最果ての闇(2/3)
「俺が消えれば全てが終わるんだ」
天城の声は静かで、まるで感情が抜け落ちてしまったようだった。
「そんなことない!お前が消えても何も解決しない!」
僕は必死に訴えたが、天城は弱々しく首を振った。
「俺はずっと、お前たちが力を使うたびに壊れていった。
力を持たない俺がすべてを引き受けることが、お前たちの『運命』だったんだ」
朔が拳を握りしめる。
「俺たちがそれを望んだわけじゃない。運命なんて信じるな!」
天城は力なく笑った。
「でも、現実に俺はここにいる。お前たちが力を手に入れる代償に、俺が必要だった」
真澄が悲痛な表情で叫ぶ。
「違う、天城!僕たちは知らなかった。知っていたら絶対に……!」
その言葉を遮るように、天城が小さく呟いた。
「……怖かった」
僕らははっとして天城を見た。
彼の目には涙が浮かんでいた。
「ずっと怖かった。俺には何もなくて、ただお前たちの記憶や感情が流れ込んでくるだけで……。
俺自身が何者なのか分からなくなった」
その言葉が、僕たちの心を強く打った。
「でも……お前が消えたら俺たちはまた、罪を背負うことになる」
僕は震える声で伝えた。
天城は静かに言った。
「もう十分だよ……俺は、もう疲れたんだ」
僕らは黙り込み、その絶望的な言葉をただ聞くしかなかった。
だが、僕は諦めるわけにはいかなかった。
「それでも、俺はお前を救いたい。
どんな代償を払ってでも、必ずお前を連れて帰る」
僕らは互いを見つめ合い、もう一度強く頷き合った。
その瞬間、天城の感情が暴走し、異界が激しく揺れ始めた。
目の前に、巨大な怪異が姿を現した。
それは天城の絶望と苦しみが生んだ、最後の障壁だった。
僕らは覚悟を決め、再び立ち向かった。




