昔話
-Introjection-
これはある村に起きた悲劇の物語。
かつてからこの地は、四方を海に抱かれた美しい島だった。
北にはそびえる山々が連なり、南には広大な平野が悠然と広がっていた。
山々の奥深くには、ひっそりとたたずむ小さな村が存在した。
その村の近くには、神が宿る泉があり、名を『潤清神』として、崇め祀っていた。
村には美しい娘がおり、巫女として村が平和で豊かでありますようにと、毎日泉に祈りを捧げていた。
その泉に宿る神は、娘を気に入り、娘の願いを叶える為に村を見守り続けていた。
ある日、その村に一人の青年が迷い込んできた。
彼は疲れ果て、今にも死にそうだったが、優しい娘は彼を助けた。
時間が経つにつれ二人は心を通わせ、やがて恋に落ち、娘は子を授かることとなる。
神は娘が男に奪われたと怒っていた。
だが、娘の幸せそうな姿を見て、神は彼女の幸せが続くよう、引き続き村を見守り続けた。
しかし、男は別の娘に恋をし、彼女を避けるようになった。
それを知った娘は、愛する男の心が離れてしまった事に深い悲しみを抱いていた。
彼女の悲しむ姿に心を痛めた神は、怒り狂い、嵐を呼び起こし、大きな雷を男に落とした。
男は雷に打たれ、炎に包まれ死んでしまった。
村の人々はその恐ろしい光景を目にし、娘を村から追い出してしまった。
彼女が村にいる限り、再び神の怒りを招き、厄災が訪れると恐れたからだ。
村から追い出された娘はお腹に宿った子を守るため、街へと移り住むことを決意した。
そして、移り住んだその街で彼女は無事に男の子を産んだ。
神は、愛しい娘を追い出した村人たちへ、怒りを露わにし呪いをかけた。
その日から、村人たちは徐々に正気を失っていき、化け物へと変わっていった。
村は次第に秩序を失っていき、やがて滅んでいくのだった。
これが、千年前にある村で起きた悲劇である。




