羽根つきの真剣勝負⁉︎
番外編3
年が明けて2日目。
風もなく太陽の日差しがポカポカと暖かい昼下がり、ご馳走を沢山食べすぎた私は運動がてら一人羽根つきをしていた。
突き羽という、一人で羽根を打ち上げ、落とさずに何回できるかという遊びだ。
(いち、に、さん、)
「あー‼︎」
3回目を打ち上げた時、羽根が斜めに飛んでいってしまった。
追いかけ、手を伸ばし羽根を受け止めようとするが、羽根は羽子板の先端をかすり、下にポトリと落ちてしまった。
(もう一回。今度はもっと沢山できるはず。)
気を取り直して、再挑戦する。
3回ぐらいは続くのだが、どうしてもあらぬ方向へ羽根を打ち上げてしまい、なかなか続けることができない。
「ぐるぅー。」 『時雨、お前はなんというか…運動音痴なのか?』
(うっ!)
図星を突かれHPがガツンと減ってしまう。
年末年始は、主である巡地守神の下へ戻っていた閤央が帰ってきた。
私は、体を動かす遊びというのはどうも苦手なのである。
「おかえり、ゴウちゃん。帰ってきての第一声がそれってちょっと酷い…。」
拗ねた口調で少し頬を膨らます。
「ぐるぅー。」 『むぅ。それもそうだな、すまなかった。時雨。今帰ったぞ。』
「わかってくれたらそれでいいよ。」
〝どうしても斜めに飛んでいっちゃうの。”などと閤央と話をしていると外で筋トレをしていた陸が閤央が帰ってきたことに気がつき近寄ってきた。
「おぉー帰ってきたか。閤央みたか?時雨の運動音痴やべーのな。なんでまっすぐ上に打ち上げられないんだか。」
と、クツクツと愉快そうに陸は笑っていた。
陸のその態度が、私の癪に触れた。
「陸、言ったわね。そんなに私が下手だというなら追い羽で勝負しましょう!」
私はビシッと人差し指を陸に向け、決闘を挑む。
追い羽根とは、二人以上が羽子板で一つの羽根を交互に打ち合う遊びだ。
負けた方は罰ゲームとして顔に墨を塗られるのだ。
「おぉー望むところだ。時雨になんて絶対負けないだろ。」
余裕の表情の陸。悔しくなった私は、
「空‼︎墨と筆を持ってきて。ゴウちゃんが審判ね。負けた方に墨を塗って頂戴。」
縁側で本を読んでいた空は、私の凄みのある声に驚いたようで、
「はっはい。すぐに持って参ります。」
とパタパタと急いで取りに行った。
「時雨本当にいいのか。顔が真っ黒になっちまうぞ。」
陸は、ニヤニヤと余裕の表情を浮かべていた。
「絶対に負けないわ。陸こそ油断してたら顔が真っ黒になるわよ。」
陸は、そんなことは絶対にないと油断しているが、私には勝算がある。
互いに視線を交える。先行は私から。
「ぐるぅー。」 『よーい、はじめ!』
閤央の合図で、羽を打ち上げる。
が、ポーンと綺麗な放物線を描き羽根が飛んでいってしまった。
「こんなの楽勝だろ!!」
っと、空が力強く羽根を打ち返してくる。
が、その羽根に速さはなく、ゆっくりとこちらへ飛んでくる。
「陸も見掛け倒しかしら。」
私はニヤッと口角を上げ、軽く羽をつきか返す。
しかしその羽根は、陸の足元目掛けて勢いよく飛んでいき、地面へと突き刺さっていた。
「なっ!なんで羽根がこんな動きするんだよ。あ‼︎時雨、精霊の力使ったろ!」
私は口笛を吹き、知らぬ存ぜぬをおし通す。
「ぐるぅー」 『空、墨を塗るぞ。描ける様にしゃがめ。』
空が持ってきてくれた筆を閤央は口に咥えていた。
「顔に墨を塗るから、ゴウちゃんがしゃがんでって言っているわよ。」
ニコッと陸に笑いかける。
「くっそーずるだ。こんなの許されるのか閤央!」
陸は審判である閤央へ抗議の声をあげていた。
「ぐるぅー。」 『力を使うなというルールは設定していないからな。特に問題はない。』
「問題ないってさ。」
身をかがめた陸は閤央に鼻の頭を墨で真っ黒に塗られていた。
「くぅーなら俺も本気出すぞ!今度は俺が絶対に勝つ。」
っと何度も何度も陸は私に挑戦を挑んでくるが、そのたび私は精霊の力を使って打ちまかし、勝ちがどんどん続いていく。
そして、陸の体力が尽き勝負が終わる頃には、鼻だけではなく、頬にはヒゲなどが書かれ、顔はぶち模様になっていた。
「可愛いいワンコちゃんだね♪」
私達の様子をずっと眺めていた海が陸の頭を撫でていた。
「くっそー。頭撫でるのやめろ、海。」
陸は海の手を振りはらい、私の方を向くと、
「…時雨、からかった俺が悪かった。すまん。」
っと、謝ってくれた。
人には向き不向きがあるのだ。
自分ができるからと言って相手を傷つけるようなことを言ってはいけない。
「もういいわよ。私もずるしてごめんね。」
そして、謝ってくれたなら許してあげることも忘れてはいけない。
こんな些細な日常も大切にし、仲間と共に過ごす毎日を楽しんでいこう。
日々の積み重ねが今年も一年、私の人生を豊かにしてくれるはずだから。
※番外編は、本編とは時間軸が異なります。
単体のショートストーリーとしてお楽しみください。




