会場のセッティング
-Main story- 5−2
慌しい出発ではあったが、予定通り昼過ぎには宮中へ着く事ができた。
私達は、陛下に挨拶をすませたのち、広場へと荷物を下ろし、祭壇の設置など会場のセッティングを進めていた。
「あとは、これをおくだけ。よし、準備完了‼︎」
仕斗が手伝ってくれたおかげで作業がはかどり、予定してたよりも早く準備が終わってしまった。
この後どうしようかと悩んでいると、通りがかった越志さんが私に声をかけてくれた。
「時雨、お疲れ様。準備は終わったのかい?」
「はい、準備は万端です。あの越志さん、この前は大変ご迷惑をおかけしました。」
南の村での騒動について改めて謝罪した。
「あぁ、気にするな。空斗さんに元々救援を頼まれていたからな。手をかしたにすぎないよ。」
越志さんは、ふと視線を廊下の方に向けた。
何があるのだろうかと、私も越志さんの視線の先をたどると、そこには、広場の様子を眺めていた想輝様がいた。
想輝様もこちらの存在に気付いたようで、手を振った越志さんに応えるように、こちらに視線を向けていた。
「時雨、謝罪よりもお礼を想輝様にした方がいいよ。あれ以上被害が大きくならなかったのは、想輝様が色々と手筈を整えてくれたおかげた。」
越志さんは、〝行ってきな。”っと想輝様のいる方向へと私の背中を押していた。
私は内心どうしようかと焦っていた。
想輝様は私を嫌っており、いつも私の顔をみると、嫌そうに眉をひそめ、棘のある言葉で話すのだ。
本当は一対一で話したくないが、ここは覚悟を決めて行くしかなさそうだ。
「想輝様、こんにちは。ご機嫌いかががでしょうか。南の村の騒動では、手をかしてくださりありがとうございました。」
私は想輝様に近寄り、頭を下げて感謝の気持ちを伝える。
(オドオドした感じは出ていないだろうか。)
そんな心配をしながら、想輝様からどんな言葉をかけられるのかヒヤヒヤしていた。
「大したことはしていない。無事に収拾がついたようでよかったな。里の方はどうだ?だいぶ落ち着いてきたのか?」
(想輝様が私を気にかけてくれている?)
いつもの対応と違う想輝様に違和感を覚えつつ、想輝様からの改めての気遣いに重ねてお礼を述べる。
「はい、里の方も少しずつ復興作業は進んでいます。お気遣いありがとうございます。」
「そうか、ならいい。では、私はこれで失礼する。後ほど、明日の式典の打ち合わせをしたい。今度は部屋を訪ねる。」
そういうと、想輝様は行ってしまった。
頭を下げて想輝様を見送るが、やはり何かいつもと様子が違うようだ。
(そうだ!何故か今日は言葉に棘がなかった。どういう心境の変化だろう?)
想輝様の態度にモヤっとした感情を抱きつつ、みんなの元へ戻る。
戻ると越志さんが、ニヤニヤした顔で想輝様の去った方を見ていた。
「じぁ、時雨、私も失礼するよ。明日まで時間はあるんだ。少し部屋でゆっくりしているといい。」
そう言うと、越志さんは、近くの侍女に、私たちを部屋まで案内するように声をかけ、想輝様の後を追うように行ってしまった。
「では、こちらへ。お部屋まで案内いたします。」
侍女は、私達に丁寧に頭を下げると、部屋まで案内してくれた。
「こちらが式典の間に使って頂くお部屋になります。」
案内された部屋は、天井が高く広々としており、目の前には一枚板で作られた大きな机と、身体に添うように湾曲のついた椅子が置かれていた。
私は部屋をぐるりと見渡した。
全ての作りが繊細で1つ1つにこだわりが感じられた。
入ってすぐ左手と奥に扉が見えるので、他の部屋へと続いているようだ。
「こちらの部屋が、お連れ様の寝室となっています。」
先に案内されたのは、入ってすぐ左側の部屋だった。そこには、一つ一つ繊細な細工が施されているシングルベッドが、いくつも並んでいた。お付きのものが泊まれるようにと用意された部屋のようだ。
「こちらのお部屋が主寝室となっています。」
次に奥の部屋へと案内される。そこには優美な天幕がかかったキングサイズのベッドが置かれていた。
「部屋着は、こちらご用意してありますのでお使いください。」
チェストの中には、部屋着まで準備されているようだ。
どこもかしこも煌びやかで、気後れしてしまいそうになる。
一通り部屋の説明を終えた侍女さんは、
「夜のお食事は、後ほどこちらに運ばせていただきます。では、私はこれで失礼させて頂きます。また、何かご用がありましたらお申し付けください。」
と頭を下げて、出ていった。
ルームサービスまでしてくれるとは、至れり尽くせりだ。
手前味噌になってしまうが導神族の長という私は、それなに身分が高いのだ。
これぐらいのもてなしは当たり前という立場ではあるのだが…。
(豪華すぎて落ち着かない‼︎)
今まで里では、小さな離れでひっそりと暮らしていたし、最近は仮小屋で寝起きしているのだ。
煌びやかな生活とは縁遠い生活を送っている為、真逆の光景に圧倒されてしまう。
すでに、儀式に使う装束などの荷物は運び込まれていた。
「すごーい、広いへやだね♪」
子どもの様に海は、はしゃいでいた。
「とりあえずお茶でも淹れましょうか。」
と、空は何の躊躇いもなく部屋に準備されていたお茶を淹れてくれた。
仕斗は歴代の長について宮中に泊った事があるのか、慣れているようだ。
私にとって『成人の儀』は初めての祭事で、勿論、宮中で一晩を過ごす事は初めてだった。
とりあえず緊張を解こうと、椅子にすわりお茶を飲む。
暖かいお茶が身体に染み渡るようだ。
「やっとひと息つけたな。」
陸が束の間の休息を味わっていた。
ここ数日の間で北や南へと移動し、いざこざを対処したりと忙しいかった。
久しぶりと思えるゆったりとした時間だった。
しばらく他愛もない話をしながら過ごしていたらあっという間に時は過ぎ、すでに陽が傾き始めていた。
(そろそろ食事の時間になるだろうか。)
私は食事前にさっぱりしたかったので、話を切り上げて、お風呂に入りに行くことにした。




