・・そういえばオーガはどうやって倒すんだ?」
「それは問題ありませんよ、私が落とし穴を作って生き埋めにしますから、私達じゃ普通に傷すらつけられませんから。」小鈴が三本の尾をなびかせながら答える。
「オーガの皮は防具の素材として優秀ですから、そもそも簡単に傷がつくようでは防具の素材になりませんよ」小鈴が続けて説明する。
なるほど、それもそうだ。そもそも防具の素材として使われるような皮が簡単に傷つくようでは話にならない。
「・・・なるほどね、それで生き埋めね・・・」俺は少し呆れた。
「ハイ、そうです!」小鈴は得意げに答え、三本の尾を揺らした。「でも安心してくださいね、ちゃんと息の根を止めてから引きずり出しますから!」小鈴が笑顔で言った。
・・・これって俺いなくても良かったんじゃね?
なんて思ったが口に出さない事にした。
「それでは明日、セレスさんが来たのなら明日に向かいましょうか?」小鈴が三本の尾をピンと立てて提案する。
「そうだな、準備は万全にしておこう」俺は頷いた。
「了解だよ!」ティナが元気よく答える。彼女の猫耳が機嫌よく動いている。
「ところで、このあんぱんの試作品はどうする?やっぱりセレスが来るまで温存しておく?」俺はテーブルの上のあんぱんを指差した。
「そうですね……念のため、セレスさんが来たときに出してあげましょう。きっと喜んでくれるはずです」と小鈴が三本の尾を優雅に揺らしながら答えた。
その日の夜、案の定セレスが訪ねてきた。いつも通りの凛とした佇まいだ。長い銀髪が月明かりに映えて美しい。「セレスさん、ちょうどいいところに!」小鈴が三本の尾をピンと立てて歓迎する。
「オーガの討伐依頼があってね、協力してもらえないかな?」俺は単刀直入に切り出した。
「ふむ……良いでしょう。それでお代は?」セレスは相変わらず淡々とした口調だ。
「ああ、これを使ってくれ」俺は試作品のあんぱんを取り出した。
「これは……?」セレスは興味深そうにあんぱんを見つめる。
「発酵パンに小豆餡を挟んだ菓子だよ。甘くて美味しいはずだ」と説明する。
セレスは一口食べて目を見開いた。「これは……素晴らしい!こんな味の食べ物は初めてです!」
セレスはあんぱんに夢中になった、両手にあんぱん1個ずつ持ちながらハグハグと食べている
「気に入ってもらえて良かった」俺は安堵の表情を浮かべた。
「よし、これで契約は成立だな」俺は胸を撫で下ろす。
「はい。それでは明日の朝、オーガの居場所をお伝えしましょう」とセレスが言う。その姿勢は相変わらず凛としている、しかしほっぺたにあんぱんのカスがついている。
「ありがとう。じゃあまた明日な」と俺は見送り、その日の夜は更けていった。
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