第一話 ❶
最初長いですが付き合ってくださるとうれしいです。
今年は父がなくなってから初めての盆だった。ようやく父の死から立ち直りつつある母はきっと盆をきっかけにまた落ち込むだろうと思って、有給も消費して早めに帰省した。いや、他にも理由があった。大好きな母を独りぼっちにさせたくなくて、会社と相談してリモートワークが可能になったから、私が実家に住むことを母に提案したくて早めに帰省した。
「…ということで私、お母さんと一緒に暮らしたい。」
「私はイヤよ。」
間髪入れず断られた。
「どうして?お母さんにとっても介護ができる人間が家にいたほうがいいでしょ?」
「まだ介護が必要な歳じゃないわ。それにあなたにはこんな田舎じゃなくて都会に住んでいてほしいのよ…。」
母の目に涙が滲んだ。熊に襲われて死んだ父のことを思い出したんだろう。
そんな状態の母に何も言えなくなって口を閉じた。
でも母を納得させようとする言葉が駆け巡る脳内が煩わしい。無理やり意識を逸らそうと窓の外に目を向けると予報から外れた大雨だった。
「危ないところに住まうのは私だけでいいの。あの人と同じ場所で土になるのも私だけでいいの。
…だから、もう帰りなさい。あなたの家に。」
愛ある冷たい突き放しだった。そんなことわかっているのに母に対する怒りがふつふつと湧き上がる。
そこから気がついたときにはもう家の外だった。傘も持たずにスマホだけポケットに突っ込んで雨を浴びている状態だ。
きっとこのままここにいたらせっかく外に出たのにまた戻って母に怒りをぶつけてしまうだろう。
そう感じて実家の敷地をはなれて村の端に向かって走り出した。
どのぐらいに1ページ詰め込んでいいのかわからないですね。続きます。