狼鷲の怒り 後編
-Main story- 4-4
陸は炎の勢いに負けじと、狼鷲に近づこうと走っていく。
私は呪札を通して、陸を襲う炎の勢いを感じていた。
常にチリチリと肌を焼く様な熱さが身体にまとわりついていた。
狼鷲は自分に近づかせないために、陸に向かっていくつも火を放っていく。
陸はそれを右に左にと避けながらどんどんと狼鷲に近づいていき、攻撃のタイミングを測るふりをして、少しづつ陣を描いていく。
『ちょこまかと動きよって。』
狼鷲は苛立ちながら近づいてきた陸へと鋭い爪をふりがざす。
それは、陸の身体ギリギリの所をかすめ、服を引き裂いた。
「うわっ、あぶね。」
咄嗟に後ろに飛びのいた陸は、体勢を立て直すと再び陣の続きを書いていく。
狼鷲は攻撃の手をやすめる事なく陸を狙っていた。
(あと少し、あと少しで陣が完成する。)
私は心の中で陸を応援し続けていた。
陸は最後の一辺を書き上げる為に、狼鷲の周りをぐるりと走り、ついに陣を完成させた。
「よっしゃー!時雨、後はたのんだぞ‼︎」
私が次の手を撃てるように、陸は素早くその場から離脱した。
「貴様どこにいく!なんのつもりだ‼︎」
狼鷲は、攻撃もせず去っていく陸を追いかけてようとしていた。
陸が炎から脱出した後、私は素早く新たな呪札に念をこめる。
(狼鷲の力を封印せよ。)
シュッと飛んでいった呪札が狼鷲に張り付くと、狼鷲の足元の陣と呪札の陣が共鳴し光を放つ。
『ぬぅ。なにが起きた⁉︎力が出せぬ。』
力が出ず暴れていた狼鷲が、足元に描かれた陣に気がついた。
『あやつは導神族の刺客だったか。おのれ‼︎まだこの地を荒らそうとするのか‼︎』
狼鷲は怒りに任せ雄叫びをあげていたが術が効いているおかげで、炎の勢いが増す事は無かった。
興奮状態の狼鷲はしばらく暴れていたが、時間と共に落ち着きをとり戻し炎も徐々に鎮火していった。
炎が無事に治ったことに安堵した私と閤央は、話を聞く為に狼鷲に近寄っていく。
「初めてまして狼鷲。私は導神族の長、時雨です。手荒な真似をしてすみません。お話を伺いたかったものですから。」
まずは名を名乗り、非礼を詫びる。
『狼鷲久しぶりだな。何故暴れ回っていたのだ。』
閤央は話をする為に狼鷲の前に腰を下ろしていた。
『閤央か。まだ導神族に仕えておるのか。』
狼鷲も観念したのか私達の前にドカッと腰を下ろしていた。
『狼鷲、この娘はなかなか筋がいいぞ。』
『ほぉう。頑固なお前がそこまでいうとはな。』
狼鷲は閤央の言葉を確かめるように、私を値踏みしていた。
そんな狼鷲に閤央は、
『私達は話を聞きにきたのだ。』
と、狼鷲に怒っていた原因を尋ねていた。
『奴らが熾閃煌様の土地を血で汚したのだ。』
狼鷲の視線の先には、睨み合って対立している一族の者達がいた。
私はそれを知り青ざめた。血で汚したっという事は、誰かが誰かを殺めたっということになる。
『我らが住む地に無断で入り込んできた上に、血で地を汚すなどという無礼を働いたのだぞ。怒るのは当然の事だろう。』
狼鷲は声を荒げていた。
彼らがここにくる原因を作ったのは私だったので心中複雑だった。でも、彼らは最近まで導神族として神に仕える仕事をしていたはずだ。新しい土地に住む時は、その土地を納める神に祈りを捧げる事も、その大切さも知っているはずだ。なのに神に対しここまで礼を欠いていたとは流石の私も予想はしていなかった。
『そうか。それはすまないことをしたな、狼鷲。ここまで愚かな人間になっているとは私も思っていなかった。本当にすまなかった。』
閤央は狼鷲に頭を下げ、奴らからも話を聞いてくるから時間をくれと嘆願していた。
『今から時雨に術を解かせるから、怒らず、落ち着いたままでいてくれよ。また相手をするのは骨がおれるからな。』
閤央が狼鷲に念を押す。
『うむ。わかった。お前達に時間をくれてやろう。』
狼鷲は、私達一族が話し合う時間をくれた。
『時雨頼んだぞ。』
私は頷き術を解くと、狼鷲の背に貼られた呪札は、砂の様に風に吹かれ消えていった。
「狼鷲ごめんなさい。彼らからしっかり事情を聞いてきます。少し待っていてください。」
私からも狼鷲に謝罪を告げてから、一旦彼らがいた場所に戻ることになった。
熾閃煌:火の神
狼鷲:火の神 熾閃煌の使い




