拒絶する世界(1/3)
全てから拒絶される存在――それは、幸運なのか、不幸なのか。
「……あのさ、空閑くんって、意外と本、読むんだね」
その声が耳に届いた瞬間、僕の背中がゾクリとした。
普通の声。普通の空気。なのに、どうしようもなく“場違い”だった。
僕と久野瀬が座っていたのは、放課後の図書室。
異界や怪異のことを調べようとしていた僕らの間に、
彼――柊 真澄は、まるで何の緊張もなく入ってきた。
「……あ、ごめん、邪魔しちゃった?」
にこ、と笑う。
穏やかで、好青年で、誰にでも好かれそうな“優等生”の顔。
でも、その笑顔を見た瞬間、僕は直感した。
――こいつ、何かおかしい。
視線を合わせているのに、“見られていない”ような気がする。
存在感はあるのに、そこに“繋がり”が存在しない。
「……いや、別に。なんでもないよ」
僕は本を閉じ、そっと視線を逸らした。
その帰り道。
「柊真澄。……あいつが、“拒絶者”か」
図書室を出た後、朔がぽつりと呟いた。
「拒絶者……?」
「異界を拒む体質。極めて稀な存在。
異界因子を持たない、あるいは、無意識に打ち消す存在……“異界から見れば天敵”だ」
「でもあいつ、ただのクラスの人気者みたいだったぞ……?」
「だから、気づかれない。いや、誰にも気づかせないようになってる」
それは、どこか僕自身に似ていた。
“認識されない”“理解されない”という点で。
でも、真澄には僕とは違う“気配”がある。
それはまるで、“世界そのものに馴染んでいない”ような感覚だった。