選択の代償(2/3)
沈黙を最初に破ったのは、朔だった。
「俺が残る」
迷いのない声に、僕は驚いて朔を見た。
「何言ってるんだよ!お前が残る理由なんてないだろ!」
朔は静かな目で僕を見つめ返した。
「俺の一族が異界と関わったのが原因だ。責任を取るのは当然だ」
その言葉に真澄が強く首を振る。
「違うよ、朔。君が一人で背負う必要はない。
そもそも僕の力が君たちを拒絶したからこんなことになったんだ。僕が残るべきだ」
僕は拳を震わせながら言った。
「二人とも馬鹿なこと言うな!
最初に怪異を喰ったのは俺だ。俺が残るのが一番筋が通る」
朔が苛立ったように言い返す。
「お前が残ったら天城は救えても意味がないだろ!」
真澄が叫ぶ。
「みんな、自分が犠牲になることを考えちゃダメだ!僕らは……!」
だが、その言葉の途中で真澄の声は震え、小さく途切れた。
僕らは互いを見つめ合い、誰も言葉を発せないまま重い時間が流れた。
やがて朔が静かに呟いた。
「こんなことを言い合っている場合じゃない。天城が苦しんでいるんだ」
真澄も苦しげに頷く。
「僕たちが争っても解決しないよ」
その言葉に僕も深く頷き、静かに口を開いた。
「俺たちは、誰も犠牲になんかしない。
全員で生きて戻る方法を探そう」
その瞬間、影が不快そうに言った。
『愚かな……運命に逆らうつもりか?』
僕は強くその言葉を否定した。
「逆らうんじゃない。俺たちは運命そのものを超えていくんだ!」
その言葉に呼応するように、僕ら三人の意志が一つになった。
影は怒りを露わにし、強大な力を解き放ち始める。
『ならば、代償を払うことすら許さん!』
僕らは覚悟を決め、迫り来る攻撃に立ち向かった。




