最果ての闇(1/3)
異界の最果てで、僕らはついに天城と本当の意味で向き合った。
彼が背負った運命と絶望を知った今、僕たちはもう逃げない。
全てを終わらせるための、最後の戦いが始まる。
崩壊する異界を抜けた先には、ただ静寂だけが広がっていた。
そこは完全な闇。何の音もなく、光すら存在しない虚無の空間だった。
「ここが、異界の最果て……」
僕の声が静かに響いたが、返事はない。
朔が緊張した声で呟いた。
「……いる」
彼が指差した先に、ゆっくりと人影が浮かび上がる。
――天城晃だった。
天城は疲れ果て、虚ろな瞳でこちらを見ていた。
「また来たのか……お前たちは本当にしつこいな」
僕は強く前に踏み出した。
「天城、もう終わりにしよう。
全部背負い込まなくてもいいんだ。俺たちがいる」
しかし彼は首を横に振った。
「お前たちには分からない。
俺は最初から、『器』として運命づけられていたんだ」
真澄が戸惑いながら尋ねる。
「器って、どういう意味だ?」
天城は静かに言った。
「俺はお前たちの異能や因果を受け止めるためだけに生まれた存在だ。
お前たちが力を使うたびに、その歪みを俺が背負ってきた」
僕らは言葉を失った。
朔が静かに呟く。
「だから、お前だけが何の力も持たなかったのか……」
天城は無表情のまま頷いた。
「俺自身には、何の力もなかった。ただの空っぽな器だ。
だからこそ、お前たちの因果を引き受けることができたんだ」
僕は強く拳を握った。
そんなことを、今まで知らずにいた。
「それでも、俺たちはお前を犠牲になんかしない」
しかし天城は悲しげに微笑んだ。
「もう遅いんだよ。俺が消えれば、すべてが解決する」
その言葉が、僕の胸を激しく揺さぶった。




