長の役目
-Main story- 3-5
村を後にして川の近くまで戻り、私を手頃な岩場に座らせると、空が濡らしたハンカチで傷口の手当をしてくれた。
多少の出血はあったが、かすり傷程度で血はすでに止まっていた。
「今日はこのまま帰りましょう。」
傷の手当をしながら空が帰宅を促すが、私は反対した。
「まだ祠への祈りを捧げていないわ。」
一族の者達と話をすることができなかった。
だから、せめてもの長の役目として、潤清神には祈りを捧げたかったのだ。
「でもさぁ、危なくない?今のあいつらの様子だと、見つかったらまたなんかされそうじゃん。」
海のいう通り、祠は村から離れているとはいえ近場だ。
また姿を見られたら、また何かをされるのは間違いないだろう。
「ぐるぅー。」『なら、私が変わりに祠へ行こう。』
閤央が提案をしてきた。
「ゴウちゃんが変わりに行く?どういうこと?」
私を乗せて連れて行ってくれると言う事だろうか。
「ぐるぅー」『時雨の身の変わりぐらいはできるぞ。お前はここから祈っていろ。お前の祈りは私を通じて、潤清に伝えよう。』
閤央は何も問題はないと簡単そうに言っていた。
「えっ、そんな事できるの?」
詳しいことを聞く為に、閤央と視線を合わせる。
「ぐるぅー」『そのぐらいできる。私は、導神族に仕える為の聖獣だぞ。造作もないことだ。』
驚いた。聖獣はそんなこともできるのか。
「おい、閤央は何と言ってるんだ?」
陸の訴えをきき、私以外は、閤央と意思疎通ができない事を思い出す。
「ゴウちゃんが、私の変わりに祠に行ってくれるって。」
閤央とのやりとりを仕斗にも伝える。
それならと、納得してくれた空が陸に指示を出していた。
「陸、念のために貴方も閤央と一緒に祠へいってください。何か起こった時に行動できるよう、身を隠してあたりを警戒してください。」
「了解。さっさと済ませて帰るぞ。」
陸は面倒くさそうな態度を取りつつも、祠へ向かう事を引き受けてくれた。
「じぁ、僕と空は、ここで時雨の護衛だね♪」
海と空はここに残り、私の護衛をしてくれるようだ。
それぞれの役割が決まり、閤央がひと吠えする。
「グルゥー。」『それでは行くぞ、陸』
その鳴き声を合図に閤央と陸は、共に祠へと向かっていった。




