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-Main story- 1-2

『お前さえいなければ、私が…私が…なっていた。憎い、お前…いなく…私が…なっていた…』


悪夢にうなされ、目が覚める。

憎悪に満ちた感情を誰かにぶつけられる、そんな重い夢だった。

まだ外は薄暗く、昨日の疲れも取り切れていないようだ。

二度寝しようと思ったが、どうにも眠れそうにない。

仕方なく服を着替えて外に出る。

太陽が昇る前の朝は、まだ冷やりとしていた。

朝露に濡れる木々を眺めながら、両親が亡くなった頃を思い出していた。

両親の死後、私はどうしたらいいかわからなかった。

まだ十歳だった私に、里の者達は、「あなたが新しい長になるのよ。」と言い、村を導くことを熱望していた。

子どもである私が一人ではこなし切れないような要望を次から次へと日々持ちかけてきた。


「あなたのお父様ならこうしてくれていた。」

「二人の血を引くあなたならできる。あなたは神童だから、大丈夫よ。」


とかけられる言葉が、私に重くのしかかっていた。

みんなの期待に応えようと、父のような長になれるようにと、私は日々邁進し、失ってしまった力を取り戻そうとしていた。


毎日のように、書庫に眠る術書を読み漁り、様々な知識を身につけてきた。

剣の訓練も欠かさなかった。

神に祈りを捧げることも怠ることはなかった。

今まで以上に努力をしていたのだ。

なのに、成果は得られず、神童と呼ばれた頃に戻らない私に里の者達は愛想をつかし、冷たい態度をとるようになっていった。


「期待外れだった。」

「このままでは、我々導神族は廃れてしまうのだろう。」


と、心ない言葉をぶつけられるようになっていった。

孤独だった、寂しかった。

私だって、みんなの期待に応えられるようになりたかった。

そんな無力感に押し潰されそうな時、私に手を差し伸べてくれたのは叔父だった。


「幼いお前が一人で抱え込むのは無理だ。私が力になろう。私は次男ではあるが、直系の血筋だ。里のことは私が引き受けるから、時雨は祭事に専念してくれ。」


その言葉にどれほど救われたか。

私は叔父と共に手を取り、里を導いていくのだと信じていた。

なのに…今、私は何をしているのだろう。

昨日、陛下や皇子、越志さんに嘘をついてしまった。

うまくやれていないという自覚がある。

もうとっくに皆から見放されているのに。


ヒューと、私の思考を遮るように風が吹いた。

いつの間にか太陽が昇り、朝露が光に反射してキラキラと輝いていた。


(いけない。ナーバスになってしまった。変な夢を見たせいだ。まずは朝の畑仕事から始めよう。)


私は、わずかに残った精霊を操る力で、水を撒いたり、火を起こしたりと、日々の生活をおくっていた。

今日も精霊の力を借りて畑仕事に取り掛かる。

枯れ葉を畑に集め、それを火で燃やして肥料をつくる。

肥えた土に種をまき、水を与えれば、元気な植物が育ち、私に恵みをもたらしてくれる。

そんな自給自足の生活を続けてきた。


畑で収穫した野菜や果物で、遅めの朝食を摂る。

英気を養った後は、成人の儀の準備に取り掛かる。

皇族が成人したときには、その身を守るために神の力を込めた宝珠を送るのが慣わしだ。

儀式を行うために火を焚き、宝珠などの準備を整えると、私は祈りを捧げ始める。


(この地を見守り、我々を導いてくださる巡地守神様。四神の御加護と共にお力をお貸しください。次期皇帝の座に就く想輝様を災厄から遠ざけ、いついかなるときもその身をお守りください。)


私の祈りに応えるようにキラキラとした光が宝珠に集まっていく。

これを毎日、約一か月続けて、神の加護を宝珠に流し込むのだ。


(今日はこの辺にしよう。寝不足と昨日の疲れが残っているからか、なんだか体調が優れない。)


身体の不調を感じ、その日も早々に寝支度を整え、布団に潜り込む。

この晩、私は不思議な夢を見た。


『私を呼べ。自分の役目を思い出せ。現実から目を逸らしてはいけない。』


誰かに叱責される夢だったが、その声には優しさが満ちていた。


(自分の役目ならこなしている。祭事の準備だってしているじゃない。)


目を逸らしているつもりはなかった。

私は今できることをやっている。

出所のわからない罪悪感を抱きながらも、私は自分を肯定するように日々を過ごしていた。


朝起きて、畑仕事をし、宝珠へ祈りをこめる。

そんな日々が一か月近く続いていた。


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