一人じゃない幸せ
-Main story- 3−1
「ぎゃぁー、閤央、どうして私を追いかけるのですかー!」
朝から空の悲鳴が響いてくる。
「時雨様、早く起きてください!閤央をどうにかしてくださーい!」
「ぐるぅー。」『お腹すいた。』
(ゴウちゃんはお腹が減っているんだって)
夢うつつの状態で空の叫びに応じる。
数日の復興作業で体力が尽き、すぐには起きられそうにない。
「さすがに起きろ、時雨。朝飯ができたってよ。」
今度は陸の声がした。
どうやら起こしに来たようだ。
「あぁ…陸?ゴウちゃん、おなか、空いているって…。」
再び夢の中に引き込まれそうになる私から、陸が強引に布団を取り上げる。
「起きろって。冷める前に行かないと海がまた怒るぞ!」
普段は適当な海が、食事の時は急に口うるさくなる。
バランスよく食べろ、好き嫌いするな、温かいうちに食べろと、母親みたいなことを言うのだ。
外から空の悲鳴とは別に、閤央を呼ぶ海の声が聞こえてきた。
「ゴウちゃん、お待たせー♪朝ごはんできたよー。」
「ぐるぅー♪」『ごはん♪』
海の食事コールに、空を追いかけていた閤央が今度はエサに向かって走り出す。
「はぁ…はぁ…お腹が、はぁ…はぁ…空いていたのですね、閤央。まさか、私を餌だと思って追い回していたのですか!?」
追い回され疲れ果てた空が肩をガクリと落として座り込んでいた。
「空は獲物かぁ。」
陸は、開けたままの扉から一匹と一人のやりとりを見て笑っていた。
「ゴウちゃんと空は本当に仲良しね。」
私も陸と一緒に笑ってしまった。
(さてと、起きるか。)
布団を取られてしまったので大人しく起きることにする。
着替えていたら食事に遅れそうだ。
海の小言を聞くより、寝巻きのままご飯を食べに行ったほうが良いかもしれない。
寝巻きで行こうとする私を見て、陸は呆れていたが何も言わず、止めようとはしなかった。
今日も清々しい朝だ。
絶好の作業日和である。
「おはよー空。私達もご飯だって。」
あくびを噛み殺しながら空に挨拶をする。
「時雨様、おはよ……‼︎」
空が挨拶のため振り向くが、私の方を見ると手で顔を覆いながら何やらモゴモゴとしゃべっていた。
「し、時雨様⁉︎まっまだ、それ、寝巻きのままで…。」
「?」
空の言っていることがよく聞き取れなかった。
「空には刺激が強すぎるかぁ。こんな寝ぼけまなこのどこに魅力があるんだか…。」
陸も何やら呟いたが小さい声だったので、私には聞き取ることができなかった。
「⁇」
不思議そうに眺める私を陸が再び促す。
「ゴホン、なんでもない。さっさと飯食いに行くぞ。空も行かないと飯抜きだぞ。」
三人で急いで朝ごはんを食べに向かう。
今まででは考えられなかった賑やかな朝。
嬉しくなって思わず笑みが溢れていた。




