因果応報
そのころ勇者召喚した国では・・・
「なんだと!?これは……猫ではないか!!」
聖女が後退し、肩で息をする。魔方陣から発せられた膨大な光が収束すると、そこには三毛猫——さくら——が座っていた。小さな黒い瞳が辺りを見回している。
大臣が顔面蒼白で王様の前に膝をついた。「陛下……このままでは計画が……」
王宮内は水を打ったように静まり返った。遠くから民衆の怒号がかすかに聞こえてくる。
兵士たちは剣を握りしめる手に汗を滲ませ、城壁外の民衆との間で緊張が高まっていた。
王様は杖を床に叩きつけた。「何故だ!?召喚の儀式は完璧だったはず!聖女よ、説明せい!」
「わ、わかりません!全ての儀式は正確に行いました!召喚の兆候も明らかでした!でも……現れたのが……」
赤い髪の少女が震える手で頬を拭った。涙と埃で化粧が崩れている。
「まさか……生贄の数が足りなかったのか?」大臣が恐る恐る問いかける。
「馬鹿な!国中の罪人を五百人も捧げたのだぞ!」王様の怒声が広間に響き渡る。
王様が玉座から立ち上がる。「このままでは王国の威信が……」
その時、一人の老人が前に出てきた。黒いローブを纏い、目深にフードを被っている。「陛下、私が従属魔法を施しましょう」
大臣が安堵の表情を浮かべる。「そうだ!従属魔法があれば、少なくとも猫を操れる!」
老人が詠唱を始めると、青白い光がさくらを包み込んだ。
しかし——何も起こらない。
「どういうことだ?」王様が顔色を変える。
老人が額から汗を流しながら呟いた。「抵抗しています……私の魔法が……効かない……」
広間に緊張が走る。さくらは不思議そうに耳を動かし、小さく鳴いた。
「ニャー」
赤い髪の少女が恐る恐る一歩前に出た。「あの……その子、何か言っていませんか?」
誰も答えない中、彼女はゆっくりとさくらに近づき、ひざまずいて目線を合わせた。
「あなたは……どこから来たの?」
不思議なことに、さくらは首を傾げ、少女の方を向いた。
「ニャン?」
少女が息を呑む。「今の……返事みたい」
王様と大臣が信じられない表情で見つめる中、少女はさらに言葉を続けた。
「あなたは……私たちを助けに来てくれたの?」
さくらは尻尾を振って、また「ニャーン」と鳴いた。
「馬鹿な!ただの動物が意思を持って返事をするとは」王様が叫んだが、その声はわずかに震えていた。
大臣は両手をこすり合わせながら提案した。「陛下、きっと何かの偶然です。すぐに召喚を行えば—」
「もう一度などできるものか!」王様の怒声が広間を揺るがした。「国中の罪人を使ったのだぞ。これ以上犠牲を増やしたら、民衆が本当に暴徒となる」
赤い髪の少女—ミアは、まだしゃがんだまま猫に語りかけていた。小さな金色の瞳がキラキラと輝いている。
「あなたの名前は?」ミアが尋ねると、さくらは自分の前足を舐めながら「ニャーア」と鳴いた。
「さくら?」ミアが繰り返すと、猫は大きく頭を縦に振った。
周囲の人々の視線が一斉に集まった。聖女が唇を噛みしめている。
「あり得ない……こんなことが」聖女の声はか細かった。「魔力感知器には確かに強大な力を感じたのに……」
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