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式典の準備

-Main story- 5−1

「あぁー疲れた!」


南の村から帰ってきてすぐに、海はドサっと床に寝転がっていた。

一方、空は陸の火傷の手当てをしていた。


「痛いぞ、空。もっと優しく手当てしてくれ‼︎」


「少し染みるだけでしょう。大袈裟すぎますよ。」


空は陸の様子など気にせず、黙々と手当てをしていた。

皆が手をかしてくれたから無事に解決できた南の村での出来事。

そんな彼らを労う為に、私はお茶を淹れていた。


「皆、お疲れ様。今回も手助けしてくれてありがとう。お茶を淹れたからゆっくりしてね。」


淹れたお茶を机に置いていく。


「時雨様、ありがとございます。」


陸の手当てを終えた空は、ゴロゴロとしていた海を厳しい目つきで見ていた。


「海‼︎お茶を淹れるのはあなたの役目でしょう。」


空は、私の手を煩わせるとはどういう事かと、寝転んだままでいる海を叱っていた。


「動きたくないよー。ゴウちゃんだって寝てるしいいじゃん‼︎」


海は、お腹を上にして完全にリラックスしている閤央を指でさしていた。


「あなたは動物と同類ですか…。」


空は、眉間に皺を寄せ、ため息をついていた。


「いいのよ、空。私がお礼をしたくて淹れただけなんだから。海もゆっくりしていて。」


こんないつものやりとりが、私の緊張していた気持ちをほぐしてくれた。

今回の騒動で、私は仕斗や閤央にどれだけ助けられ、救われているのか実感をすることができた。

彼らがいなければ、あの騒動も無事に収めることはできなかっただろう。

私の中には、お茶を入れるだけでは足りないくらい、感謝の気持ちで溢れていた。


ほのぼのとした気持ちで私も一息つこうと座った時に、ふっと大事な事を思い出した。


「成人の儀‼︎そういえば明後日じゃない⁉︎」


色々な事があり、式典の事をすっかり忘れていた。

空も頭から抜けていた様で、ハッとした顔で慌ててカレンダーを確認していた。

カレンダーの日付には、赤い丸がつけられており、成人の儀っとしっかりと予定が書き込まれていた。

私と空は、その事に気づき青ざめた。


「いっ、急いで準備にとりかかりましょう‼︎」


〝ブラックだな。”〝忙しすぎない?”など不満の声をあげる者もいたが、そんなことを気にしていられない程、時間がひっ迫していた。

結局ゆっくりとお茶を飲む時間もなく、バタバタと総出で式典の準備をする事になってしまった。


成人の儀とは、皇子の18歳の誕生日の日に大掛かりに行われる式典だ。

最初に祈祷が行われ、その後、一日中祝いの宴が続く。

私の仕事は祈祷をし、式典の間、火を焚き続けることだ。

当日は朝早くから式典が始まる為、前日から宮中に入り準備を行う必要がある。

式典があるのは、明後日。

明日の朝出発できれば間に合うだろう。

しかし、すでに外は薄っすらと暗くなりかけていた。

のんびりとしている時間は全くなかった。


小屋の中で、儀式で必要となるものを手分けして探していく。

供え物などを置く祭壇や、神様を招く為の神籬、式典用の装束など必要な物は沢山ある。

しかし、今回の式典で1番重要な宝珠が一向に見つからない。

一カ月間祈りを捧げて神の加護を宿した特別なものだ。

代わりのものなど今更準備はできない。

宝珠は箱に入っているが、その大きさは、両手にのるほどだ。

一つ一つどかして探さないと、他の物に紛れてわからなくなってしまう。


「もしかしてまだ、瓦礫の中に紛れてるとか?」


最悪の展開が頭をよぎり顔が青ざめる。

そうだとしたら月明かりの下で、瓦礫の中を探していては時間がかかりすぎてしまう。

もしかしたら式典に間に合わないかもしれない。


「⁉︎ 念の為、俺は外を探してくる!」


陸が暗闇の中、ランプの光をたよりに瓦礫の中を探しにいってくれた。

空は式典用の衣装をせっせと縫い直してくれているから、捜索の手は借りられない。


私と海で引き続き、物で溢れた小屋の中を探していく。

結局、宝珠が見つかったのは小屋の中。

小屋の一番奥にあった頑丈な箱の中に保管されていた。


「あった‼︎よかった‼︎」


私は宝珠が見つかった事に安堵し、気が抜けへなへなと座りこんでしまった。

私の喜びの声は外にまで響いていたようで、陸がランプを持ったまま戻ってきた。


「あったのか‼︎よかった。」


陸も私の手にあった宝珠を見て、ホッとした様子だ。


「もう時間がない。さっさと荷物をまとめるぞ‼︎。」


陸の声に我に帰る。

もう東の空が赤く染まっている。

まだのんびりなどしていられないと急いで荷物をまとめる。

空が担当していた衣装直しもなんとか間に合い、慌しかったがなんとか出発の準備を終えることができた。


今回の式典で出番のない閤央は里でお留守番だ。

まだ眠っている閤央を起こさないように、式典を行うべく、私達は朝日を見ながら宮中へと向かったのだった。

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