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時越想 〜時を越える想い〜  作者: はらぺこワンコ。
第四章 復興-南の村-
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訪問者

-Main story- 4-1

夕食後の片付けをしていると、くつろいでいた閤央がパッと飛び起き、外を注視し警戒していた。


「ぐるぅー」『蹄の音がする。誰かくるぞ。』


低く唸る閤央の声に仕斗が反応し、素早く警戒体制をとった。


「閤央はなんて言ってる?」


周囲の気配を探りながら陸が聞いてくる。


「誰かくるって。」


そう伝えると、今度は入り口で様子をみていた空が指示を出す。


「夜に客人とはあまり穏やかな気分じゃありませんね。時雨様は、奥に下がっていてください。陸、時雨様について念の為、護衛を。海は外へ出て何かあった時に備えて待機していてください。」


空の指示に従い、陸と共に、外から見えない土間へと身を移す。

海も勝手口から外へ出て身を潜めにいったようだ。


馬がいななく声が聞こえた後に、バタバタと誰かが走ってくる音が聞こえた。


「夜分にすみません‼︎時雨様はいらっしゃいますか‼︎」


大声で叫ぶ様な声が聞こえてきた。

随分と急いでいる様子が奥にいる私にも伝わっていた。

あまりの慌てように、私が出ていこうとすると陸が手で制してきた。


「空が対応する、時雨はまだここにいろ。」


陸が私に聞こえるだけの声で話す。

安全だと確認できるまではここにいた方がいいみたいだ。


空が用件を聞く為に客人の前へ出ていた。


「なんのご用件でしょうか?」


空は警戒しながらも丁寧に対応していた。

どうやら訪ねてきたのは、国の兵士のようだ。

兵士は右手を額にかざし敬礼していた。


「あっ、あの時雨様はいらっしゃいますか。隊長からの、いやっ、越志様からの伝言を承っています‼︎ 」


とても慌てていて、吃りながら話している。


(越志さんからの伝言?)


皇子の家臣である越志さんの直々の伝言とは何だろう。

急いでる様子だし何か大変な事が起こっているのかもしれない。

宮中で何かあったのだろうか。


「時雨様は今手が離せません。用件なら私がききましょう。」


空が兵士を落ちつかせようと、あえてゆっくりと冷静に応対しているのがわかる。


「はっ、急ぎの用件です。越志さんからの伝言で、至急南の祠付近へ来て頂きたい。との事です‼︎詳細は時雨様に直接伝えるようにと言われております‼︎時雨様に御目通り願えますか?」


兵士は、矢継ぎ早に話をしてきた。

南の祠付近には、明日行く予定の場所で里の者達が住んでいるあたりのはずだ。


「只今、時雨様に伝えて参ります。少々お待ちください。」


そう空が告げると、こちらに向かって歩き出す。

空は途中で少し視線を外し、閤央の方をみていた。

目線で何やら合図を送っているのか、閤央が頷くように頭を縦に動かし、空も後ろの兵士に気ずかれないよう、小さく頷き返していた。


「時雨様よろしいでしょうか、越志様からの伝言を預かっている兵士が来ております。急ぎの用件とのこと、応対していただけますか?」


空がよそ行きの口調で話かけてくる。

こういう時には長として行動をとるようにと空から聞かされていた。

陸の方をみると、私を制していた手をさげ頷いた。

息を吸い、気持ちを落ち着かせてから、背筋を正して客人の前へと出ていく。


「急ぎの用件とはなんでしょうか。伝言を聞かせていただけますか。」


空から教えられた通りに振る舞えているだろうか、緊張しながら応対する。


「いらっしゃってよかった‼︎」


兵士は安堵の息を吐き、伝言を伝えてくれた。


「越志さんの伝言を届けに参りました。私は颯真と申します。只今、得体の知れない化け物がこの里の者達が生活拠点としている場所で暴れている。化け物は火を吐き、建物などを焼いていて、いくら鎮火させようと水をかけても勢いが止まらず、困っている。魔物の類いだと思うが、何故か村人は対応しようとせず、ただ呆然と立ち尽くしている。我々ではもう手の打ち用がない。導神族の長である時雨様の手を貸していただきたい。との事です‼︎」


颯真さんは、ひと息に告げた。

その報告を聞き、閤央が呟いていた。


「ぐるぅー」『南の祠に、化け物。消えぬ炎か。…まさか狼鷲が暴れているのか⁉︎』


(ろうしゅう⁇ )


聖獣の狼鷲の事だろうか。

浮かんだ疑問を閤央に投げかけてしまいそうになり口をつぐむ。

今は客人の対応に集中しなければならない。


先程の伝言の内容を思い出す。

今、里の者達が大変な状況の中にいる。

おそらく何もせずにいるのではなく、何もできない状態なのだろう。

巡地守神がこの地から一族を追い出した時に、術を扱う能力も取り上げたと空から聞いていた。

すぐにでも行くと返事をしたいが、安直に応えていいものなのだろうか。

対応に迷い、閤央に視線をおくり指示をあおぐ。


「ぐるぅー」『時雨、行くぞ。熾閃煌の聖獣が暴れているかもしれん。』


閤央が私に喋りかける唸りを、威嚇されていると勘違いした颯真さんは怯えていた。

心の中で苦笑いしながら、颯真さんに返答をする。


「大丈夫です。その子はあなたに危害を加えたりはしませんよ。伝言ありがとうございます。すぐに出立の準備をします。」


「…あっ!はっはい、ありがとうございます。」


颯真さんは、閤央に気を取られていて、返事をするのが一拍遅れていた。

彼は慌てて礼を口にすると、外で待っていると急ぎ足で出ていった。

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