一族との対面
-Main story- 3-4
私達は川に沿って北上し、先に北の祠の近くに住む一族の様子を見に行くことにした。
「わぁー‼︎ゴウちゃん早い‼︎」
流石は聖獣。私を背に乗せていても颯爽と駆けている。
閤央を追うように、仕斗も負けじとついてくる。
「ゴウちゃん、流石に速いよー。着いていくのやっとー。」
海は斜面で走りにくい場所でも速さを緩めず走り続けていた。
「お前運動不足なんじゃねぇの‼︎」
台所に立ちすぎなんだよっと、冗談を飛ばせるぐらい陸は余裕そうだった。
「運動不足は空でしょー。」
海は前を走る陸に抗議の声をあげていた。
空は少し離れた所を走っていた。
「空ー大丈夫ー?」
私は、空に聞こえるように声を張った。
「大丈夫ですー。私の事はお気になさらず、先に行っててくださーい。」
空も並外れたスピードで走ってはいるのだが、聖獣の早さについていくのはやはり大変らしい。
それでも、人が歩いて2日程かかる距離を、閤央と仕斗は数時間で移動してしまった。
一族が移住先に選んだのは、千年程前に小さな村があったとされる場所だった。
かつて、始祖を産んだ娘が住んでいた村だ。
ある日、その村に住んでいた者達は、神の怒りにふれ、みな化け物にされ滅んだといい伝えられていた。
現地に着いた私達は、村の様子を伺っていた。
すでに廃墟と化した村だったが、一画は整えられていて、明るく光が差し込む場所には、新たな家が建てられていた。
今はまだ、多くの者がテントをはり、仮の住居として生活をしているようだった。
村の入り口付近には人気はなく、少し奥まった場所で皆が食事をする為に集まっていた。
覚悟を決めてきていたつもりだったが、いざ皆を前にすると、どのように声をかければいいのかわからず、私はただ立ちすくんでいた。
すると、振り向いた1人の青年と目があった。
「あっ‼︎」
彼は、私に気がつくと顔色を変え、睨みつけてきた。
彼の発した声に、何事かと他の者達もふりかり、私がいる事に気がついたようだ。
私はおずおずと前にでて口を開く。
「あっ、あの…」
緊張のあまり、喉から心臓が出てきそうだ。
私は、声が震えない様に手を握りしめ話出そうとする。
しかし、私よりも先に、青年が先に声をあげていた。
「お前、よくものこのこと顔を出せたもんだな!出てけ!」
彼はそういうと足元にあった石を拾い、私の方へ投げつけてきた。
「何で俺たちが追い出されないといけない。しかも、いわくつきの山奥に。俺たちは、里で普通に生活してただけだろ!あんたが長の役目を時志様に丸投げしたんだ。彼以外に頼れる人がいなかった。逃げ隠れるようにして生活してたあんたが悪い‼︎なのに、なんで俺たちが悪者扱いされないといけないんだ。」
その発言に賛同した者達も私に向かって石を投げつけてきた。
私を庇うために仕斗が前に出ようとするが、私は、それを手で制す。
ここで怯んではいけない。
私は背筋をのばし、顔をあげみなに向きなおる。
「みなさんのおっしゃる通りです。私は、自分の役目から目を逸らしていました。この様な事態になってから気がつくなんて本当に愚かだとおもいます。ごめんなさい。でも私は変わろうと思います。みなさんに私を導神族の長だと、認めてもらえるように精進していきます。ですから、いつかまたあの地でみなさんと共に過ごせるようになりたい。私はそう思っています。」
その場がシンと静まりかえる。
困惑した顔を見せる者や疑いの眼差しを向けるものもいた。
すると、先程の青年が再び口を開く。
「口では簡単に言えるんだよ‼︎さっさと出てけ。」
彼はそう叫ぶと、再び私に石を投げつけてきた。
石はこめかみにあたり、私に鈍痛を与えた。
私は、あまりの痛さにこめかみを抑え、しゃがみ込んでしまう。
「貴方いったい何をするのですか‼︎」
珍しく空が声を荒らげていた。その時の空は、彼らを見限った雰囲気を漂わせていた。
「これ以上、ここにとどまる必要はありません。いきましょう、時雨様。」
空は私を抱き抱えると、足早に村を後にした。
一族が私に向ける視線は、今まで一番冷ややかなものだった。




