村人の対立 後編
-Main story- 4-6
なんとなくだが、大まかな事情は理解できた。
「大体の事情はわかりました。」
私の方へ視線を向ける村人達の顔を見渡しながら問う。
「あなた達にもう一つ聞きます。ここに来てから、この土地の神である熾閃煌に敬意をはらった者はいますか?」
狼鷲は彼らは挨拶をしにこなかったと言っていたが、それは狼鷲の勘違いかもしれないっと淡い期待を抱いていた。
「するわけないだろ。好き好んでここにきたわけじゃないんだ。」
しかし返された言葉に私の期待は呆気なく打ち砕かれる。
現実を直視するのはつらい。
今まで導神族として、神に仕える仕事をしていたはずなのに、彼らは何故神に感謝する気持ちまで失ってしまったのだろう。
「ここに住まわせてもらうのよ。挨拶するのが礼儀でしょ。あなた達はその大切さをよく知っているはず!?」
私はたまらず声を張り上げる。
「はっ‼︎礼儀もくそもあるかよ。そもそもお前がしっかり長としてやっていたらこんなことにならなかっただろうが。」
彼らには私の想いは露ほど届かず、またその話に戻ってしまった。
確かに私が長として統率をとれていたなら、彼らが土地を追われることはなかった。
でも、私だけが頑張っていればよかったのか。
あなた達は、あの時何をしていた?
私はあの時にできる最大限の事をして、彼らの想いに答えていた。
私だって万能ではない。
全てが完璧にできるわけではない。
今だってそうだ。仕斗や閤央が側にいて、支えて見守ってくれてる。
だから、今の私は長として前を向き、やっていこうと思えるのだ。
彼らは、自分達が望む完璧な結果を私が出せなければ納得しなかった。
そして、私の全てが駄目だと責めた。手を差し伸べることもしてくれなかった。
彼らは、与えられるのが当然だと思っている。
でも、人というのは、お互いのできない事を助け、支え合ってやっていくというものではないのか。
「さっきあなた達は平等じゃないって言っていたわよね。じぁ、あなた達は、両親が亡くなった後の私を平等に扱ってくれた?私は皆のために必死に色々とやっていた。わからない事だらけの中で頑張っていた。あなた達はその時何をしていた?ただ口をだし、文句をつけるだけ。これが平等だっていえる?」
私のうちに怒りや悔しさ、悲しみなど様々な感情が渦巻いていた。
私は彼らをぐるりとみわたした。
バツが悪くて目を逸らす者、困惑している者、彼らも様々な表情を浮かべていた。
「あなた達はなぜ巡地守神が導神族として名乗る資格がないっと言ったかわかる?他人を思いやることを忘れている。それに気がつきもせずに、自分達の行いは正しい、正義だと主張している。導神族の志は、世の為人の為に生きること。その為に特別な力も授かっていたでしょう?あなた達だって私と同じ。自分達の役目を放棄していたのよ。」
わかってもらえているだろうか。
私は彼らの反論を許さず、話を続ける。
「巡地守神は、心を入れ替えたのなら、再度、導神族と認め万人には持てぬ力を授けると約束した。やり直すチャンスをもらってここへ来たんじゃないの?なのに、神に礼をする義理がない?自分の思う通りにしない人を邪魔だったから殺めた?あなた達は何をやっているの‼︎ただ自分本位で生きているだけ。あなた達が嫌う私よりももっと酷い行いをしているわ‼︎ 」
私の怒りは頂点に達していた。
今度は、怒りのあまり口が止まらなかった。
「私は、あなた達に導神族を名乗ることを生涯禁じます。あなた達にそんな資格はない。私は慈悲などあたえない‼︎」
二度目のチャンスなんて私は与えてあげるほど器の広い人間ではないのだ。
怒りに任せて話をしてしまった自分もまた彼らと同じ未熟者なのだろう。
彼らはただ唖然と私をみているだけだった。
隠れ住むように生きていた弱い私しか彼らは知らない。
私がこんなにも感情を露わにし、意見を述べてくるとは思っていなかったのだろう。
視界の片隅に、仕斗と閤央がいた。
彼らは今も温かい眼差しで私の事を見守ってくれていた。
その後、この騒動の罰として、私はここへ社を建てる様に彼らに命令を下す。
その代わりに、私にできる援助は彼らにするつもりでいた。
彼らが、かつての仲間であった事に変わりないからだ。
あの後、狼鷲の元へ戻り彼らの処罰について伝えた。
「彼らには、この騒動の償いとして、ここに立派な社を作る様に命じました。その変わりではないのですが、彼らをここへ住まうことをお許しください。」
私は狼鷲に頭を下げる。
『ふん。また何か騒動を起こすようなことがあれば次は容赦しないぞ。熾閃煌様は慈悲深いお方だ。しばらくは様子を見守ってくださるだろう。』
「ありがとございます。」
狼鷲に礼をつげてから、今度は、祠に向かい、熾閃煌神に詫びと感謝の気持ちで祈りを捧げた。
『では、さらばだ狼鷲。また彼らの様子を見に来る。それまで彼らをよろしく頼む。』
閤央は狼鷲へ別れの挨拶を告げていた。
すでに夜は明け、太陽が上がり、空は晴れ渡っていた。




