境界を越えて(3/3)
天城の力によって影が怯んだ隙に、僕は深く息を吸い込んだ。
「これが最後だ。俺が……運命そのものを喰らってやる!」
僕の中で、今まで喰ってきた恐怖や記憶、運命の力が激しく渦巻き、新たな形となって溢れ出した。
影が悲鳴をあげる。
『そんな馬鹿な……運命を喰うだと!?』
僕の力が影を包み込み、その存在を少しずつ崩していく。
朔もすかさず封印札を放つ。
「もう逃げ場はない!」
真澄が強力な拒絶の壁を作り、影の抵抗を封じる。
そして天城が最後に叫んだ。
「これで終わりだ!」
天城が放った力が僕らの力と一つに重なり、影を完全に消滅させた。
影が消えた瞬間、異界そのものが光に包まれ、世界が再構築されていくのを感じた。
気がつくと、僕らは静かな夕暮れの学校の屋上に立っていた。
何もかもが元通りだ。
遠くで、部活動の声がかすかに聞こえる。
「終わった……のか?」
朔が呟くと、真澄が柔らかな笑顔を見せた。
「終わったんだ。僕たちが運命を変えたんだよ」
天城はどこか不安そうに僕らを見つめた。
「俺は、本当にここにいていいのか……?」
僕は笑いながら天城の肩を軽く叩いた。
「当たり前だろ。これからはお前も、俺たちの仲間なんだからさ」
天城の表情が、初めて穏やかな笑みに変わった。
「ああ……ありがとう」
数日後。
僕たちの日常は静かに戻ってきていた。
教室で普通に話す天城を見ていると、これまでのことが嘘のように感じられる。
「よう、空閑。一緒に帰ろうぜ」
天城が自然な笑顔で声をかけてくる。
「ああ、行こうか」
僕は笑い返しながら、教室を出た。
校門の前で、朔と真澄が待っている。
朔が穏やかに言った。
「平和だな」
真澄も柔らかく微笑む。
「うん。僕らが取り戻した平和だね」
僕ら四人は並んで歩き出す。
そこにはもう、異界も運命もない。
ただ僕らが選んだ、穏やかな日常だけが広がっていた。
これが僕たちの、新たな物語の始まりだ。
『異界境界録』第12話「境界を越えて」、そしてこの物語を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。
湊たちはついに運命を超え、真の平和と仲間を取り戻しました。
彼らが選んだ未来が、これからも明るいものであることを願っています。
これまで応援してくださった読者の皆さまに、心から感謝いたします。
続きもプロットは作っていたので、もし反響があれば制作に進めようと思います。
またどこかでお会いしましょう。
本当に、ありがとうございました。




