魔法の練習
小鈴は意気揚々と依頼リストを見始めた。
「私的にはこの辺がおすすめです!」
小鈴は依頼書を指さした。「Fランクのウサギ狩りです!動きが速いので魔法の命中率練習にぴったりです」
「そうか!」ユートは納得した。「それに肉も食材になるから一石二鳥だし」
ティナも頷く。「食害獣駆除にもなって農家さんも喜ぶし」
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次の朝、三人は東の森へ向かった。
「まずは獲物を見つけるところからですね」小鈴が先導する。
森の奥へ進むと小動物の足跡を見つけた。
「あそこです!」小鈴が指さす方向に灰色のウサギが跳ねる影。
「よし」ユートは手を構えた。「〈すべての力の源のマナよ……〉」
しかしウサギに気づかれたようだ
詠唱を終えた瞬間、小さな矢が放つが。しかし――
「あっ!」火矢は木の幹に当たり爆ぜた。ウサギは茂みへ逃げ込む。
「惜しい!」ティナが素早く駆け寄るが逃がしてしまった。
「焦らないで」小鈴がアドバイスする。「詠唱を早口でおこないましょう
声が届かないと魔法も届かないので、それに詠唱を短縮すると精度もおちますし」
「なるほど」
次に遭遇したウサギに対して改めて挑戦する。
「〈すべての力の源のマナよ 運ぶ風よ 時を刻む砂よ 門を開け〉」
ゆっくりと声に出しながら意識を研ぎ澄ませる。今度は正確に狙いを定めて……
「ファイヤーアロー!」
火矢が空中を疾走し見事にウサギの足元で炸裂した。怯んだ隙にティナが素早く駆け込み捕まえる。
「やった!」ティナが血抜きを始める。
「いい感じですね」小鈴が微笑む。
休憩中に魔法談義が始まる。
「ところで小鈴さんは」ユートが尋ねる。「魔法陣ってどうやって学ぶの?」
「お姉さまに教えてもらい、使えるようになりました」
午後の狩りは順調に進み夕暮れ時には十二匹を捕獲した。
「これは良い収穫ですね」小鈴が言う。
「うん」ユートは伸びをする。「魔法の精度も上がった気がする」
村に戻り農家に卸すと大歓迎された。
「こんなに上等なウサギは久しぶりだよ!」
宿の厨房では早速調理が始まった。
「今夜は鍋にするかの」主人が笑う。
夕食時、三人は狩りの成果を振り返りながら賑やかに過ごした。
「明日はどうします?」ティナが尋ねる。
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夕食後、小鈴は俺に向き直って言った。
「ユートさま、明日はより高度な練習をしましょう!」
彼女の三つの尾が嬉しそうに揺れている。
「具体的には?」俺は身を乗り出した。
「移動目標への魔法発動です。今までは止まったウサギばかりでしたが
実際に動き回る相手に狙いを定める必要があります」
テーブルに広げた羊皮紙に小鈴は魔法陣を描き始めた。
「詠唱と魔力の流れが重要です。特に『門を開け』の部分で空間を認識することで──」
(翌朝)
東の森へ向かう道中、小鈴は指先から小さな火の玉を浮かべながら説明を続けた。
「魔力は声と意思で操作します。私の場合は魔法陣の方が正確性が高いのですが」
「どんな違いがあるんだ?」と尋ねると、彼女は微笑んだ。
「詠唱は柔軟性があり、即興の調整が可能です。
一方魔法陣は詠唱を破棄することができますが準備にすこし時間がかかります
それに人間族では使うのが難しいかと思います。」
なるほど。
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